掲載日 : [23-04-05] 照会数 : 4478
「悪質ヘイトに刑事罰も」相模原市まちづくり条例で答申
[ 昨年行われた民団との意見交換で要望に答える相模原市の本村市長(左端) ]
人権委員会を新設「川崎市以上のものに」
【神奈川】偏見や差別のない人権尊重のまちづくりへ向けた仮称「相模原市人権尊重のまちづくり条例」の制定について諮問を受けていた相模原市人権施策審議会(会長・矢嶋里絵東京都立大学人文社会学部教授)が3月23日、ヘイトスピーチを含む悪質な人権侵害には罰則が必要とする答申書を本村賢太郎市長に手渡した。民団でも中央本部人権擁護委員会と民団神奈川本部など3団体が連名で本村市長に川崎市条例と同様の刑事罰を要請していた。
答申の柱の一つは第三者機関としての市人権委員会の設置。委員は法曹実務家を含む人権に関する専門家5~7人で構成し、人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身を理由とする不当な差別的取り扱いを受けている被害者からの相談を受け、支援に取り組む。
市長は人権委員会からの答申に基づき、差別的な言動にあたるかどうかを判断し、公の施設の利用制限、拡散防止、声明などの措置をとる。なお、人権委員会は市から諮問がなくともヘイトスピーチなどの差別事案が起きた際には市に勧告できる。委員の一人は「川崎市以上のものになる。担当者に任せず、強い関心をもって対応してほしい」と市長に注文をつけた。
著しい差別的言動や悪質な犯罪扇動の場合は公表のうえ、5万円相当の過料または刑事罰を科すこともできるとした。川崎市の反差別条例以降、罰則の明記は初めて。
過料とするか、刑事罰にするかについては意見が分かれたため両論併記とし、市長の判断にゆだねた。さらに罰則の適用は2~3年程度凍結することもあり得るとした。また、国に対しては差別撤廃に向けた法整備と国内人権機関の設置を要望するよう求めた。
市内では2016年7月、知的障碍者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷されるヘイトクライム(憎悪犯罪)が起きた。
18年には差別団体・日本第一党が市内の公共施設で開いた政治集会で「シナ人、朝鮮人は日本に対してやりたい放題」「ヘイトスピーチ抑止法や条例ができても、われわれが政権を取ってひっくり返せばいいだけの話。条例と法律を作った人間を必ず木の上からぶら下げる」と虐殺を煽動する発言をしていた。
これと関連して、審議会の委員である韓国籍の女性が差別的な誹謗中傷の対象となった。
本村市長は19年6月、記者会見で「川崎市にひけをとらない」人権条例をつくるとの考えを明らかにし「まちづくり条例の制定について」市人権政策審議会に諮問していた。審議会は約3年かけて答申をまとめた。
「画期的な答申」
本村市長は「画期的な答申」と評価し、次のように考えを明らかにした。
「やまゆり園事件を風化させてはならない。市民から広く意見を聞いて差別のない誇りを持てる社会をつくっていく。条例案は6月定例会には間に合わないが、23年度中には間違いなく出す」
本村市長は4月9日に市長選挙を控えている。