掲載日 : [2020-02-27] 照会数 : 5975
EAST MEETS EAST「日本/韓国のこころの歌」
[ 舞台中央で挨拶する加藤登紀子氏、左から2人目ソンジェ・ソン氏、右から2人目が福盛進也氏 ] [ 福盛進也(左)氏と花井雅保(右)氏 ]
感動呼んだ合同コンサート
企画2氏に聞く
昨年12月14日、東京・墨田区の会場で、韓日のトップ・ジャズミュージシャンによるコンサート、EAST MEETS EAST「日本/韓国のこころの歌」が開かれた。西洋音楽と韓日の懐かしい曲を融合させた演奏は、在日韓国人や韓国人を含む観客170人に深い感動を与えた。「アジア人にしかできない音楽」を発信する出演者でドイツ・ミュンヘン在住の日本人ドラマー、福盛進也さん(36)、音楽プロデューサー、花井雅保さん(50)に聞いた。
「情感、深く重なる
アジアに新しい音楽地図を」
観客のアンケートには「日韓ハーフの私にとってとても嬉しい企画」「会場の雰囲気も最高で、超人なる企画力に脱帽した」「歌詞を聞いて、自分のある生徒が思い浮かんで、この曲を共有したいと思った」などの声が寄せられた。
ミュンヘンからSkype取材に応じてくれた福盛さんは「僕たちにしかできない音楽がそこにあって、観客と演者の僕らで分かち合えたことが1番大きかった」と手応えについてそう話す。
名門ジャズ・レーベル「ECM」に所属する韓国のサックス奏者、ソンジェ・ソンさんと福盛さんが出会ったのは昨年3月。初訪韓となるソウルでのコンサートだった。
演奏後、お互いの音楽性に深く共鳴。両国に共通する郷愁感は音楽でこそ交流できると、プロジェクト「EAST MEETS EAST」を発足させた。
その第1弾となる今回のコンサートでは韓、日、在日韓国人に思い出深い曲をリサーチし、イムジン河、アリラン、愛燦燦など14曲が決まった。両国の実力派女性ボーカリスト2人と、歌手の加藤登紀子さんが名曲を情感たっぷりに歌い上げた。
福盛さんは大阪市阿倍野区生まれ。15歳でドラムを始め、17歳の時に芸術高校で音楽を学ぶために単身で渡米。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し、欧州各国で活動してきた。
渡米した時「欧米に対する憧れも強かったし、アジア人でいることが嫌だった時期もあった」。差別もある中で「自分は日本人だ、アジア人だということを受け入れ始めた頃から、日本とかアジアの見え方が変わった」。
福盛さん同様、音楽を学ぶため渡米していた花井さんは帰国後、日本の伝統芸能を習い始めた。 「結局、そういうところに行くためのプロセスだったのかな。だから福盛さんやソンジェがこれから作る音楽は遠回りをしなくても、そこにすぐ行けるのかもしれない」
花井さんは何度も「情感」という言葉を口にした。それまでインドネシアなどの人たちと作業をしたこともあるが「同じ情感を持っていたのはソンジェだった」。
以前、ソンジェ・ソンさんは、福盛さんについて「日韓を中心にアジアに新しい地図を描こうとしている」と語っている。
この意味を福盛さんは「在日の方が問題を抱えて日本で生きているという事実を、多くの日本の人たちに知ってもらうきっかけになれば」という思い。そして「僕たちが中心になってアジアのシーンを盛り上げて、アメリカやヨーロッパだけではない僕たちの音楽もあるというのを紹介していきたい」と説明する。「何かしらポジティブなきっかけになればいいと思って音楽をやっている。今回もその一つ」。アジアの音楽家による取り組みは始まったばかり。今後の展開に期待したい。
(2020.02.26 民団新聞)