経営多角化を推進「雇用を守るために」
在日プロデューサー 高徹さんに聞く
新大久保コリアンタウン(東京・新宿区)で、K‐POPアイドルグループのライブを手がけてきた在日3世の高徹さん(プロダクション「ワンワールド」代表、プロデューサー)。2月に大阪のライブハウスで開催されたコンサートの参加者から新型コロナウイルス感染者が確認されたのを受け、素早く非接触型のオンラインに移行。さらに、社員の生活を守るためにオンライン事業に着手した。
日本政府が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、韓国からの入国規制を始めたは3月9日から。高さんが呼び寄せた2グループは、それ以前に入国していたので同月29日まで公演することができた。
ライブ会場では毎回、朝に噴射機で消毒し、マスク着用を義務づけ、サイン会も手袋を着用するなど、防疫を徹底した。
コロナウィルスに対する危機感が高まったのは、大阪のライブハウスで感染者が出てからだ。「この業界が接触型で、3つの密が存在する。これから難しくなっていくなと感じた」
自ら、オンラインの仕組みなどを研究するため、関連会社へ視察にも行った。4月上旬から始めた、グループ「NTB」などのオンラインでの無観客ライブやサイン会は、ファンから「距離が近い」と好評を得ている。「今、会えないということが大前提の世界の中で、ズームでサイン会をするときはアーティストと会話もできる」
現在、社員は韓国のプロダクションも含めて13人。社員以外に、プロダクションとしてアーティストの衣食住の面倒もみなければならない。
当初、遅くても4月には入国規制が解除されると思っていた。だが、その出口は見えない。「僕を信じてついて来てくれた社員の今を守るだけじゃなくて、将来も守らないといけない」
現在、衛生商品を扱うオンライン事業を4月下旬から始めたのを皮切りに、国際郵便関連事業、ホームショッピングは6月中旬に韓国で会社を立ち上げる予定だ。
「これらは雇用を守るためにやっている。これだったら需要として会社が存続できるということ、また成長性があるものをみて動いている」
高さんは大阪・東大阪市生まれ。1歳半のとき、父親は肝臓を患い入院。小学5年のときに亡くなった。以来、母親はミシン縫製の仕事で子ども3人を育てた。
「オモニは太陽みたいな人。何がなんでも公平で、姉弟にも平等だった」。幼い頃から母親の背中を見て育った。「オモニの生き方に疑問を持ったことなはいし、尊敬している」
「コロナが起きたから会社を潰すとか、仕方がないよねとは思っていない。こういうことも起こることを想定して社員を守る覚悟をしておかないといけない、というのが運営者の在り方だと思う。道は険しいけど、先にセーフティーを作るのが僕の仕事だと思っている」。この間、いくつも種をまいてきた。「秋にしっかり実っていたらいいなと思う」。高さんは期待を込める。
(2020.06.10 民団新聞)