掲載日 : [2019-02-14] 照会数 : 8128
民団初代団長 映画「朴烈」主演の崔僖序さんに聞く
[ なめらかな日本語で語る崔僖序さん ]
民団初代団長の朴烈氏と金子文子 信念を貫いた2人
韓国で大ヒット「日本人観変えた」声も
民団初代団長の朴烈氏と金子文子さんを描き、韓国で2017年に235万人を動員した映画「金子文子と朴烈」(原題は『朴烈』)が16日、東京、大阪、京都を皮切りに新潟、宮城、長野、神奈川、栃木などで順次公開される(本紙1月30日既報)。金子文子役を演じた崔僖序(チェ・ヒソ)さんは、本作品で大鐘賞映画祭新人女優賞、主演女優賞のほか、韓国映画評論家協会賞、青龍映画賞などでも新人女優賞を獲得し、人気女優の仲間入りをした。崔さんに見どころなどを聞いた。
小学校時代を大阪で過ごす
「韓国であまり知られていない2人を描いた点が、観客にとても衝撃的でした。しかも、時代は大正時代。文子が国の壁を越え、朴烈とともにアナーキストとして帝国主義に立ち向かった『共闘』の事実は驚きだったと思います」と、235万人集客の理由を語る。
16年8月からの資料調べ、翻訳の手伝いなど、映画の下支えをした末のヒロイン決定だった。嬉しい反面、負担も大きく、家に閉じこもって1カ月以上かけて裁判記録に目を通した。その記録が裁判シーンのせりふに生かされている。
韓国語と日本語がほぼ半々という韓国映画初の作品。前作「ドンジュ」に続く日本人役だ。小学2年から卒業まで日本で生活し、大阪の民族学校に通った。5年生の時にクラスの演劇で初主演したのが、演劇に興味をもった第一歩。ネイティブスピーカーと言われてもおかしくないほど、流ちょうな日本語が口をついて出るが、「日本語だけのせりふや役柄づくりには苦労しました。100点満点とは言えませんが、本当に最善を尽くしたので後悔はありません」ときっぱり。阪神大震災を経験していることが、関東大震災のシーンの演技に生かされたのではと謙遜する。
文子が惹かれた朴烈の魅力については、「自らの思想を詩『犬ころ』に込め、権力者に『吠えた』朴烈は、住む家もなく、友人宅を転々としていましたが、とても堂々として自信にあふれていました。その姿に魅力を感じたのではないでしょうか」と分析する。
植民地時代の日本人はみんな悪かったと、韓国人は思いがちだ。しかし、虐待された韓国人のために闘った布施辰治弁護士のような人もいた。この映画を通じて日本人観が変わったという声がブログなどに寄せられている。反響は大きい。
「信念を貫いて生きた20代前半の男女の歴史。憎しみの感情を描いたものではなく、実際に起きた事実を理性的に描いています。文子にとっては、日本人とか韓国人とか云々だけでなく、朴烈と性別さえも超えて同志として愛し合った事実が韓国人の心を一番つかんだと思います」。
映画で取り上げなければ、人々に忘れ去られる歴史と人物を描いた。その自負が全編に貫かれている。
(2019.02.13 民団新聞)