トミコおばさんという母方の伯父の妻(ウェスンモ)がいた。パワフルな人で、お酒を飲んで酔っ払い、伯父(ウェサンチョン)と腕を絡めてダンスを踊り始めたかと思うと、取っ組み合いの喧嘩をする。そして、興奮して突然失神してしまうことがあり、子どもごころに、奇異に感じていた。
けれども、韓国ドラマを観始めると、なにかと気を失うご婦人たちが出てくることに気づく。すると、トミコおばさんが特段変わっていたわけではなく、彼女みたいな人が韓国にはたくさんいるのだなと驚きつつも納得するのだ。
このように、不思議だったことや変に感じていたことが、韓国ではわりとよくあることだと韓国ドラマを観て発見し、答え合わせをしたような気持ちになることはままある。
たとえば、父がよくやっていた、すーっと息を吸いながら上の歯と下の歯の間で音を立てて威嚇するアレ。すーっ、が聞こえると、怒りのサインだから、体がこわばった。こんなことをするのはうちの父親だけだ、本当に嫌だ、と友人の優しそうな父親が羨ましかった。だがこれも、韓国ドラマの世界では、中年以降の、しかも男女両方が、すーっ、と豪快な音をたてて相手を威圧している。
チッ、チッ、チッ、と舌を打って、呆れたり、せかしたりするのも、父がよくやっていたが、やはり韓国ドラマでは珍しくない仕草だ。おばあさんなんかがアイゴーと言ったあとにチッ、チッ、チッと嘆いていることもある。
ほかにも、祖母が食事の際に膝を立てたり、器を持たなかったりしたことなどを、行儀が悪いと思っていたが、韓国ではそれが普通だということもうかがい知れた。
目上の人に対して、せいぜい深く頭を下げる程度が主流の日本において、手と膝と頭をつけるクンジョル(挨拶)をさせられるのが鬱陶しかったし、何度もそれを繰り返す祭祀などは、小さい頃抵抗があった。それなのに、韓国ドラマでクンジョルや祭祀のシーンを見つけると、妙に嬉しくなる。自分のしてきたことが、韓国本国と同じだということを確認して、ほっとするのである。