掲載日 : [2020-04-11] 照会数 : 8733
ハンセン病の両親もって…在日2世苦悩の軌跡『閉じ込められた命』
兵庫在日外国人人権協会から刊行
ハンセン病家族訴訟団の原告副団長を務めた在日2世の黄光男さんを通して「ハンセン病と朝鮮人差別」を考える書籍『閉じ込められた命』(写真)が兵庫在日外国人人権協会(孫敏男代表)から発刊された。
黄さんの母親と姉(6)は1956年12月、岡山県のハンセン病国立療養所長島愛生園に強制隔離された。当時1歳だった黄さんは岡山市内の新天地育児院に。1年後には父親ともう一人の姉もハンセン病に罹患していたことがわかり、愛生園で4人一緒に暮らすことになったことを黄さんは知らないまま育った。
黄さんは70年代から民族差別と闘う兵庫連絡協議会(兵庫民闘連、兵庫在日外国人人権協会の前身)にかかわるようになったが、仲間に対しても両親がかつてハンセン病だったという事実をひた隠しにしてきた。なぜなら「ハンセン病差別の問題を朝鮮人差別と同様に引き受けることができるのか。無理ではないか」と思っていたからだ。
ようやく「カミングアウト」できたのは12年のこと。大阪で開かれた同じような境遇の人たちによる小さな学習会だった。翌年は「両親が強制隔離された事実を実感してもらいたい」と、人権協会の仲間を長島愛生園に案内する「スタデイツアー」を実施した。
黄さんは高校生時代の「本名宣言」に触れながら、「一歩足を踏み出すからには本人の勇気はもとより、それをきちんと受け止めてくれる側の人が必要だった」と振り返った。
本書には18年まで8回にわたった「スタデイツアー」の報告文と参加した若者らの感想、ハンセン病家族訴訟勝訴までの記録なども収めている。頒価1200円(送料込み)。
注文は兵庫在日外国人人権協会(FAX06・6492・3272、メール
jinkenkyo@hotmail.com)
(2020.04.10 民団新聞)