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サラムサラン<4> 韓国語を学ぶ心
 20代も半ばをすぎて、韓国語を学び始めた。80年代の半ば、隣国語を学ぶ人はまだ少なく、教材も限られたものしかなかった。通勤時間を利用しながら、テキストを見、テープを聴いて、独学を重ねた。

 初めは文字の壁が圧倒的に高かった。隣の国でありながら、世界で最も遠い言語のように感じた。しかし、ひとたび記号のようなハングル文字に慣れると、驚くばかりに似た世界が広がった。

 語順が同じである。「てにをは」の助詞の使い方もそっくりだ。中学生で英語を習い始めて以来、日本語の特殊性、言語的孤立感ばかりを感じてきたが、親戚や古い友人に出会ったような気がした。この地球上のどこに自分が立っているか、足元が定まる思いがした。

 漢字の熟語が多いことも発見だった。漢字の音を知れば、派生的にボキャブラリーは増加していく。やがて不思議な感覚に襲われた。「生命」は「センミョン」、「友情」は「ウジョン」と、韓国語を口の上に転がしていると、自分が生まれるよりもずっと以前に、その音を耳にしていたような気分が突き上げてくる。長く体内に眠っていた音感が、息を吹き返す感じなのだ。

 面白いのは、言葉がしばしば人の記憶と離れがたく結びつくことである。「フク (土)」という言葉を学んだのは、利川に窯を持つ知人の陶芸家からだった。「コッコジ(生け花)」という言葉は、夫人がその道の師範であったゆえに知った。昨夏には長男が結婚し、私は請われて「チュレ(主礼)」という結婚立会人の役を務めることになったが、初めて知った「主礼」という言葉も、今後は新婚夫婦の姿を思い出さずに聞くことは難しい。

 戦前(日帝時代)、朝鮮語を学ぶ日本人には公安関係者が多かったそうだ。これほど、やさしさや愛とは遠い言語学習もあるまい。だが、言葉を学ぶとは、単に道具を手にすることではない。どの国であれ、人はその言葉で喜怒哀楽や愛を語る。赤ん坊は、母の愛とともに言葉を覚えるのだ。心を知らずして、言葉を学ぶ意味などあり得ない。

 韓国語を習い始めた頃、ソウル便の飛行機の機内放送は、日系航空会社だと日本語と英語のみで、韓国語がなかった。私はそのことが納得できず、改めてほしいと手紙を送った。私の影響力などあったはずもないが、時代は変わり、今では韓国語の機内放送は当たり前になった。現在、日本の多くの都市で、駅構内の看板にはハングルが併記されている。現代日本のささやかな誇りである。(作家)

多胡 吉郎

(2009.4.15 民団新聞)
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