掲載日 : [2023-03-01] 照会数 : 1701
外国籍排除に異議あり 調停委員 東京弁護士会シンポ
調停委員(司法委員・参与員)を中心に外国籍者の公務就任権の問題全般について考えるシンポジウムが2月16日、非対面のオンライン方式で開かれた。東京弁護士会が若手弁護士を主な対象に内部向けの「勉強会」として主催した。
調停委員は民事や家事の争いを解決できずに悩んでいる当事者双方から話を聞き、争点を整理して解決のために導いていく存在。民間から選ばれる非常勤の裁判所職員という立場だ。これは司法委員・参与員も同じ。
外国籍者の就任を妨げる法令上の明文根拠はない。にもかかわらず、最高裁は「たとえ法律に書いていなくても、公権力の行使もしくは重要な施策に関する決定をし、決定に参画する国家公務員であるから日本国籍を有する者に限る」としたいわゆる「当然の法理」だ。
日本弁護士連合会発行の啓発パンフ「2021年10月改訂版)によれば、これまでに採用を拒否された弁護士は韓国籍を中心に少なくとも13人にのぼる。
名城大学教授で「外国人の人権」「多文化共生政策」「国籍」を主な研究テーマとしている近藤敦さんはこの日の講演で「調停委員の国籍差別は法の支配に反し、司法行政の適正手続き違反なのではないか」との見解を示した。
最高裁は09年11月、司法修習生の採用選考から「国籍条項」を削除した。司法試験の受験資格には以前から「国籍条項」がないが、外国籍の合格者には日本国籍取得を修習生として採用する際の条件としてきた。
76年に司法試験に合格した金敬得さんが韓国籍のままでの採用を希望してからは「国籍条項」を残したまま「相当と認める者に限り採用する」として30年以上、特例の形で修習を認めてきた。
近藤さんは「法律や規則、通達にも基づかず差別をして、それを改めようとしない今の最高裁とはまるで対照的と言わざるをえません」と指摘した。
おなじく、調停委員として東京弁護士会から推薦を受けながら最高裁から採用を拒否された経験のある殷勇基弁護士(在日韓国人法曹フォーラム会長)は「最高裁が司法修習生採用時の『国籍条項』を撤廃したことで理論的にはもうすでに決着している」との見解を示した。
ただし、20年以上も経過しながらいまだに解決の糸口を見出せないのは想定外だったようだ。今後の運動の方向性として「戦争責任」とは異なるものとしての「植民地責任」の視点を挙げた。
(2023.3.1民団新聞)