掲載日 : [2017-12-08] 照会数 : 9783
歴史修正主義に警鐘… 名古屋、市川で人権シンポ
[ 市川市男女共同参画センターで開かれたヘイトスピーチに関するシンポジウム ]
「大虐殺否定許されぬ」 ヘイト根絶へ基本法めざす
【愛知、千葉】民団愛知県本部人権擁護委員会(韓一星委員長)は11月28日、名古屋韓国学校で人権シンポジウムを開催した。「『関東大震災の朝鮮人虐殺』から考えること‐『負の歴史』を通じて『今』を視る‐」をテーマに同本部人権擁護委として連続3回目の主催で、日本人市民も含め85人が参加した。講師の『九月、東京の路上で』の著者である加藤直樹氏、コーディネーターの民団中央本部の權清志企画調整室室長が、在日同胞への差別の原点とも言うべき関東大震災朝鮮人虐殺の本質的な問題と、これを否定する歴史修正主義の危険な動きを厳しく指摘した。千葉でも今月2日に市川市でヘイトスピーチについてのシンポジウムが開かれ熱心な討論が行われた。
開会辞で韓委員長は「4月の内閣府ホームページからの虐殺の箇所削除や小池百合子都知事の追悼文拒否などがあり、歴史を直視しない流れが起きている。警鐘を鳴らすために企画した」と述べた。
1部の講演で加藤氏は1923年当時の北東アジアと日本国内の情勢を踏まえ、虐殺が起こった背景を説明。「19年の3・1独立運動が、当時の日本政府の執権者に与えた衝撃と2度にわたる戦争経験が、未曾有の虐殺を引き起こした。さらに執政者が差別の面、治安維持の面、そして軍事面からもデマを拡散させ、被災直後の通信網の混乱もあって悲劇は拡大していった」とした上で、「最近、看過できないのが、一部の自称ジャーナリストによる〞虐殺は無く、朝鮮人の暴動は事実である〟といった虐殺否定の動きだ。当時の誤報をそのまま都合良く切り貼りした荒唐無稽な本が出版され、それがネット上で一人歩きをしている」と述べ、これらのデマを実証的に検証・批判した。こうした歴史修正主義の動きの中で起きた小池都知事の件について危険性を指摘した。
2部の会場討論では、權室長の進行で歴史修正主義者の動向、その背後にあるもの、ヘイトスピーチの暴力、レイシズムとの関連を確認した。
一方、千葉では昨年6月に「ヘイトスピーチ対策法」が成立して以降、一般社会でも反ヘイトの意識を持つ人が増えてきた。市民への理解をさらに深めようと、民団市川浦安支部(朴且寅団長)は「ヘイトスピーチに関するシンポジウム」を2日、市川市内の男女共同参画センターで行い、45人が参加した。
1部では師岡康子弁護士が「対策法」、地方条例化について論じた。同法の成立によって、自治体や市民の間で反ヘイトの意識が高まった反面、理念法ゆえの限界性を指摘。極右政党からの推薦を受けた区議当選や選挙活動の名を借りたヘイトスピーチの横行にも言及し「対策法だけでは根絶には不十分」とし「条例や基本法の制定が不可欠」と語った。
2部は市川市・浦安市の現職市議会議員が登壇し、市内におけるヘイトスピーチの現状やこれからの対策に関してディスカッションを行い、ヘイト根絶への理解を深め、行政による対策を推進するとした。ある市議会議員は関東大震災の朝鮮人虐殺に触れ、そういった事件を繰り返さないためにも尽力すると語った。
最後に權室長が自身の体験を踏まえ、ヘイト、レイシズムの問題点を指摘。いかなる理由があってもヘイト正当化はできないし、表現の自由の次元では語れないと強調。地域での共生社会実現のためヘイト根絶を目指していくと訴えた。
(2017.12.08 民団新聞)