掲載日 : [22-12-14] 照会数 : 5172
【北送63】還暦の金日成に捧げられた朝大生たち 朝総連の責任を問う
北韓当局と朝総連による北送責任を問う「歴史検証シンポジウム」が9日、東京・港区の韓国中央会館で開かれた。今回は朝総連が金日成還暦の食卓に”生の朝貢品”として捧げた朝鮮大学校生約200人の問題を取り上げた。主催した民団中央本部は朝総連の歴史的罪科を検証し、人権問題として世論を喚起することで、北送同胞を1日も早く悲惨な状況から解放したいと話している。
金日成は72年4月15日が満60歳の還暦。朝総連は祝いにと独自に選抜した朝鮮大学校生徒200人を60人のオートバイ部隊とともに「社会主義建設の先鋒隊」として献上した。総連は各級機関や学校、地域単位で前年の71年から金日成に対する忠誠の贈り物キャンペーンを繰り広げてきたが、この「生の朝貢品」こそ最大のハイライトだった。
朝鮮大学校で政治経済学部の教員を務めた朴斗鎮さん(コリア国際研究所所長)はパネルデイスカッションに参加し、「200人部隊についてはある程度の輪郭が出てきた」として次のように基調報告を行った。
選別作業は71年12月末、学生の帰郷直前のことだった。担当教官が大学構内の小部屋に300人を個別に呼び出し、伝えた。翌年の初頭、このうちの100人は逃げ出した。
大学側は残った200人にエリート意識を植え付け、徹底的に洗脳した。殺し文句は「金日成大学に入れる」だった。ほとんどの学生は疑うことはなかったが、それでも15人が脱落。最終的に185人が新潟から出発し、二度と大学に戻ることはなかった。なかには強制収容所に送られたケースも多かったようだ。このことは北韓を訪れた朝鮮大学の教員が直接確認したと伝えられている。
被害者からすれば「帰還」、「移住」であり、本質は「北送」だった。朴所長は「金日成個人に貢ぐために一切外に知られることなく、思いどおりにだまして連れていった点で詐欺行為だった」と朝総連の責任を断罪した。
同じくパネリストの山田文明さん(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会名誉代表)は「62年ぐらいまでは熱気のなか、たとえ嘘偽宣伝に踊らされたとしても、自分の意思で北に渡ったといえるが、朝大生は違う。朝総連の組織的強制力があったという点で大規模な拉致事件だった。救出に本格的に取り組まなければならない」と訴えた。
シンポに先だってヤン・ヨンヒ監督が北に渡った兄3人と自身の家族たちのことを撮った「かぞくのくに」が上映された。ヤン監督の長兄も金日成に「プレゼント」された185人のうちの1人だ。