【石川】能登半島地震で被災した住民が一時的に身を寄せている避難所でコロナウイルスなど、感染拡大のリスクが高まっている。胸を痛めた在日同胞3世の李忠俊さん(46、神奈川韓国青年商工会会長)は自社で災害用に開発した「災害時組立式空気清浄機」を無償で被災地に提供している。寄贈は石川県七尾市からスタート、輪島市や穴水町にも送り届けた。
災害時組立式空気清浄機「クレアウィンボックス」は高性能空気清浄機に四敵する能力を持ち、約60分で99・9%以上の浮遊ウイルスを除去できるという優れモノ。李さんが代表取締役を務めるベンチャー企業、株式会社クレア(大阪市中央区安堂1‐5‐12)が開発した。
クレアが創業にあたって理念としたのは「人の役にたつ企業」。能登半島地震が起きる数年前から災害時の避難所には必須との確信を持っていた。
ただし、被災地に連絡しても「どうせ売り込みだろう」と話を聞いてくれず、門前払いされることがしばしば。石川県で受け入れてくれたのは、長野県在住の信頼できる支援者が県の健康推進課に繋いでくれたため。
1月13日、七尾市健康福祉部の谷一健康福祉部長を通じてフイルター200枚とともに本体20台を贈呈した。費用はクレア社でまかなった。
空気清浄機はこの日、新型コロナに感染した徘徊高齢者が滞在している御祓避難所内の隔離室に設置された。七尾市では被災後、コロナ感染者増加傾向が続いていた。
李さんたちがパーティクルカウンター(粒子量計)で確認したところ、室内の0・3μm粒子はおよそ3分の1に減少。空気清浄がきちんと機能していることを確認できた。そのほか、避難所のほこりや高い天井で体育館が寒いなどの問題にも効果があるため、七尾市ばかりか輪島市も導入した。その効果は県内で被災した自治体の間で静かに広がりつつある。
本体は子どもでも5分で組み立てられる半完成品。必要最低限の段ボールでできている。中にはシート状の中性能フィルター「クレアウィンフィルターR」を2重にセットし、フアン(送風機)を使って高度な空気ろ過を可能にした。
高価な「HEPAフィルター」に比べれば性能は多少落ちるものの、風量が3倍と一般の空気清浄機より処理能力が圧倒的に高く、費用は格段に安価だ。フィルターを空調機や送付機に取り付けるだけならば、数千円で済むという。喘息の持病を持つという被災民からは「空気が吸いやすくなった」との声も。
株式会社クレアでは「全国からの支援で『災害時組立式空気清浄機』を避難所へ寄付する準備ができている」として連絡を呼びかけている。連絡先はTEL06・6258・3880。メールinfo@cleair‐w.comなお、寄付金振込先はりそな銀行御堂筋支店 普通預金0203397カ)クレア