掲載日 : [2006-11-15] 照会数 : 6752
韓国のタル(仮面)に魅せられ 余江勝彦氏
再現に情熱燃やす
日本文化の源流強く意識
日本人の「物作り作家」で元中学校教員の余江勝彦さん(65)=舞鶴市在住=は韓国のタル(仮面)に魅せられ、韓国東海岸の町や村を訪ねてはその地方の歴史や伝統、アイデンティティーに根ざした独自のタルを再現することに情熱を燃やしている。苦心の末これまでに作り上げたタルは現在34個。将来的には100個の制作が目標だという。
タルは紙、木、瓢、毛から作られている。一番苦労したのは安東地方の木彫りのタルだ。安東を訪ね仮面作家に指導を請うたが、見事に断わられた。材料がわからないまま松、杉、檜などで試し、すべて失敗した苦い経験もある。木目がなく、粘りのある柔らかい樺の木にたどり着くまでには3年の歳月を要した。目や口の曲線は5㍉ほど薄く削って作った。
余江さんがタルに挑戦しようと思いたったのは東九条マダンの美術装飾に参加していたとき、主宰者である朴実さんから工夫してタルをつくってほしいと頼まれたためだ。「物作り作家」としてのこだわりから2カ月に1回のペースで訪韓し、文献をあさった。
現在は韓国で仮面探しをする余江さんを車で案内してくれる現地の協力者も出てきている。釜山では人間国宝の千在東さん(93)の自宅を訪ね、制作した仮面を見せてもらったこともある。
余江さんは「日本文化の源流は韓半島。天平時代の仮面も、もとは安東の文化が伝わったもの。日本の文化の源流を知ることはとても大事なこと」と話している。余江さんの制作した仮面は一昨年から東九条マダン会場で展示されている。
(2006.11.15 民団新聞)