掲載日 : [21-12-10] 照会数 : 9273
監察機関職務検証委員会 検証結果報告書(要旨)
監察機関職務検証委員会 検証結果報告書(要旨)
当委員会の作成に係る2021年11月19日付け検証結果報告書の要旨は以下のとおりですので、ご報告申し上げます。
第1 中央議長に対する戒告処分に関する検証
1 問題点
中央監察委員会は、2021年9月15日付け公文(韓民中監発第55‐025号)にて、朴安淳議長の規約運用規定第64条運用規定第6項違反を認定し、朴安淳議長に対する戒告処分を行った。
しかし、同戒告処分は、中央委員会の事前の同意を得ていない。
また、その処分理由は、朴安淳議長が韓賢澤前副議長及び趙龍済前副議長から「辞表」の提出を受けていないにも関わらず両名の辞任を通報する内容の公文(韓民中議発第54‐010号・第54‐011号)を発したことを唯一の処分理由とするものであるが、かかる両名の辞任ないし辞意表明は第55期定期中央大会における総辞職後になされたものである。
2 検証
(1)規約第75条但書(1)が定める「中央委員会の同意」は事前の同意に限定される
①1996年3月27日に制定された当時の「規約運用に関する見解統一」には、「3.中央委員を懲戒処分する時の中央委員会の同意に関して」「中央委員の権威を高め、身分を保障するために、処罰する時には中央委員会の同意を前提条件に規定している。しかし、現実的には1年に1回しかない中央委員会まで待てない場合が予想されることに鑑み、事後承認も可能とする。」との規定があった。
②しかし、2000年1月18日に開催された第52回臨時中央委員会において、上記見解統一について規約と矛盾する等との多数の反対意見があり、中央委員会の事前承認なく行われた議長及び副議長に対する懲戒処分について、処分手続きが適切でないことを指摘する決議がなされ、上記見解統一の改廃は第53回定期中央委員会に委ねられた。そして、同年3月23日に開催された第53回定期中央委員会において、上記見解統一について、改正案(事後承認の対象を地方大会で選出された者に限定する案)すら採用されず、満場一致で全文削除することが決議された。
③かかる経緯からすれば、規約第75条但書(1)が定める「中央委員会の同意」については、第52回臨時中央委員会及び第53回定期中央委員会を通じて、事前同意に限定され事後の同意は例外なく一切許容されない、との統一解釈が形成されたことは明らかである。
(2)韓賢澤前副議長及び趙龍済前副議長が2021年3月12日に行った辞任ないし辞意表明は、規約運用規定第64条運用規定第6項が定める「辞表提出」を要しない
①規約運用規定第64条運用規定第6項は、「役員が任期途中に自らの意思で辞退する場合は辞表提出によって任期が終了し、手続きのみが残る。」と規定している。したがって、同条同項が定める「辞表提出」が必要となる「役員が」「自らの意思で辞退する場合」とは、当該役員が「任期途中」に行うものであり、かつ、当該辞表の提出に「よって任期が終了」するもの(任期を終了させる法的効果のあるもの)に限られる。
②2021年3月12日時点において、韓賢澤前副議長及び趙龍済前副議長の任期はいずれも総辞職により満了していた(規約運用規定第64条運用規定第5項)。
③したがって、韓賢澤前副議長及び趙龍済前副議長が2021年3月12日に行った辞任ないし辞意表明は、いずれも韓賢澤前副議長及び趙龍済前副議長の任期を終了させる法的効果を有するものでないのであるから、辞表提出を要しない。
④規約第65条は、「大会期間中、中央委員及び代議員の任期完了または総辞職があった時には該当構成員が大会完了時までその任務を引き続き行使する」と規定している。議長、副議長等が「当然職」(規約第17条)として中央委員の身分を有することから、規約第65条は副議長についても適用され、「該当構成員」として「大会完了時までその任務を引き続き行使する」こととなる。韓賢澤前副議長及び趙龍済前副議長は、既に副議長の地位は有しないものの、同規定に基づき、総辞職後第55回定期中央大会が完了するまで、副議長としての「任務」を課されており、両名の辞任ないし辞意表明をもってしてもかかる規約に基づく「任務」を免れることはできない。したがって、両副議長の辞任ないし辞意表明は、(副議長の地位そのものではなく)副議長としての「任務」ないし職務を放棄する旨の事実上の意思表示に過ぎない。
⑤朴安淳議長の発した公文は、両副議長が辞意表明により、続会において議事進行を務める意思が事実上ないことを明確にしたことから、混乱が生じないように、あらかじめ両副議長が続会において議事進行を務めないことを知らせる趣旨であった。
3 結論
安淳議長に対する戒告処分は、中央委員会の事前の同意を得ておらず、その手続きにおいて規約第75条但書(1)に違反している。また、同戒告処分は、規約運用規定第64条運用規定第6項の適用を誤ったものであり、その内容においても規約違反が認められる。
第2 直選中央委員35名否認の件に関する検証
1 問題点
中央監察委員会は、第55期における顧問及び直選中央委員35名の選出について、呂健二団長及び朴安淳議長は同意しているものの、金春植監察委員長が同意しておらず、直選中央委員35名については金春植監察委員長との協議を経ておらず、無効であると主張している。
2 検証
(1)三機関長に対する大会委任事項に関する決定は多数決による
①規約においても中央大会の委任決議(委任状の記載)においても、中央大会決議の委任事項に関する決定について全員一致を要するとの定めはない。
