掲載日 : [2020-10-20] 照会数 : 6468
留学生受け入れ再開へ 対応いそぐ日本語学校
[ 田附和久 YMCA東京日本語学校校長 ] [ コロナ前の授業風景(YMCA東京日本語学校) ]
新型コロナ「外国人入国規制」緩和
1日から、中長期の在留資格を持つ外国人留学生らの入国規制が緩和された。入国後、14日間は公共交通機関を使わず、自宅・宿泊施設で待機することや追加された防疫措置を条件に受け入れ企業や団体が誓約書を提出する。誓約違反の時は、同企業、団体の名称が公表されるなどの可能性がある。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限によって、外国人留学生が激減した日本語学校はどのような対策をとるのだろうか。
2週間待機などの防疫措置
負担軽減を工夫
YMCA東京日本語学校(千代田区神田猿楽町)の本科コースは、期間に合わせた5コースがある。開講は4、7、10、1月の年4回。定員は全体で100人になる。
帰国しなかったのは、前年度から継続して勉強している韓国、台湾、香港の約30人。残った理由は「一時帰国したら戻って来られないだろう」という不安感からだ。
学生たちはもともと、日本での進学や就職を目指して来日している。なかには両親の心配が募り、やむを得ず中途退学の形で帰国した学生は少なくない。田附和久校長は「学生にとっては無念ですね」と帰国学生の気持ちを思いやる。
今回の緩和策を受けて、韓国、台湾、香港で待機している10数人が、来日の準備を始めたという。
学生を迎え入れる喜びの半面、14日間の待機場所と移動手段の確保は急務課題だ。学校としても負担がかからない形で確保したいという。「留学生のなかには、滞在費用がかかってしまうなら、状況が落ち着くまで延期しようという人も出てくるのではないか」
同校は宿泊施設を併設している。「もし、この宿泊施設で滞在することになったら、食事や手配のことなどを細かく詰めないと」。移動手段についても東京、横浜にあるYMCA関連の日本語学校との共同対応も考えている。
さらに、隔離された学生のために「授業に参加できなくてもネットで見てもらうとか、5月にやったオンライン授業のノウハウを生かした形で何かできないかなども検討している」
学生寮を完備している学校法人金井学園秀林外語専門学校(江東区大島)・秀林日本語学校(墨田区両国)の申景浩校長は、待機学生を寮に受け入れる予定で対策を講じ始めた。同校の入学は4、7、10月の1年3回。今月入学予定の学生は70人。韓国、中国、ベトナム、モンゴルで待機しているのは165人だ。
寮の待機に際しては、寝具は学生に購入してもらうが、滞在費用は食費を含めて1人5万円前後でケアする方向で検討している。移動の費用は同校が負担するという。
申校長は「学生たちの夢をかなえるために環境と対策に尽くしているところ」と話す。来年の見込みについては「読み切れないが、今年ビザの認可が下りた学生たちが、来年2月、3月までに入ればいいと思う」。申校長は長いスパンで考えているという。
慎重な態度を示すのは、東栄国際学園埼玉日本語学校(さいたま市大宮区)の田虓玔理事長(民団埼玉本部団長)だ。
同校は、2011年3月に発生した東日本大震災に伴う福島の第一原子力発電所事故を境に、韓国人留学生が激減した。開校してから原発事故が起こるまでの23年、「韓国の留学生を受け入れてきたので寂しい」。
現在、留学生の主流は中国、ベトナム、ミャンマーなどの170人。来年、110人が卒業する。自国で待機しているのは約20人だ。入学は4、10月の1年2回。今年4月と10月の募集は断念したが、来年度の募集についてはオンラインを通じて50人と面接をした。
今回、田理事長が慎重なのは学生たちを隔離する体制がすぐに整わないからだ。ホテルを確保しても、新型コロナの影響で航空券は値上がりしているうえに、滞在費まで学生が負担できるかは分からない。
学生寮を待機場所にするしても、職員を配置するなど調整に時間がかかる。「若い学生たちを2週間、部屋で隔離できるかといったら、100%管理はできないと思う」と不安材料をあげる。
「学生を受け入れて、問題が起きた時に対応ができないのなら、早急な判断をせずに様子を見るしかない」と、焦らない構えだ。
(2020.10.19 民団新聞)