掲載日 : [2019-04-17] 照会数 : 9930
宮川昌子さん、韓国料理に魅せられて
[ 宮川昌子さん ]
日本人初、薬草扱う資格も取得
惜しみなく生徒に伝授
昨年9月、韓国農林畜産食品部管轄の「薬用作物産業管理士」資格を日本人で初めて取得した韓国料理研究家の宮川昌子さん。駐在員の妻として4年近く滞在したソウルで、韓国料理に魅せられた。「美味しい料理を作りたい」と料理学校に通い、韓国の国家試験「韓食調理技能士」に合格。現在、日本のカルチャーセンター3カ所ほかで教えている。宮川さんは「韓国料理と出会ってから人生が変わった」と話す。
現在、韓国では薬事法規制が厳しく「薬用作物産業管理士」資格のない者は、薬草を用いた商品開発や指導などができない。政府は、同資格の教育機関を3年ごとに変えており、一昨年、ソウルのホソ大学校ベンチャー大学院を認定した。
幅広い専門性を身に着けるための教育は170時間に及ぶ。この資格を取得した海外在住の韓国人1号は、韓国宮廷料理研究家の崔誠恩さんで、他に在日同胞が3人いるが、宮川さんは日本人1号になる。
家族で駐在生活を送ったソウルで韓国料理に魅せられた。「辛さに慣れてきたら、こんなに美味しい料理があるんだと思った」。自分で作りたいと韓国人の主婦から習った。同時に取り組んだのは韓国語の勉強だ。梨花女子大学校の語学堂に入るが、料理ほど熱中できずに断念した。当時「自分の好きなことを形にして日本に帰りたい」という強い思いがあった。
韓国料理を基礎から学ぶため韓福善料理学院・調理師クラスに通った。だが、すぐに壁にぶつかる。「教科書はハングル。筆記試験に通らないと実技にいけない」。「韓食調理技能士」は、実技を通過しなければ取得できない。猛勉強を重ね、何度か落ちた末に合格した。
実技試験には、全国の調理師学校から受験生たちが集まった。最初は緊張のあまり問題が頭に入らない、何か言っているけど聞こえないという経験もした。何度か受けて、ようやく受かったのは一時帰国する当日だった。
滞在中、さらに宮中飲食研究院の正規班(修了)、ホテル新羅の週末料理講座班(修了)で、勉強を続けた。
念願の資格を持つことで「日本人なのに韓国料理教室を任せてもらえる」。帰国後、生協のカルチャーセンターを皮切りに、現在、3カ所のカルチャーセンターと単発で教えている。
教え始めてから10年経ったとき、料理のスキルをさらに磨き上げるために、韓国伝統飲食研究所(尹淑子所長)で、薬膳料理、郷土料理、宮廷飲食、餅・デザートのマスターを取得した。この間、崔誠恩さんと出会い、崔さんが会長を務める大韓民国伝統飲食総連合会東京支会に所属するなど、活動の場を広げていく。
韓国や在日の人たちから「『小さい頃から食べてきた味』は、日本人だから出せないんじゃないかと言われると、私は引け目がある。だからずっと勉強なんです」。
韓国で習ったレシピは惜しみなく教える。「せっかくお金と時間を使って来てくれている」生徒たちへの配慮だ。
韓国料理教室で、一緒に美味しいと言ってくれる時間を共有できることが嬉しくてたまらない。
「私に幸せの時間をくれた韓国料理に対してお礼をするためにも、いろんな人に美味しさをひろめたい」と語る。
(2019.04.17 民団新聞)