掲載日 : [2006-10-25] 照会数 : 9656
チマチョゴリにこだわりたい 「ポンナル」代表の張裕幸さん

在日の感覚大事に…伝統結婚式150組以上プロデュース
韓国に自社工場、専属のアーチストも
アルフアベット「A」の文字形に似た華やかなチマチョゴリのシルエットは、礼服としてのチマチョゴリのイメージを超えた華やかさだ。ブライダル「ポンナル」代表の張裕幸さん(39)は「在日の感覚にあったパーティードレスを作りたかった」と話す。
「ポンナル」は古典衣装200点、ドレスチョゴリ100点、ゴージャスなオリジナルドレスは150点以上を常時そろえているチマチョゴリの専門店だ。オーダーもレンタルも請け負う。
オリジナルドレスはよく見ると、小バラの刺繍を施してあったり、ピンクとパステルグリーンのスパンをちりばめるなどアイデアいっぱい。これは韓国に自社工場を持ちポンナル専属の絵描きと刺繍の専門家を確保しているからこそだ。
ベースこそ韓国だが、韓国にもない「ポンナル」のオリジナルはここから生まれる。同じく頭にかぶるチョットゥリもポンナルの専門スタッフがビーズなどを加え、在日同胞の感覚に合わせている。
「ポンナル」のもう一つの特徴は伝統的な結婚式や披露宴をトータルでプロデュースしていること。張さんは「うちが初めてではないか?」と胸を張る。司会演出はもちろんヘアーメイクからビデオ撮影、カメラ、歌舞の手配までOK。民族楽器を響かせ、故郷の民謡で盛り上げるのはお手のものだ。この10年間で150組を超す結婚式をプロデュースしてきた。
張さんは25歳から片手間に結婚式などの司会を始めた。そのとき、衣装やカメラマンの手配、式場、ヘアメイクなどの相談に乗っているうち「全部引き受けよう」と思い着いたのがポンナル創業のきっかけだった。当初は横浜市戸塚区にあった電器屋さんの一角に店を構えたのが始まり。
スタートして1年間は問い合わせの電話が鳴るのをひたすら待つ日々が続いた。司会業で稼いだお金をいくらつぎ込んでも足りなかった。評判を聞きつけて北海道や九州から飛行機で駆けつけた顧客が、貧相な店構えを見て引き返してしまうのを目撃したこともあったという。
それでもめげず、韓国に何回も足を運び、在日独自のチマチョゴリを追究してきたことで来店客の心をつかんでいった。「ほかのところでは真似できないスタイル」が完成したのは4年目に入ってからだった。半信半疑で来店した客が、笑顔で店を出るようになった。チマチョゴリにかけた張さんの「こだわり」が伝わったかのようだ。
事業は軌道に乗り、2年前に横浜駅からほど近い西区に自社ビルを構えた。見上げると2階のショーウインドウ越しに張さん自慢のオリジナルチマチョゴリを見ることができる。いまや肉料理を食卓にのせるかどうかで迷ったという苦境の時代は過去のものになったようだ。
目下の夢は韓国でチマチョゴリのフアッションショーを開くことだという。そんな張さんからは在日としての強烈な自負心が透けて見えた。
12月11日には横浜みなとみらい赤レンガ倉庫1号館で新作コレクションのフアッションショーとミニコンサートを開く。入場無料。問い合わせは℡045・321・6005、ブライダル「ポンナル」。
(2006.10.25 民団新聞)