「わが民族同士」を理念とする「6・15南北共同宣言」の13周年共同行事を推進してきた「6・15共同宣言実践」南、北、海外側委員会は14日、連名で海内外全同胞宛のアピール文を発表した。アピール文は、「6・15共同宣言実践民族共同委員会(6・15実践共同委)は南北共同宣言を実践して民族の和解と団結、平和と統一を成し遂げることを使命とする全民族的な統一運動連帯組織だ。我々は民族の和解と団結を追求してきた誇らしい成果と立派な経験を持っている統一運動の先鋒組織だ」とし、同委員会への結集を呼びかけている。だが、実体はどうか…。
「3代世襲」も擁護…韓国政府非難・糾弾に終始
◆日本での連続講演会
▼総連・韓統連のおぜん立て
6・15実践共同委は、2005年12月に南、北、海外側委員会によって構成された。北側委員会は北韓当局の代弁人に他ならない。また海外側委員会の中心をなす「日本地域委員会」は、北韓当局の日本における忠実な代理人である総連と、その別働隊である韓統連(在日韓国民主統一連合)によって運営されている。しかも、南側委員会は、この北側委員会に同調してきた。
たとえば南側委員会は、6・15南北共同宣言の基本精神である「わが民族同士」の「わが民族」について北側がかねてから「わが民族=金日成民族」だと規定し、主張し続けていることについて、これまで一度も異議を唱えることなく、黙認している。
のみならず、「核恫喝」や冒険主義を含む北韓の対南・統一政策の擁護に終始してきた。今春の北韓による対南緊張激化・戦争恫喝についても、北側、日本地域委員会と同様に、韓国政府に責任があるかのように主張し、一方的に韓国政府を非難・糾弾している。
▼「民族的良心」論のごまかし
日本地域委員会の郭東儀議長(海外側委員会共同委員長、韓統連常任顧問)は、今月4日に東京都内で開いた13周年記念講演会でのあいさつで、朴槿恵大統領を対北敵対政策に固執していると非難し、「彼女に民族的良心があるならば対北政策を変更し6・15を尊重する道に戻らなければならない」と強調した(総連機関紙「朝鮮新報」6月12日)。
「民族的良心」が問われるべきなのは、「わが民族」を「金日成民族」とし、「金日成・金正日=民族の太陽」「金日成・金正日誕生日=民族最大の慶事」「金日成・金正日・金正恩=民族の最高尊厳」などと主張して「金日成王朝下の統一」を使命とする北韓当局・総連中央と終始行動を共にする郭東儀議長にほかならない。
東京講演会での講演者、呉宗烈・進歩連帯総会議長(6・15南側委員会常任代表)も、韓半島の軍事的緊張を高めているのは北側ではなく常に米国だと主張。さらに「朝鮮半島が自主的に、平和的に統一することは、南側においては『民生、民主主義、福祉を解決することにつながる』としながら、統一を妨害することはこれらを望まないということだと断罪した」という(前述「朝鮮新報」)。
常識的に考えるならば「民生、民主主義、福祉」の解決が急がれるのは、南側ではなく北側だ。金日成一家による独裁体制が続く北韓は民主主義とはまったく無縁だ。東アジアの最貧国で、しかも世界最悪の人権状況にある。にもかかわらず、そのことには一言半句もない。
呉議長は韓国の進歩派および6・15南側委員会の代表の一人として日本各地(東京に続き愛知、大阪、兵庫)を回り、「わが民族の発展・統一にとって大きな問題があるのは南側だ」と喧伝。多くの同胞が食糧難で餓死しているのを承知の上で核・ミサイル開発を最優先し(これまで28億〜32億㌦投入=韓国国防部推定)、金父子の遺体の永久保存のためにも巨額を投じ続けて恥じぬ3代世襲独裁体制を事実上擁護している。
「金日成民族」を容認…「金王朝下統一」批判せず
◆「総連支持」重要課題視
6・15共同宣言以後も、「わが民族=金日成民族」とすることをやめぬ北韓側が目指す「祖国統一」とは、「金日成王朝による南朝鮮解放統一」にほかならない。
