掲載日 : [2006-10-25] 照会数 : 6859
韓流と日流 国民感情の非政治化期待
[ 韓流と日流が磨き合えば、東アジアの文化的コラボレーションをリードすることは間違いない ]
韓日首脳会談の際に安倍首相の夫人・昭恵さんがソウルの小学校を訪れ、国語教科書をすらすらと朗読、並みの韓流ファンではないことを証明し、両国のマスコミで話題になった。韓流がまだ下火にならない日本。日流が静かに浸透する韓国。韓日関係の改善と発展を保障するために、韓流・日流がより奥深く相互乗り入れし、切磋琢磨し合うことになれば、その意味は大きい。(編集部)
進む相互乗り入れ
切磋琢磨し持続・拡大へ
日本首相の靖国神社参拝、歪曲歴史教科書、独島領有権が韓日関係をこじらせる3点セットとされ、事実、これらの絡み合いでこの1年の両国関係は過去最悪とまで言われた。
両国も経済関係に限っては、そのような政治要因に左右されないほど成熟してきた。だが、日本で韓流がもてはやされ、韓国でも日流がじわりと広がっているにもかかわらず、両国の国民感情が政治に過敏な反応を示す傾向は変わっていない。日本では韓流の先細りも指摘され始めた。
盛り上がり過ぎたがゆえの自律調整なのか。または、嫌韓感情の反映なのか。ある調査によれば、日本人の訪韓者数は04年2月以降、前年同月比で一貫した増加傾向にあったが、昨年5月に減少に転じて以来、12カ月連続で減ってきた。
嫌韓は強いが
韓国日報と読売新聞の共同世論調査(8月7日発表)によれば、日本人の対韓感情は明らかに悪化している。「韓国は信頼できない」とする回答が51%で、昨年比17%も増えた。また、韓国に「悪い印象」を持つ人も51%と同じく9%の増加だった。これは両社が95年に共同世論調査を始めて以来、最も高い数値だ。
嫌韓感情が一気に昂進したのは、今回の場合、韓国に一定の理解を示してきた日本人までが「日本を嫌う韓国を嫌う」という側面を前面に出すようになったからだと思える。
つまり、韓流の大々的な受け入れに象徴されるように、自分たちは対韓感情を好転させてきたにもかかわらず、韓国人は政治問題に過剰に反応し、反日意識が露骨に過ぎる、という反発だ。その背景には、台頭する中国と北韓の脅威が増大する東アジアにあって、理念的には多くの価値観を共有し、連携を深めるべき両国の関係が、不安定なことへの苛立ちもある。
それだけに嫌韓意識の昂進は、政治関係の改善によって消える一時的な現象とする見方も強い。確かに、長期的には韓流効果の積み重ねが対韓感情の長期的な基調を健全化させており、ひと昔前のレベルにまで逆流するとは考えにくいだろう。
韓流や日流に対しては、両国の国民・市民レベルの感情的な関係を、経済と同じく非政治化する効果を持つものと期待されていた。要は、政治関係が険悪化しても国民感情には大きな影響をもたらさないよう、両国関係の根幹を損ねない心の土壌を開拓しようということである。その方向で効果をさらに積み増すには、韓流・日流が持続・拡大されるべきだ。
作品性に課題
韓国における日流の主役は小説であり、書店での売上が急伸しているほか、ソウル大、高麗大、西江大などの図書館で貸出し総合順位20位以内に日本人作家の作品が8冊も入っている。江國香織、吉本バナナ、村上春樹、綿矢りさといった面々だ。日本の作品性・作家性が、次代を担う若い女性の心性にフィットした。一方の韓流は、作品の多様性が豊かとは言えず、差別化が容易ではない一部のスター群に依存し過ぎており、受け手も年配の主婦層に偏っている。
世界アニメーション市場の65%以上を占める日本作品は、日本国内の厚い底辺と激烈な競争があってこそのものだ。韓流をさらに持続させるためには、スターシステムから脱却して韓国独自のコンテンツを日本アニメーション並みに深め、作品を蓄積することがまず求められる。
日流は韓国人と日本人の感性を近づけた。エンターテイメントから入った韓流は、普通の日本人を韓国の伝統文化に引き寄せた。相互乗り入れは、関係が深まれば深まるほど摩擦も増えるという段階を超え、相互理解の道を拓き、国民感情を非政治化する濾過装置になる。切磋琢磨はまた、韓流・日流を持続させるとともに、東北アジアをアジア全域の文化的コラボレーションの機軸に発展させることになるだろう。
(2006.10.25 民団新聞)