掲載日 : [2022-09-29] 照会数 : 792
外国人犯罪視の職務質問 不審事由なし7割が不快感
[ アンケート結果をもとに最終報告書を発表する委員会メンバー ]
東京弁護士会「委員会」調査
何ら「不審事由」がないにもかかわらず、外国にルーツを持つ人を調査対象に絞って行われる職務質問(「レイシャル・プロファイリング」)が増えていることが、東京弁護士会「外国人の権利に関する委員会」(高橋済委員長)のアンケート結果で明らかになった。同委員会が9日、最終報告書を公表した。
単に外見が「外国人風」、あるいは外国語で話をしているというだけで警察官から職務質問を受けたという事例は決して珍しくない。東京弁護士会外国人の権利に関する委員会が2007年にまとめた「外国人に対する職務質問アンケート結果報告書」によれば、回答者の実に8割以上が「不審事由」がないなかで職質を受けたと回答している。これは氷山の一角でしかないという。
もしや警察官職務執行法第2条の「不審事由」の要件を満たしてはいないのではないか。こうした疑問を背景に、同委員会が正確な実態把握に乗り出したのが今回のアンケート結果だ。対象者は2100人でウェブ上のフォームを利用して自記式調査を行った結果、有効回収は2094人だった。調査期間は今年1月11~2月28日。
地域別民族的ルーツではヨーロッパが32・7%と最多。続いて北アメリカ、北東アジア、東南アジア、中南米の順。韓国は2・2%で国籍別にみると上位8番目。
過去5年以内に職務質問を受けた経験があるのは全体の62・9%。このうち半数は2~5回に及んでいた。警察官の態度はおおむ「丁寧だった」とされる。だが、一部ながらタメ口になるなど、警察官の質問・態度で気分を悪くした経験があると回答した人が7割に達していた。
ある人は「職務質問には協力しますが、態度と言葉遣いがしっかりなっていないまま高圧的な態度を取られてしまうと、自分が犯罪者であるかのように思えてきて気分が悪くなります」と回答している。中には日本で生まれ育ちながら、「お前ら外国人は国に帰れや、外人に人権などない!国に帰れ!家族そろって国に帰れ!」と怒鳴りつけられたという人もいたという。
警察官から言われたことのうち、最も多かったのは「どこに行くのですか?」(57・4%)。以下、「何をしているのですか」、「どこに住んでいるのですか?」。回答者の半数以上は話しかけられるやすぐに在留カードの提示を求められ、荷物検査を強いられたという人も半数近かった。
警察官による職務質問は任意であり、「答えたくないことは答えなくて構わない」。しかし、職務質問を受けた人のうち、事前に同趣旨の説明を受けていた人は6・4%にとどまった。あまつさえ「質問を終わりにしてほしい」と伝えても「警察官はそのまま質問を続けた」という事例も3割に上った。
記者会見した同委員会関係者は「外国人=不良外国人であり、犯罪の対象とみるのが警察官の一般的な肌感覚になっている。職務質問そのものは有効だが、外国人風の見た目だけで判断するのであれば、人と違うことが許されない社会といえる。一般の人権感覚とは相いれない」と指摘し、警察官に対する人権研修の必要性を訴えた。