掲載日 : [2019-08-28] 照会数 : 8336
時のかがみ「韓国語で夢をかなえる」桑畑優香(ライター・翻訳家)
[ 常葉大学での筆者の講義風景 ]
大学で講義し感じた
第3次韓流ブーム
テーマは、「韓国語で夢をかなえる」。静岡県静岡市の常葉大学でゲスト講義を行ったのは、7月2日のこと。外国語学部グローバルコミュニケーション学科の福島みのり准教授が担当する、「韓国文化入門」クラスで、生徒は101人の1年生。福島先生は、90年代半ばにソウルの日韓学生交流サークルで出会った留学時代からの友人で、「韓国語を生かし仕事をしている体験談を聞かせてほしい」と、お声がけいただいたのだ。
韓流という言葉が生まれるずっと前、住む以前は民主化運動とキムチのイメージだった韓国で、パク・ジニョン(TWICEを率いるJYPエンターテインメント代表)をはじめK‐POPの始祖たちの音楽に触れ「面白い!」と感じたこと。BTSと芸能高校の取材など思い出の仕事ベスト5や、韓国ファッションのセレクトショップや音楽配信など、韓国語を生かして働く仕事の最新トレンドについても語った。昔話や手前みその話題も多かったにも関わらず、学生たちは熱心に耳を傾けてくれた。
講義から約10日後。福島先生から「学科内で韓国語を選択する学生の数が史上初の人数になりました」といううれしいメッセージが届いた。グローバルコミュニケーション学科では2つの言語の履修が必須で、1年生の春学期末に、韓国語、中国語、スペイン語、ポルトガル語から選し、9月から学び始める。例年圧倒的に人気があるのは、「話者が多い」「経済的に成長している」という理由で将来ビジネスに生かせそうなスペイン語や中国語だ。だが、今年は韓国語希望者が中国語を抜き、1位のスペイン語に肉薄する結果になった。特に、毎年数人程度だった男子学生が倍以上に増えたという。
政治経済の問題で「日韓関係は史上最悪」と言われる中、なぜ多くの学生たちが韓国語を選択したのか。福島先生が挙げるのは、第3次韓流ブームによって韓国に関心がある層が拡大したことだ。韓国語履修者にはK‐POPに熱狂しているマニアックな人が多かったが、最近は食べ物やファッションが好きという〝普通の人〟が増えてきた。また、K‐POPが女性だけでなく男の若者層にも浸透してきたことが、男性履修者増加の理由の一つとみる。「韓国に関心がある人のすそ野が広がり、政治に影響されない層が確立されたのだと思います」
一方で、福島先生が授業で大事にしてるもう一つの軸は、政治や歴史を両国の視点で説明することだ。「例えば安重根は日本ではテロリストと言われているけれど、韓国では独立運動の革命家として捉えられている。領土問題もしかり、歴史の形成を両国の立場できちんと説明すれば韓国嫌いにはならない。学生たちはすごく冷静に受け止めています」
「短期留学を考えている」「韓国ファッションの仕事をしたい」ゲスト講義の後、次々と教卓の前に来て、目標を語ってくれた学生たち。芽吹き始めた夢の数々が大きな花を咲かせるよう、心から願っている。
(2019.08.28 民団新聞)