▼労働党規約と北憲法の序文
憲法の下に政府、政党がある韓国と違い、北韓では朝鮮労働党が国家の上に君臨している(憲法第11条)。昨年4月の党規約序文の改正では「朝鮮労働党は金日成・金正日主義を唯一の指導理念とする金日成・金正日党である」とし、「金正恩同志は労働党と人民の偉大な指導者である」と3代世襲を明文化した。
党規約序文は「当面の目的は共和国北半部で社会主義強盛大国を建設し、全国的な範囲で民族解放、民主主義革命を遂行するところにあり、最終的には全社会を主体思想(金日成・金正日主義)化するところにある」と明記。「南朝鮮で米帝の侵略武力を追い出し、あらゆる外部勢力の支配と干渉を終わらせ、(略)祖国を統一し、国と民族の統一的発展を成し遂げるために闘争する」と謳っている。この部分はそのままだ。
党規約に続いて修正した憲法序文で「偉大な首領金日成同志と偉大な領導者金正日同志は民族の太陽であられ祖国統一の救星であられる」と明記。
さらに今年4月1日の最高人民会議第12期第7回会議で憲法の一部内容を修正・補充し、序文に「金日成主席と金正日総書記が生前の姿で安置されている錦繍山太陽宮殿は首領永生の大記念碑であり、全朝鮮民族の尊厳の象徴であり永遠なる聖地である」との内容を新たに加えた。同時に採択した「錦繍山太陽宮殿法」では、同宮殿を「すべての朝鮮民族の永遠の太陽の聖地」として「永久に保存し代々輝かせていくことを、崇高な使命」と定めている。
6・15南側委員会は、このような北側の前近代的・非民主的「民族・統一」論に対して、なんら異議を唱えることなく、北側委員会と「統一推進への参与・結集」を内外同胞に呼びかける共同宣言などを発表してきた。
6・15宣言発表7周年記念民族統一大祝典(07年、平攘)では、「総連に対する支持と声援は民族統一運動の重要課題」と強調。総連の大会・行事などに連帯の祝電を送り続けている。
総連は、北韓を「南北すべての人民の総意によって建設された唯一正当な主権国家、唯一の祖国」と定め、「同胞を『共和国』のまわりに総結集させる」ことを使命としている。「金日成王朝による南地域解放統一」の実現のための闘いの先頭に立つことを表明し活動している。
▼真の団結・統一推進の障害に
北韓が今年3月から6月にかけて、核先制攻撃や全面戦争再開を示唆するなど、対南挑発・恫喝を続け、韓半島での軍事的緊張を高めた時に、総連中央は、歩調を合わせてキャンペーンを展開。 「朝鮮の最高尊厳は即ち総連活動者と同胞の最高尊厳であり第一生命だ」「全体在日同胞は正義の統一愛国聖戦に果敢に力強く立ち上がるだろう」「総連と在日同胞は敬愛する金正恩元帥様が指導する反米大決戦と祖国統一偉業は必ず勝利するとの必勝の信念を持ち、挙族的闘争に合流する」など、北韓当局の忠実な代理・代弁人役を果たした。
6・15南側委員会は6・15共同宣言を実践するための韓国内の民間統一運動団体の結集体だという。韓国内の真に自立した統一運動団体ならば、わが民族、同胞、国民を愚弄するにもほどがある北側の「金日成民族主張」および平和的・民主的統一推進とは真逆の「金日成王朝下解放統一路線」の撤回を速やかにかつ明示的に主張してしかるべきなのに、これまで一度もしていない。
南北の対話・交流・協力を通じた平和的・民主的統一を挙族的に推進するうえで譲れるものと、絶対に譲ってはならないものがある。
民族団結・統一推進の障害となる「金日成民族主張」に対して沈黙を続け、「金日成王朝下統一路線」について頬被りを決め込み、このまま「全民族的な統一運動連帯組織で、統一運動の先鋒組織」などと詐称する「6・15実践共同委」活動を続けるならば、6・15南側委員会は、従北団体視されるだけでなく、「反民族・反統一」団体とみなされ、内外の同胞から厳しく糾弾されてもやむを得ないだろう。
(2013.6.26 民団新聞)