掲載日 : [2019-03-21] 照会数 : 6481
関東大震災虐殺の記憶を共有 「九月、東京の路上で」再演
[ 「ザ・スズナリ」での舞台(古元道広さん撮影) ]
ヘイトスピーチと重ね合わせ
関東大震災時の同胞虐殺と現代のヘイトスピーチを重ね合わせた劇団「燐光群」の「九月、東京の路上で」が東京・下北沢のミニ劇場「ザ・スズナリ」で上演されている。原作はノンフィクション作家、加藤直樹さんの同名ルポ。昨年7月に初演されて高い評価を受け、今回の再演となった。
劇は東京都世田谷区にある烏山神社に『九月、東京の路上で』を持参した13人の男女が集まる場面から始まった。同神社には関東大震災時に虐殺された13人を慰霊するために13本の椎の木が植樹されたとされる。しかし、事実は虐殺に関与して起訴された地元民12人が釈放された際、彼らを顕彰するために植えられたものだったことがわかった。
ここから、本でつづられたさまざまな虐殺事件の様相を13人の役者が迫真の演技で入れ代わり演じ、96年前の惨劇を再現していく。
ラストの舞台は再び烏山神社へ。4本現存していた椎の木は伐採されて、金網が回りを囲っている。金網の中に入り、いぶかしんでいると、大音声とともに13人はレイシスト大集団のヘイトスピーチにさらされる。すると、金網が動かされ観客席を囲む。観客も暴走するレイシストに取り囲まれる恐怖を味わってもらおうという演出だ。関東大震災は決して過去のものでなく、現代につながる問題であることを体感させてくれた。
構成・演出の坂手洋二さんが舞台化を思い立ったのは東京都の小池百合子知事が2017年、都内で営まれる朝鮮人犠牲者追悼式に追悼文の送付を取りやめたこと。「追悼メッセージの送付取りやめは史実を隠ぺいし、歪曲しようとする動きに東京都がお墨付きを与えてしまう」とする抗議声明にも加わった。
舞台化にあたって虐殺現場を丹念に取材したという坂手さんは「関東大震災は消せない過去。その記憶を共有することが絶対に必要なんじゃないか」と語った。上演は31日まで。全席指定4000円(前売り)。劇団「燐光群」(03・3426・6294)。