掲載日 : [2018-09-26] 照会数 : 7565
同胞高齢者に居場所…新宿に「サランバン」オープン
[ サランバンの利用者と意見交換する福祉会のスタッフ ]
福祉の専門家が相談窓口…介護保険の申請や病院で通訳対応も
介護や社会福祉などの分野で専門資格を有する在日韓国人たちが非営利のボランティア団体「在日韓国人福祉会」をつくり、地域の同胞高齢者のための支援活動を行っている。7月には同会が拠点としている東京都新宿区内のそら訪問介護事業所内にコミュニティカフェを兼ねた無料福祉相談窓口「サランバン」を開設した。
「サランバン」は家に閉じこもりがちなお年寄りに足を運んでもらい、介護保険など福祉相談の窓口となって悩み事の解決にあたるのが目的。電動マッサージや電気周波治療器も備えている。
スタッフは新定住者を中心に22人。このうち10人は介護福祉士、ケアマネージャー(介護支援専門員)、看護師、理学療法士、通訳案内士などの有資格者。ちなみに仲間に呼びかけて同会を設立した金榮子さん(そら訪問介護事業所管理者)は社会福祉士と介護福祉士の両免許を持つ。
福祉サービスでカバーできるのは基本的に新宿区内。スタッフは加齢とともに日本語を忘れ、母国語に戻りつつある要支援者が通院する際の日本語の通訳補助、手術時の立ち合い、介護保険の申請、都営アパートへの入居申請書類の作成などを担う。それぞれが要支援者の置かれた状況について情報を共有し、必要な時には誰かが臨機応変に動けるようにしている。
金さんは大学で社会福祉を専攻。学生時代、実習先の特別養護老人ホームなどで生活言語の日本語を忘れて周囲から孤立した同胞高齢者の姿を目の当たりにしてきた。新宿区の病院でボランティア活動に従事したときは、急性期でなくても心の居場所を求めて通ってくるのを見て、「福祉専門職の手が届かないまま社会から孤立するケースは多いはず。援助の手を差し伸べていかなければならないと思った」と話す。
2015年、大学時代の同胞仲間と「在日韓国人高齢者を考える会」を立ち上げ、月1回のペースで認知症とその疑いのある家族を抱える介助者をサポートしてきた。それが現在の「在日韓国人福祉会」につながっている。
スタッフの一人、尹瑛淑さんは昨年から介護の勉強をしている。きっかけは韓国で暮らす85歳の母親を亡くしたこと。「日本に来て年配の方を見ると、お母さんを思い出す。一人でさびしく苦しんでいる人がいたら少しでも役に立ちたい」と話す。同じく婦人会東京本部の会長を歴任した河貴明さんは「介護福祉士の資格を生かして自分たちができることをやってあげたい」という。
一方、支援を受けるあるお年寄りは、「学歴もなく日本語もわからずに苦労した。こうした居場所ができたことには感謝する」と語った。
(2018.09.26 民団新聞)