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<記者座談会>動き出した「統一」への多元外交
「大韓民国臨時政府上海庁舎」の再開館式典に出席し白凡金九像の脇に立つ朴大統領(4日)
板門店での南北高官協議を終えて記念撮影する左から金養建党書記、金寛鎮国家安保室長、黄炳瑞軍総政治局長、洪容杓統一部長官

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朴大統領の式典参加
韓米同盟背景に…中国活用へ戦略的な決断

 A 韓日中3国の相関や韓半島南北をめぐる動きがあわただしい。板門店での高位級会談による8・25合意で南北関係改善への可能性が開けたのに加え、2日の韓中首脳会談の合意によって12年5月以来となる韓日中3国首脳会議が早ければ10月末にも開催される。あわせて、朴槿恵大統領と安倍晋三首相との初めての韓日首脳会談も実現する見通しだ。今月25日には米中首脳会談、10月16日には韓米首脳会談と続く。北韓の核兵器問題を解決するための6者会談の再開問題も再浮上しよう。その北韓で、長距離ミサイルの発射などが取りざたされる朝鮮労働党結成70周年(10月10日)がある。東北アジアの諸懸案が煮詰まりそうだ。

 B 朴大統領が北京の軍事パレード(3日。中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念)を参観することについて、米日両政府には強い懸念があり、韓国内にも慎重論があった。しかし、朴大統領の心中に「行かない」選択肢はなく、戦略的かつ信念に基づいた決断だった。

 C だが、米国と同盟関係にある自由・民主主義国家の首脳としてはただ一人の参観だ。中国主導のアジアインフラ投資銀行にも米日の憂慮を振り切って創立メンバーになっている。中国は、韓国にとって最大の交易先であるうえに、北韓のリスクを管理するためにも欠かせない。一方で、これまでの国際秩序を強引に改変しようと試み、軍事力の増強も著しい。韓国の「中国重視」にはどうしても、中国による米中2強の世界支配戦略に取り込まれかねないとの見方がつきまとう。

 D 朴大統領の訪中を前にして韓国は、米日両国に対する根回しを怠っていない。日本には3国首脳会議の見通しや日程について疎通もしている。米国に対しては、8月末に尹炳世外相がアラスカまで出向いてケリー国務長官と会談したのに続き、ホノルルの米太平洋司令部を訪れてハリス司令官と会い、韓米同盟の堅固さをアピールした。ケリー長官とは「韓半島の平和と安定に向け、中国の建設的な役割が重要」との認識で一致している。タイミングから見てそれが示した意味は大きい。

 A ケリー長官は「朴大統領の行事出席が韓半島全体に及ぼす含意を十分理解する」とも述べている。朴大統領の訪中は早くから決まっていたが、軍事パレード参観を青瓦台が発表したのは8月26日と遅い。それまでに、米国とかなりの折衝を行い、消極的とはいえ一定の支持を得たことをうかがわせた。

大型使節団同行経済関係深化へ

 B 朴大統領の今回の訪中目的ははっきりしていた。習主席に韓日中3国首脳会議の早期開催を同意させること、北韓の軍事挑発に対する圧力と改革開放への働きかけを強めさせることだ。もう一つ、156人という過去最大規模の経済使節団をともない、韓中FTA(自由貿易協定)が来年発効することをにらんで、互恵的な経済関係のいっそうの深化をはかった。

 A 大韓民国臨時政府の上海庁舎の再開館式典(4日)に参席することも重要な目的だった。リニューアルは朴大統領の要請に習主席が応じたもので、時期が時期だけに対日歴史共闘の象徴にしたとか、うがった見方も当然ある。だが、光復70周年行事の一環として外せるものではない。

 C 軍事パレードで習主席が強く意識したのは、「抗日戦争勝利」の歴史であり、米国に対抗する軍事力の誇示だ。朴大統領は確かに、韓米同盟の盤石な基礎の上に、中国の北韓に対する影響力を重視する政策で一貫してきた。歴史問題で対日共同戦線を張ろうという習主席の提案も受け入れていない。しかし、米国では大統領選挙戦の過程で中国に対する牽制意識が募る可能性がある。韓国に対する「安全保障ただ乗り論」も出始めた。日本の一部勢力による「言いつけ外交」もあって「中国傾斜論」への警戒感が高まりかねない。

 B それらは織り込み済みだろう。習主席、ロシアのプーチン大統領と並んでの軍事パレード参観でも、笑顔を見せることなく泰然とした姿勢で終始した。これは中国の米日対抗路線には同調しないという明確なメッセージと言える。韓米、韓日首脳会談で真意はより明確に伝えられるはずだ。

