在日韓国婦人会の恒例事業、全国大研修会が4日の九州・中四国地協を皮切りに始まった。今年のスローガンは「共に学び共に喜び、在日韓国婦人会の力を次世代に繋げていこう!」。通算で294回目となる九州・中四国の研修会は福岡・原鶴温泉に約150人を集めた。中央本部の劉代永会長は「今年10月に中央本部創立75周年を迎える。伝統ある組織にふさわしい活動をしていこう」と呼びかけた。
元記者が南北関係講演
【関東地協】11日に群馬・磯部温泉で開かれた関東地協には約250人が集まった。民団中央本部の金成日副団長、東京本部の李壽源団長が祝辞を述べた後、来賓の白真勲前参議院議員(立憲民主党)が「入管法改定案の永住資格削除は見逃せない。粘り強く闘っていこう」と激励した。
講師の五味洋治・前東京新聞論説委員は、40年の記者生活のうち35年を韓半島取材に当たった。北韓の幻の後継者に終わった故金正男との交流もあった。最初の勤務地、川崎支局で在日外国人の指紋問題に直面した。在日大韓基督教川崎教会の李仁夏牧師から「共生は多様な文化を認め合うことから始まる」ことを学んだ。日本語の読み書きができないハルモニにボランティアで教えたこともある。
五味さんは現在、2001年に新大久保駅ホームから線路に転落した男性を救おうとして犠牲になった釜山出身の留学生・李秀賢氏の足跡を風化させてはならないと、来年韓国で「勇気の連鎖」をテーマにしたシンポジウムの準備をしている。金正男の遺児で居所がわからない金ハンソルに取材したいという記者魂も披瀝した。
12日の講師は民団新聞の記者などを歴任した宋寛氏。著書『世界遺産韓国の山寺テンプルステイで知る日本仏教との違い』を紐解きながら、「韓国では寺院と墓は別にある。寺に墓地があるのは日本だけで、『葬式仏教』と言われるゆえんだ」と語った。韓国の三宝寺院として、仏法(釈迦)、法宝(釈迦の教え)、僧宝(教えを広める僧)の考えを説明し、代表的な山寺として通度寺、海印寺、松広寺を紹介した。
婦人会群馬県本部の金敬連会長は「金正男にまつわる話を初めて知り、参考になった」と感想を述べた。東京・江東支部の朴恵子会長は研修会の常連。「懐かしい顔に再会できるのが楽しみ」と語り、婦人会幹部の高齢化と若い世代へのバトンタッチを課題に挙げた。
蓮池薫氏講師に拉致問題解決探る
【九州・中四国地協】4日の九州・中四国地協に招かれた講師の蓮池薫・新潟産業大学特任教授は、中央大学在学中に北韓に拉致され、小泉訪朝を機に日本に帰還した経歴をもつ。拉致当時の状況と北韓滞在中の生活を克明に振り返りながら、北韓の拉致目的が何だったのか説明した。韓国と日本が最近拉致問題解決に向けた協力に合意したことにも触れ、「大きな力になる」と期待を表明した。また、日本と北韓の間で前向きな条件が整うならとの前提で、「(自身が)北韓を訪問する気持ちもある」と拉致問題の解決に向けて先頭に立つ気概を見せた。
参加者から「北韓住民は南北統一を望んでいるのか」との質問に「一般住民には何の罪もない。純粋に南北統一を望んでいる。問題は上層部だ」と北韓政府の核開発や対韓国政策を批判した。