掲載日 : [2018-05-09] 照会数 : 5775
祖国の平和願い熱唱…トラヂ会、北送の息子思う作文も
[ 楽しそうに踊り出すトラジの会のメンバー ]
【神奈川】川崎に住む在日同胞高齢者の交流クラブ「トラヂの会」は8日、市内の桜本保育園で韓半島の平和と安定を祈るオボイナル(父母の日)コンサートを開いた。親戚や知り合いの暮らす韓半島が戦争の危機にさらされ、大きな不安を感じて生きてきた在日1世の想いを日本社会に知ってもらいたいと記者団にも公開した。この日は約60人のお年寄りが姿を見せ、予定していた7曲を元気に合唱した。
きっかけとなったのは4月27日の南北首脳会談だった。この日、会のメンバーがほぼ例外なく板門店からのテレビ中継にくぎ付けになったという。韓・日、北・日を取り巻く狭間で呻吟してきただけに「生きているうちに一つの祖国を」との願いを強くしたようだ。
歌は会の愛唱歌「トラヂ〜アリラン」で始まった。94歳、トラヂの会では最高齢者の一人が会場の手拍子に合わせてチャンゴをたたいた。みんなで歌い終わると期せずして「オルシグ、チョッター」の声が上がった。
次は歌謡曲「他郷サリ(暮らし)」。歌を前に趙良葉さんが自らマイクを握って、「私の母親が時々口ずさんでいたのを思い出す。辛かっただろうな。この歌は涙なくして歌えない。いい歌だと思う」。日本社会で窮屈な思いを強いられてきた在日1世を思いやった。
離散家族をテーマとした「釜山港へ帰れ」では、合唱を前に、あるハルモニが自らつづった作文「お母さんの思い出」を読み上げた。8人家族の長男は北送事業で北韓に。母親はそんな長男をいつも気遣っていたという。いまは消息が途絶えている。
最後は「私たちの願い」を全員で大合唱した。予定していた曲がすべて終了しても歌いたりなかったのか、メンバーが次々にマイクを握り、踊りの輪ができた。
会を進行した在日3世の金正姫さんが「南北の離散家族が再会し、自由往来できるようになってほしい」と語りながら会を締めくくった。
(2018.05.09 民団新聞)