 D 朴大統領の参席は習主席にとって「借り」とも言えるほど大きな意味をもった。経済面での関係深化は言うまでもなく、韓日中3国首脳会議の開催でも合意した。しかし、これらはほぼ既定のことと言ってよく、「見返り」とまでは評価できない。朴大統領にとって最大の「見返り」は北韓問題での韓中協調のいっそうの強化だ。その面でも注目すべき要素が少なくない。

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失敗した地雷挑発
抑止へ米中動く…韓国の毅然対応を後押し

 A 北韓問題での韓中協調は首脳会談でもっとも主要なテーマだった。中国の公の立場に目立つ前進があったわけではないが、具体性と深みを帯びたことは確かだ。「韓半島信頼プロセス」への支持は同じでも、韓国が主導した8・25合意を受け「韓半島の緊張状態が南北協議を通じて緩和されたことを評価し、合意が行動で履行され、韓半島信頼プロセスが加速することを希望する」との文脈で強調された。「6者会談の早期再開」も、イラン核交渉の妥結との関連で語られた。「緊張を高めるいかなる行動にも反対する」の決まり文句も、弾道ミサイル発射を強行する可能性がある10・10をにらんだものとして、いつになく意味が大きい。これらは北韓にきわめてきつい圧力になる。

 B 両首脳は会談後に発表された共同文書で「韓半島の統一問題について非常に深い話し合いが行われた」と明らかにした。実務当局者とは違って、こうした「深い話し合い」は首脳会談では異例とされる。しかも、これをあえて公にした。初めてのことだ。中国はこれまで、統一=吸収統一と見る北韓への配慮から、統一論議はしてもその公表は避けてきた。

 C 習主席が朴大統領の考えを前例のない水準で汲み取っているのは間違いない。それでも、中国の北韓に対する姿勢は根本においては変わっていないはずだ。北韓の体制崩壊はもとより、国境地帯が不穏になるような不安定化を望んでいない。

 B だが、手をこまねいているうちに北韓の核兵器開発は進んできた。場合によっては中国を巻き込む大きな火種になるだけでなく、矛先を中国に向けかねない危険な代物をいつまでも放置できない。切歯扼腕してきた中国としても、打開策が喉から手が出るほどに欲しいはずだ。

 D 朴大統領は首脳会談の冒頭で、北韓による地雷挑発(8月4日)と8・25南北合意に言及し、「韓中両国の戦略的協力と韓半島の統一が域内の平和にどれほど重要か示した」と強調し、「中国が緊張の解消に向け、建設的な役割を果たしたことに感謝する」と表明した。中国の現状維持的とも言える対北韓政策の基調変更を促したとも言える。「非常に深い話」にはそこらへんも含まれているのではないか。

 A いわゆる地雷挑発で、韓半島の緊張は一気に高まった。韓国は拡声器による対北宣伝放送を11年ぶりに再開、北韓が2度にわたって韓国側を砲撃すると、それに7倍返しで応じた。だが、北韓は「準戦時体制」に入ったはずの21日、南北高位級会談を提議、8・25合意をもって緊張はあっけなく終息した。13年2月に3回目の核実験を強行して以降、今回とは比べ物にならない激烈な言葉で、核戦争危機を長期にわたって煽り続けたことからすれば、信じられないほどだ。

 B 高位級会談で韓国は要求事項をすべて通した。数々の軍事挑発を繰り返してきたにもかかわらず、北韓が南北の公式文書に「遺憾」を明記するに至ったのは初めてだ。北韓からの会談提議は当初、金養建党書記(統一戦線部長)から金寛鎮国家安保室長に対するものだった。韓国はこれを一蹴し、「実質ナンバー2」の黄炳瑞軍総政治局長を引きずり出した。高位級会談は一貫して韓国主導だったと言える。

 C 北韓の地雷挑発はその仕掛けも時期も実に稚拙だった。相次いだ大物の粛清や軍将星の人事混乱で士気が落ち、これまでのような緻密さがないとまで言われている。一方の韓国は、北韓の仕業と断定してすぐ、拡声器による対北宣伝放送を再開した。46人の将兵が犠牲になった天安艦爆沈(10年3月)や軍民4人が犠牲になった延坪島砲撃(同年11月)の時でも抜かなかった宝刀を抜き、北韓が困惑するほどの強硬姿勢を見せた。

