掲載日 : [2018-10-10] 照会数 : 5774
反ヘイト、東京都が人権条例成立…公的施設の利用制限、行為者の氏名公表
[ 「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」を可決した東京都議会本会議(写真:NHKニュースより) ]
「いかなる種類の差別も許されない」ことを掲げた「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」(第169号議案)が5日、都議会本会議で可決、成立した。この都条例案は国の「ヘイトスピーチ対策法」(解消法)の実効化を条例制定という形で行うものであり、都道府県レベルとしては初の試み。
条例案の第8条に不当な差別的言動に取り組む章を設けた。これは「対策法」4条2項に基づいて地方公共団体が実施すべきもの。具体的にはヘイトスピーチが事前に予見されたり、安全が確保できなければ、都が事前に設けた基準に従い、保有する公的施設の利用を制限できるとした。
拡散防止措置としてヘイトスピーチやヘイトデモの様子を流すネット上の動画を削除するよう要請したり、ヘイトスピーチやヘイトデモを行った団体や個人の実名を公表していく。いずれも学識経験者らで構成する知事の附属機関「審査会」が審査することで表現の自由に配慮した。
このほか、都道府県では初めてとなるLGBTといった性的少数者への不当な差別も禁じている。東京都の取り組みが国及び他の地方公共団体の取り組みを促進していくことが期待されている。施行日は2019年4月1日としている。
実効性、乱用の危険性を懸念
都条例には懸念もあるようだ。都議会での審議を前にした9月26日、在日外国人の人権保障に取り組んでいるNGO、弁護士、研究者らでつくる外国人人権法連絡会(共同代表=田中宏、丹羽雅雄)が声明で具体的に指摘していた。
ヘイトスピーチ解消への実効性の観点からは対策に「啓発など」しかないことが問題だという。国の「対策法(解消法)」では地方公共団体に啓発だけにとどまらず、「相談体制整備」「教育の充実」「ネット対策及び差別の実態調査」を求めているからだ。
もう一つは乱用の危険性。公の施設利用を不許可とする要件や「不当な差別的言動」を行った者の氏名を公表するかどうかを知事の一任としたことに危惧を表明。「公の施設利用は過度の制限を防ぐためにも条文で定めるのが望ましい、氏名の公表の判断も審査会に諮るべきだ」と提案した。
「運用見守りたい」李根茁民団中央本部人権擁護委員長
関東大震災の追悼文を見送った小池百合子都知事のもとでLGBTも含む総合的な人権を網羅した条例ができたことは歓迎したい。今後はトップに立つ人の判断で恣意的な運用にならないよう見守っていきたい。
(2018.10.10 民団新聞)