掲載日 : [2019-03-06] 照会数 : 6228
在日2世「心の叫び」『ボクらの叛乱』出版...兵庫県外教
方政雄さん『部落解放文学賞』入選
【兵庫】1960年代後半、主に阪神間で起きた「一斉糾弾」と呼ばれる教育運動を通じて「『本当の姿』で生きていく」と決意するまでの在日韓国人2世の心の軌跡を描いた方政雄さん(67、伊丹市)の自伝的小説『ボクらの叛乱(はんらん)』が兵庫県在日外国人教育研究協議会から単行本(A5版56㌻、500円)となった。同作品は2018年度の「第44回部落解放文学賞(小説部門)」に入選した。
尼崎市の工業高校3年生の吉川昌明こと崔昌明が主人公。学校推薦を受けて大企業の就職試験を受けるが、結果は「採用見送り」に。その企業は学校推薦であれば、不採用にしたことは一度もなかった。一方、崔は民族差別問題に取り組む教員の熱意に打たれ、授業で「本名宣言」。しかし、別の教師が同じ在日韓国人の下級生に差別発言をした。崔は全校生を巻き込んだ抗議集会で「私らのことを知っているのか、差別に負けないどんな教育をしてくれるのか」と教師、学校に迫っていく。
方さんは高校生時代に実体験し、鮮明に残っていた「くすぶった思い」を昇華する手段として小説化を思い立った。書き上げるまでに約2年。「デフォルメを必要以上に意識したが、小説の8割は実際に起きたこと。あの時代の雰囲気やマイノリティーであるがゆえの心の叫びをきちんと届けたかった」と話す。
方さんは元兵庫県立湊川高等学校教員。92年に県で最初の外国籍教員として採用された。兵庫県外教(kengaikyo@jeans.ocn.ne.jp)
(2019.03.06 民団新聞)