韓米中の協力が実質作動見せる

 D 韓国の毅然とした姿勢もさることながら、それを可能にした韓米中協力の実質的な稼働にも注目したい。合同軍事演習の最中だった韓米は、ほぼリアルタイムで情報を共有し、米軍は韓国防衛を繰り返し表明した。今時はさらに、北韓の局地挑発に対する韓米共同対備計画を初めて作動させている。

 B 韓中両国は「挑発が続けば大統領の訪中日程に支障が生じる」という懸念を同じくした。中国外務省は21日、異例にも「有関(関連のある)方面は自制すべき」とする公式な立場を表明し、中国メディアは人民解放軍の戦車・装甲車が北韓との国境に移動していると一斉に報じた。中国があらゆる対北チャンネルを動員したのは確かだ。

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出そろった「2+4」
「好事魔多し」も…北韓の揺さぶり、どう対応

 A 6者会談の構成国である南北と米日中ロ4カ国は、韓半島の統一問題においても2+4の枠組みをつくることになるだろう。その役者がここにきてすべて出そろった。朴大統領にとってまたとない外交舞台がしつらえられつつある。

 B 緊密な関係にある米中に加え、疎遠だった日本との関係も修復軌道に乗った。北韓もようやく南北協議のテーブルについた。ロシアについても、朴大統領は2日の習主席主催の晩餐会でプーチン大統領と隣り合い、今月30日に国交正常化25周年を迎える韓ロ関係や北韓問題について意見交換したという。北韓は冷却した中国との関係を埋めるようにロシアに接近しているだけに、ロシアも北韓問題で重みを増している。南北関係改善へ助力を求めた可能性は大きい。

 A 習主席とプーチン大統領は8回も会っており、かつてないほど友好関係を固めてきたと言われる。韓ロ首脳の対話には習主席のお膳立てもあった。

 C 朴大統領の外交は韓半島統一のための多元外交と称されるべきだろう。就任以来、前のめりとも評されるほどの姿勢を見せてきた。大胆とも言える「中国重視」もその一環だ。ここにきて輝きを増すことになるかも知れない。だが、その主たる要因は、呼べど叩けど応答のなかった北韓から、はからずも舞い込んだ8・25合意にある。これをどう管理・履行するのか、韓国としても戦略的な対応が求められる。

離散家族の再会最初の試金石に

 D 気になるのは日程だ。25日の米中首脳会談では、南北対話の進展に期待を示す一方、軍事挑発を許さないとのメッセージを北韓に突きつけるだろう。だが、8・25合意履行の試金石とも言われる南北離散家族の再会は、来月20〜26日の予定だ。その前の労働党70周年で弾道ミサイルが発射された場合、韓国は人道問題と切り離して処理できるのか。

 A 北韓はその微妙なスキを突き、韓国と中ロ、米日との間に亀裂をつくろうとする可能性もある。韓米首脳会談、韓日中首脳会議と韓日首脳会談は、北韓の動向に大きな影響を受けかねない。

 C 北韓もそのことをよく理解しているはずだ。8・25合意での敗北感、北韓代表として軍事パレードを参観した崔龍海書記の席が習主席から遠く離されていた屈辱感もある。日本の安保法制が成立すれば、それはそれで口実になる。どうでるか予断を許さない。

 D 北韓が大規模な軍事挑発をすれば、国際社会からは、韓中の第一義的な責任が問われよう。軍事パレード参観のリスクを冒してまで、韓中連携を重視した朴大統領の立場も揺らぎかねない。「なんのための中国重視か」ということになるからだ。

 B 韓国は韓米同盟をより堅固にするとともに、首脳会談を前に韓日提携の実を積み上げていこうとしている。昨年の秋以降、安保や経済問題は歴史問題とは別個に管理すべきだとの流れが韓日間にはできている。今月下旬の国連総会に合わせ、韓日外相会談と韓米日3国外相会談が開かれる方向だ。北韓の核・ミサイルへの包囲網を拡充するために全力投入を確認する場になる。

 A 8・25合意や韓中首脳会談の「6者会談早期再開」合意を受けて、6者会談の韓国の首席代表が訪米し、米国の首席代表をはじめ国連安保理事会15カ国の大使らとそれぞれ会談する。中国のより積極的な役割を求める方向での協議になるという。今回の韓中首脳会談は習主席に、これまでとは一線を画す毅然とした対北姿勢を促す布石だったはずだ。無駄石にしてはならない。

(2015.9.16 民団新聞)
 

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