在日の人権問題を探る
【岐阜】民団岐阜本部(金尚道団長)は11日、岐阜市内のホテルで「在日韓国人人権セミナー」を開催し、団員、婦人会会員ら約30人が参加した。金団長は「今の現状を確認し、日々生活していく上で目の前のことをしっかりとできるよう、今日のセミナーが有意義な時間になることを願う」と期待を込めた。
第1部の人権セミナーは、「在日コリアンの人権と日本社会」と題して、コリアNGOセンターの郭辰雄代表理事が戦後の在日コリアンの処遇や無年金問題、参政権をめぐる動き、ヘイトスピーチへの対応など、在日コリアンをめぐる人権課題について講演した。この中で「在日コリアンが、これまでの歴史、経験を踏まえて、外国人の人権が保障された多文化共生社会の実現のための役割を担うことが重要だ」と強調した。
第2部の法律セミナーでは、「在日韓国人の相続~争族に備える~」をテーマに、駐名古屋韓国総領事館の顧問弁護士のテルース法律事務所の〓貞嬉代表が、韓国民法と日本民法との違いや財産の調査方法の違い、遺言作成など具体的な事例をもとに解説した。
「入管法」「ヘイト」中心に特別セミナー
【神奈川】民団神奈川本部(李富鉄団長)の特別セミナー「日本社会からのラブコール、私たちは今何をなすべきか -改定入管法・ヘイトスピーチを中心に-」が22日、横浜市内で開かれ、約80人が参加した。同本部の崔喜燮議長が「学びなくして問題意識は芽生えない」と問題提起し、在日が直面している時局問題について3つの講演を企画した。
民団中央本部の權清志副議長は「在日韓国人及び在日外国人の人権~日本は果たして外国人に選ばれる国なのか~」をテーマに1946年に創立された民団の現在までの権益擁護運動を時系列で解説した。
民事局長の通達で日本国籍を失い、外国人登録法の指紋押捺・常時携帯制度を強いられた50年代。不安定な法的地位から韓日基本条約で永住権申請運動は成功したものの、条約の不備を補填するために差別撤廃運動の一環で国籍条項撤廃運動などの歴史を振り返った。90年代に名称から「居留」を外した民団が取り組んだ地方参政権運動の頓挫とヘイトスピーチ台頭と入管法改定の今、包括的差別撤廃法の制定などを課題に挙げた。
ルポライターの竹中明洋氏は移民時代到来を前に、「民団への期待とメッセージ」について語った。民団がこれまで取り組んできた国籍条項の撤廃運動、多文化共生への取り組みなどは、多様化する外国人社会のモデルケースになると指摘した上で、「日本籍同胞や他の外国人との関わりを広げてほしい」と要望した。
社団法人アムネスティ・インターナショナル元日本事務局長の寺中誠氏は、日本は人種差別撤廃条約を批准しながら、ヘイトスピーチ・クライムを禁止する4条の項目を留保し、国連から「留保の撤回を何度も勧告されている」と報告した上で、国内の人権機関を利用した反差別法制の整備を訴えた。
”北送65年” 記憶の継承を
【広島】「地上の楽園」という美辞麗句で在日同胞を騙し、北韓に送還した「北送事業」から今年で65年。民主平和統一諮問会議日本地域会議と脱北者を支援する一般社団法人勿忘草が14日、「平和統一講演会」を民団広島本部で開催した。民主平統の中部(李珠羲会長)、近畿(朴道秉会長)、西部(李義明会長)の3協議会会長や民団関係者ら約100人が参加した。
民主平統の孫栄泰副議長は「65年前の今日、新潟港から975人の在日同胞が北に向けて出発した。その後、約93000人が北韓、朝鮮総連、日本赤十字、政治家、マスコミなどの甘言に踊らされ、北に渡った。金日成と日本政府の意図が何だったのか、総括しなければならない」と挨拶した。駐広島韓国総領事館の申東允副領事が「世の中が変わっても変わらないのが人権問題だ。9万人以上が北に渡り、今も苦労している実情が議論されていない。記憶を継承しなくてはならない」と強調した。
講演会では新聞記者時代から「北送」問題を追いかけ、後に研究者になった金沢星稜大学の菊地嘉晃教授が「北送事業65年の総括」をテーマに語った。「北送」の特徴として、〓1本籍地とは異なる地域への集団「帰国」は帰国ではなく、移住(移民)であり、北、ソ連、中国と唯一「北送」に反対した韓国との国際的な外交戦だったと説明した。
さらに「北送」開始当時、体制の優越性を宣伝したい北韓と在日をめぐる治安・財政面の負担を軽減したい日本、国益を害することがないと判断して黙認した米国と社会主義の盟主として宣伝効果を期待したソ連の意図が交錯していたと述べた。
高校1年の時に両親について北に行くしかなかった関東脱北者協力会の木下公勝代表は、45年間北に住んだ。6・25戦争は韓国と米国が仕掛けた戦争で、北はそれに勝利したと教えられた。真実を知ったのは脱北後だった。「北と総連に騙された悔しさは1年中話しても消えない。帰国船ではなく奴隷船だった」と非難した。
(一社)勿忘草の車東吉常任理事は閉会辞で「北送65年の重要な時点で悲劇の歴史を振り返り、悲惨な状況を再認識した非常に意義深い講演会だった。在日同胞が北韓で受けた苦痛をいつまでも記憶し解決しなければならない歴史的な責任がある」と述べた。
「密航」と「益田事件」
【鳥取】第74回在日講座が14日、民団鳥取本部(金允基団長)で開かれ、約20人が参加した。第1部は県職員でもあり、地域史研究会の重鎮でもある西村芳将氏が『「密航」とは何か?』と題して語った。戦後のGHQ資料と在日朝鮮人作家の尹紫遠の作品や日記をもとに「密航」論を展開した。
参加者は「密航を通じて国家というものを考えさせられた」と話した。 第2部は島根大学の岡崎勝彦名誉教授が『益田事件と朝鮮人‐騒乱罪適用事件』のタイトルで、80年代に自身が書いた益田事件の論文を踏まえ、1部の「密航」問題を受けて述べた。同論文によって益田市史等が変更された推移も語った。
「韓日関係」テーマに講演会
【栃木】民団栃木本部(禹春彦)は16日、宇都宮市内のホテルで2024年度講演会を開き、東海大学の金慶珠教授を招いた。団員や日韓親善協会の会員など約60人が参加した。金教授は「韓半島と韓日関係」と題して、尹錫悦大統領による「非常戒厳」宣言の経緯を説明し、今後の両国関係の見通しについて解説した。参加者からは「時局的なテーマで開かれた講演会はタイムリーだった」と好評を博した。