尹錫悦新大統領が10日、大韓民国の第20代大統領として公式的に就任した。第20代大統領就任式が10日午前11時、ソウル汝矣島の国会議事堂前広場で行われた。尹大統領は就任演説で、就任演説冒頭で、韓国を自由民主主義と市場経済体制を基盤に、国民が真の主役である国として再建し、国際社会で責任と役割を果たさなければならないと強調。国際情勢について、新型コロナウイルスの感染拡大、貿易秩序の変化とサプライチェーンの再編、気候変動、食糧・エネルギー危機、紛争の平和的解決の後退、低成長と大規模な失業、二極化の深化と社会的な葛藤などに韓国を含む多くの国が苛まれているとし、「その原因は反知性主義にある」と指摘した。また、このような世界情勢の中で問題を解決していくためには、「自由」という普遍的価値を共有することが重要であると訴えた。
(就任演説文全文は別掲)
就任式には国内外の賓客や国会・政府関係者、一般国民ら計4万1000人が出席した。日本からは民団から76人と韓人会などの在日同胞団体代表ら、あわせて100人余りが参席した。
尹大統領と金建希夫人はこの日午前10時、ソウル銅雀洞の国立顕忠院を参拝した後、国会に移動して就任式に出席した。尹大統領夫妻は国会に到着した後、東西和合の意味で光州と大邱の子どもから花束を受けた後、記念写真を撮影した。
そして、尹大統領夫妻は国会の正門から国会議事堂前の壇上まで180メートルほどを歩いて移動し、就任式を待っていた市民らとグータッチしながらあいさつした。
その後、尹大統領はドラマ『イカゲーム』出演俳優オ・ヨンス氏、独立有功者の子孫であり帰化して5代にわたり献身したデビッド・リントン氏、韓国哨戒艦「天安」の生存兵士チョン・ファンス氏、10年間にわたり毎年匿名で1億ウォン(約1020万円)を寄付してきたパク・ムグン氏ら「国民希望代表」20人と共に壇上に立った。20人は尹大統領が大韓民国の第20代大統領を意味する。
大統領は壇上から降り、客席からわずか10メートルほど突き出たステージで就任演説をした。国民に近づくという尹大統領の意志が反映された。 尹大統領はまず、「自由民主主義と市場経済体制を基盤に国民が真の主人である国に再建し、国際社会で責任と役割を果たす国をつくるべきという時代的な使命感を持って今日この場所に立った」とし「歴史的な席を一緒にしてくださった国民のみなさまに感謝する」と述べた。
尹大統領は「この席を借りて、過去2年間、コロナのパンデミックを克服する過程で大きな苦痛を乗り越えてきた国民に敬意を表す。そして献身した医療スタッフに感謝する」と伝えた。
新型コロナによるパンデミック危機、気候変動とエネルギー危機などに言及しながら「多くの危機が複合的に人類の社会に暗い影を落としている」とし、「わが国をはじめ、多くの国が国内的に超低成長と大規模な失業、二極化と多様な社会的葛藤のため共同体の結束力が揺らぎ、瓦解している」と述べた。
尹大統領は「こうした問題を解決すべき政治は、いわゆる民主主義の危機によって機能せずにいる」としながら、「最も大きな原因に挙げられるのが反知性主義だ」と述べた。
続いて「見解が異なる人たちが互いの立場を調整して妥協するためには、科学と真実が前提にならなければいけない」とし「それが民主主義を支える合理主義と知性主義だ」と強調した。
さらに、「国家間、国家内部の過度な集団的葛藤により真実が歪曲され、それぞれが見聞きしたい事実だけを選択したり多数の力で相手の意見を抑圧する反知性主義が民主主義を危機に陥れ、民主主義に対する信頼を害している」とし「こうした状況が私たちが直面している問題の解決をさらに難しくしている」と指摘した。
この件に対し尹大統領は「私たちは成し遂げることができる」とし、「国民は多くの危機に陥るたびに全国民が力を合わせ、賢明に勇気を持って克服してきた。こうした危機を克服する責任を与えられたことを、ありがたい気持ちで受け入れ、偉大な国民と共に堂々と乗り越えていけると確信している」と力強く述べた。
また、困難を解決するためには普遍的価値を共有することが極めて重要だとして「自由」の価値を再三にわたって強調した。
続いて「私たちは自由の価値をまともに、そして正確に認識しなければいけない」とし「人類の歴史を顧みると自由な政治的権利、自由な市場が呼吸していたところにはいつも繁栄と豊かさの花が咲いた。繁栄と豊かさ、経済的成長はまさに自由の拡大」と話した。
尹大統領は最も深刻な国内問題として深刻な二極化と社会葛藤を挙げ、「私はこの問題は跳躍と急速な経済成長を実現しなければ解決できないと考える」とし、「急速な成長過程で多くの国民が新たな機会を見つけることができ、社会の流動性を高めることで二極化と対立を除去することができる」と言明した。
尹大統領はまた、自由民主主義と平和についても触れ、「自由民主主義は平和をつくり出し、平和は自由を守る」とし「一時的に戦争を避ける脆弱な平和でなく、自由と繁栄を開花させる持続可能な平和を追求しなければならない」と述べた。
北韓問題に関しては「北が核開発を中断し、実質的な非核化に転換すれば、国際社会と協力して北の経済と住民の生活の質を画期的に改善させることができる大胆な計画を準備する」と対話の扉を開くことを強調した。
尹大統領は「私は自由、人権、公正、連帯の価値を基盤に国民が真の主人である国、国際社会で責任を果たして尊敬を受ける国を偉大な国民と共に必ずつくっていく」として就任演説を締めくくった。
尹大統領は就任式後、龍山に移転した大統領執務室に向かい公務をはじめた。午後には就任式出席のため訪韓した米国や中国、日本などの外交使節と相次いで面会。その後、国会本館で開かれた祝賀式典に出席し、政府要人や各国の駐韓外交官、外交使節と韓国の伝統酒を楽しみながら歓談した。 夜には新羅ホテルで開かれる賓客を招いた晩餐会に出席した。