②一般に、協議ないし会議体を意思決定機関とする団体の意思決定は、多数決原理のよるのが原則である。民団においても、中央大会及び中央委員会における議決は多数決によることが明記されている(規約第14条、第19条)。
③規約において全員一致を要求する旨の定めは存在せず、欠員が生じた場合の補選など、本来、中央大会で行うべき決定事項の一部を中央委員会において決議する場合においてでさえ、「3分の2以上」の多数決によるものとしている(規約10条但書、17条但書、23条2項但書、31条但書(1)、63条)。
④顧問及び直選中央委員の選任を新任三機関長に委任することが中央大会における慣行となっている理由は、これらの候補者の総数が多いために中央大会において実際に選任することが現実的に困難であることによる。かかる委任の理由からしても、その決定を新任三機関長の全員一致によるものとしなければならない合理性は見出し難い。
⑤民団がその意思決定において採用する多数決原理を排してまで、顧問及び直選中央委員の選任に関する委任事項の決定を、ことさら新任三機関長の全員一致と解しなければならない合理的理由はない。
(2)顧問及び直選中央委員35名の選出・決定に関するプロセスに瑕疵はない
①委任状には、「直選中央委員の選出について(三機関長)」とのみ記載されており、「協議」等の文言が用いられておらず、その決定過程についての制限は明記されていない。
②顧問及び直選中央委員35名の選出・決定のプロセスも、従前の慣行に従ったものであり、呂健二団長が朴安淳議長及び金春植監察委員長に対して推薦したい候補者がいればこれを推薦するよう申し向けた上で、呂健二団長が選定ないし公表した候補者について、金春植監察委員長において異論を含む意見があったが、かかる意見を踏まえて検討を行い、当該意見に関して最終的に意見の一致をみなかったために、三機関長の多数により、顧問及び本件直選中央委員の選出を決するとの過程を経たのであって、中央大会の委託の趣旨に背くものではなく、瑕疵はない。
③金春植監察委員長自身、5月13日及び5月19日の「三機関長会議」の場において、公表された具体的な顧問及び本件直選中央委員について、反対する旨の意見を述べ、それに対して、呂健二団長及び朴安淳議長がこれら顧問及び本件直選中央委員について賛成であることを前提に「追認してくれ」と意見を述べ、金春植監察委員長がこれを「認めることができない」と述べ、協議を行ったことを認めている。かかる協議は委任期間である2021年6月15日までに行われたものである。そして、かかる協議の結果として、呂健二団長と朴安淳議長の賛成により、顧問及び本件直選中央委員が改めて選出・決定されたといえる。したがって、仮に中央監察委員会の見解を前提としても、本件直選中央委員の選出・決定に関するプロセスに瑕疵はない。
3 結論
顧問及び直選中央委員35名の選出・決定は、その内容及びプロセスにおいて、中央大会の委任決議の委託の趣旨に背く点はなく、顧問及び直選中央委員35名の選出・決定に瑕疵はない。したがって直選中央委員35名の選出・決定が無効であるとの中央監察委員会の見解は誤りである。
第3 中央団長及び中央議長に対する辞任勧告に関する検証
1 問題点
中央監察委員会は、2021年9月22日付け公文(韓民中監発第55‐026号)において、呂健二団長及び朴安淳議長に対し、規約違反がある等の理由により、辞任勧告を行った。
同辞任勧告は、呂健二団長及び朴安淳議長における規約違反を理由とするものであるが、その具体的理由として、本件直選中央委員の選出・決定に関する瑕疵を挙げている(この点に瑕疵がないことは上記のとおりである。)。
これに加え、①中央監察委員会が2021年7月21日に組織局に対して、韓民中監発第55‐012号に相当する内容の草案を送付し、その発信を指示したが組織局が同公文を発しなかったこと、②金春植監察委員長が2021年8月5日に組織局副局長に対して架電し、第55期中央大会執行委員会会議資料(第1回~第3回)の写しを各3部、金春植監察委員長の自宅住所に宛てて郵送するよう依頼したが断られたことが、それぞれ規約第75条運用規定第2条第1号に定める業務妨害に該当することも理由に挙げられている。
2 検証
(1)中央監察委員会の公文発信が「妨害」されたとは評価できない
公文発信にあたり、その内容に事実誤認等の誤りがないか確認してほしい等と求め、ある程度留め置くこと自体は特段問題となる点はない。その後、中央監察委員会は、組織局ないし呂健二団長に対して再度の発信要求をすることもなく、約一週間後に自ら草案とほぼ同内容の公文を現に発信したのであるから、中央監察委員会の公文発信が「妨害」されたとまでは評価できない。
(2)組織局が金春植監察委員長の文書送付依頼について団長の了解を求めたことは適切であり、中央監察委員会の団務監査が「妨害」されたとは評価できない
前例のない金春植監察委員長の中央執行委員会会議資料の写しの金春植監察委員長自宅宛て送付要求に対し、組織局が呂健二団長の許可を得るよう求めたことは、職務分限及び事務規定第67条(「本規定に定めていない事務上の処理事項は随時団長がこれを指示する。」)に則った対応といえる。また、組織局は金春植監察委員長に対し、民団本部事務所における閲覧はいつでも受け付ける旨を繰り返し伝えていたのであるから、中央監察委員会の団務監査が「妨害された」等と評価できる事実はない(付言すれば、金春植監察委員長は呂健二団長に対して会議資料送付の打診すら行っていない)。
3 結論
中央監察委員会が行った辞任勧告がその理由として記載した、呂健二団長及び朴安淳議長における規約違反の事実はないのであり、同辞任勧告はその理由において規約の適用を誤っている。
以 上