掲載日 : [21-11-16] 照会数 : 9125
ヘイトスピーチ問題と東京同胞の歩みを学ぶ…東京本部が研修会
[ ヘイトスピーチ問題で講演する安田氏 ]
[ 熱心に講義に臨む参加者 ]
民団東京本部(李壽源団長)の2021在日同胞社会リーダーフォーラム(組織幹部研修会)が14日、神奈川県箱根町で開かれ、本部と21支部、婦人会、青年会、商工会議所のメンバーら140人あまりが参加し、ヘイトスピーチ問題、東京における在日同胞の成り立ちなどについて学んだ。
新型コロナウイルスの関係で昨年はやむなく中止、2年ぶりとなるが、開講式で李団長は「久しぶりに皆さんと顔を合わせうれしい限り」とし、「私たちの生活を脅かすヘイトスピーチの対策法制定から5年が過ぎたが、ヘイトデモこそ減少したが、ネットを含め姿を変えたヘイトスピーチ・クライムが後を絶たない。その実態を知り、根絶のために尽力していこう」と呼びかけた。
駐日韓国大使館の金安那総領事は「これほど多くの方が参加し、学ぶ熱意をひしひしと感じた。この意気込みこそが新たな力になるであろうし、民団組織幹部皆さんが先輩として、しっかりと次世代たちに語り継いでほしい」と激励した。
第1講義は鄭文吉同本部副団長兼事務局長が「東京在日同胞の成り立ち」と題して講演。1876年の江華島条約以降からの日本留学から、1910年の韓国併合以降の渡日の経緯と歴史などを辿り、東京における在日同胞社会の形成を説明した。
続いて、ノンフィクションライターの安田浩一氏を講師が「ヘイトスピーチはどこへ向かうのか」と題して、差別と偏見の現場を取材した経験から、今後の同行などを解説した。
安田氏は差別と偏見の現場を取材することになった経緯について、移住労働者問題を取材する過程でゼノフォビア(外国人嫌悪)と出会い、差別デモを無視したメディアや差別の質変化を感じたからだと説明。
それは、2006年、栃木県で職務質問を逃れようとした中国人研修生が警察官の発砲で死亡した事件をめぐり、遺族が刑事告訴し、民事でも県を相手取り提訴した裁判の取材で訪れた宇都宮地裁前で被害者の中国人について「射殺されて当然だ」「追放せよ」と叫び群がる人々を見た。特攻服を着て街宣車に乗る右翼やごくふつうの服装の男女。理解できないものに触れた怖さや気持ち悪さと、ジャーナリストとしての興味を同時に抱いたのだ。
その上で、「ヘイトスピーチは本来、日本人の問題だ。ヘイトスピーチをしているのは日本人であり、これを無くしていくことを考えるのも日本人だ。したがって、ヘイトスピーチの責任は日本社会と日本人にあるといえる」と前置きしながら、日本におけるヘイトスピーチとヘイトクライムの変化などを説明した。
「ヘイトスピーチ対策法」によってヘイトデモの減少など、一定の抑止には繋がったとみられているが、実はヘイトの質が変化したことを指摘した。
安田氏は「街中のレストランや喫茶店、居酒屋などで、ごく普通の人たちが『韓国人ってやだね』『朝鮮人は帰った方がいいよね』『外国人ってうざいよね』など、無意識にヘイトスピーチの会話をしていることを目のあたりにするほど、社会を洗脳した。これは差別主義者たちのデモより恐ろしいこと。デモだけでなく、書店で嫌韓関連の書籍を平積みにし、メディアやネット上で嫌韓キャンペーンが繰り返されたことで、一般の人たちが無意識に差別主義者たちに洗脳されているように、ネット言論、SNS、メディアらがヘイトスピーチを育て、日本社会を変えてしまっている」と指摘した。
その上で、「日本人が日本社会を変えていくべきだ。韓国人をはじめとする外国人だけのためでなく、ともに生きているすべての人たちの日本社会のためにもヘイトスピーチは明確に犯罪だと定義する法律を作るべきだ」と締めくくった。
講義を終えた後、参加者は別室で懇親会を行ったが、各支部と傘下団体によるのど自慢大会など、久方ぶりの対面によるイベントに満面の笑顔を見せていた。