掲載日 : [2021-03-17] 照会数 : 4963
在日同胞の暮らし日本社会に伝えた「いま、新しく読む金達寿」
[ 「金達寿コレクション」に見入る人たち ]
神奈川近代文学館コレクション展記念講演
【神奈川】在日同胞作家金達寿氏の生誕100年収蔵コレクション展を開催中の神奈川近代文学館(横浜市中区山手町)で14日、黒川創さん(評論家、小説家)が「いま、新しく読む金達寿」と題して記念講演を行った。
金達寿氏は日本大学専門部芸術科在学中の1940年、『位置』で作家デビュー。解放後、『玄界灘』と『朴達の裁判』がいずれも芥川賞候補になった。70年ごろからは「日本古代史は朝鮮との関係史である」という視座から「日本の中の朝鮮文化」を探求した。
黒川さんは金達寿文学について「横須賀市で廃品回収業を営んでいた時にむさぼり読んだであろう志賀直哉の影響か。在日朝鮮人の暮らしぶりをきちんと伝えたいという意志が感じられる。金達寿が書いてくれなかったら分からないことがいっぱいある。決して抗議文学ではない」と指摘。
作品は「日本語文学として重要。あと100年読み継がれていくようにしないとならない。岩波文庫『青帯』(哲学・思想関係)にこそ収められるべきだ」とも強調した。
金達寿コレクションは没後、「金達寿記念室設立準備員会」が管理していた。全玉寿夫人が寄贈を申し入れ、神奈川近代文学館が04年、文庫として保存していくことを決定した。
展示は14日が最終日だったが、5月22日から7月18日まで再度開催される予定。
(2021.03.17 民団新聞)