掲載日 : [2019-01-30] 照会数 : 7638
教員なのに「講師」管理職にもなれず…在日3世の嘆き
[ 公立学校教員の国籍差別を検証する有識者と弁護士 ]
「下級教員と誤解されないか」 国籍条項シンポ
外国籍者が日本人と同じ一般の教員採用試験を受けて選考に合格しても公立学校では「教諭」につけず、「期限を附さない常勤講師」として任用される。現場で教諭とほぼ同等の役割を担いながら職名は講師のために管理職への道を閉ざされ、結果的に生涯賃金で大きな格差を生んでいるのが実態だ。NGO自由人権協会がこうした公的国籍差別にメスを入れる連続企画をスタートさせた。
自由人権協主催
第1回は「公立学校教員の国籍差別~常勤講師問題」。19日、東京・千代田区の中央大学駿河台記念館で開かれた。
文部省(当時)が外国籍にも一般の教員採用試験の門戸を開放したのは韓日両国外相が署名した覚書(91年1月10日)に基づく。この覚書は明暗の両側面があった。「当然の法理」を理由に外国籍の教員採用試験を認めてこなかった自治体の門戸を92年度の教員採用試験から一律に開いたことは前進だったが、東京都や大阪府・市のように70年代から独自に国籍要件を撤廃していた先進的な自治体には後退の結果をもたらした。
東京都や川崎市は91年3月の文部省教育助成局通知後も「教諭」任用を続けているが、管理職には制限を設けた。また、大阪府・市、堺市は職が教諭から「講師」に変わり、職名に「指導専任」の肩書が付いた。
ちなみに中島智子さん(プール学院大学元教員)を中心とする「公立学校外国籍教員研究会」の調査(2012年)によれば、全国257人の外国籍教員のうち、214人が大阪府内を中心とする近畿地域に偏在する。
在日3世、李智子さんは横浜市教委に期限を附さない常勤講師として任用された。採用されてから今年が13年目の中堅。教科指導にも自信があり、日本人の同僚教師には引けを取っていないという自負を持っている。
それでも期限を附さない常勤講師としての冷徹な現実を意識させられる時がある。それは職名に「講師」と書かなければならないこと。名刺の肩書も「講師」だ。いつも「なんで?」と自問自答している。「どうせ一生懸命やっても権利はもらえない」となれば、やる気にも響く。生徒や保護者から「下級教員」と誤解されないかとの心配もつきまとう。
李さんは「教員になったのは子どもたちと関わりたかったからこそ。校長や副校長、教頭になりたかったからではない。でも、管理職になったらこそできることもある」という。たとえば人権教育もそうだ。期限を附さない常勤講師と教諭では諸手当を含む生涯賃金にも大きな格差が生じる。辛いのは教員を志望する外国籍の生徒にこうした現実をどう説明するのかということだという。
中島さんは「『当然の法理』は論理ではない。国民の教育を外国人に任せられないといった情緒的、非論理的な側面が感じられる。外国籍も日本人とおなじ質の仕事をしているのに、現実に合っていない。学校現場でも周知しているのに、議論できる場が設定されていない」と指摘している。
(2019.01.30 民団新聞)