掲載日 : [2021-03-03] 照会数 : 5412
コロナ禍で就業難、元受刑者たちにも…更生保護法人善隣厚生会に聞く
[ 李秀夫理事長(左)と崔光礎副理事長 ]
新型コロナウイルスの感染拡大は雇用情勢にも深刻な影響を及ぼしている。頭を抱えているのが、罪を償い、再出発しようとする人たちの社会参加をサポートしている更生保護法人善隣厚生会(東京都渋谷区)の李秀夫理事長だ。
李理事長によれば、一昨年までは恒常的な人手不足だった。事業主からは「人を回してくれ」という要請が引きも切らず、1週間以内で働き口を確保できた。ところが、昨春あたりから売り手市場が買い手市場にシフト。雇い止めも続き、新たな協力雇用主の開拓に追われるようになった。
労働市場の縮小に加え、給与ベースも下がっている。これまで日立て1万円オーバーが普通だったが、いまはせいぜい8000円だという。就労時間が1日数時間という例も珍しくない。このため、更生保護期間中の約3カ月ぐらいで最低30万円ほどの自立資金を確保し、円満退所するという仕組みにも食い違いが生じている。
主な就業先は通称3Kといわれる土木、建築現場での単純作業に加え、繁華街の新宿に近いことから飲食、配送業務など。これがフォークリフトやクレーンなどのオぺレーター技術があればまた別だ。李さんは「更生保護施設を人的資源の供給場所にしたい。刑務所からの釈放を前後して、専門的なスキルを学べる短期的なプログラムを実施してほしい」と日本政府の対応を要望している。
善隣厚生会は解放直後の1948年9月、在日韓国人有志が創設した「社団法人在日大韓人厚生会」が前身。事業に必要な経費は国からの委託費を主な収入源とし、関係団体からの補助金や篤志家からの寄付金などによって運営している。個人、法人とも税控除を受けることが可能。
問い合わせは善隣厚生会(03・3377・3705)。
(2021.03.03 民団新聞)