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北韓政権ジレンマ深刻
韓米日との緊張激化か
党大会の「成功」優先か


 北韓・金正恩政権はいま、韓米日を中心とする国際社会との緊張を極度に激化させるのか、それとも、36年ぶりとなる第7回党大会の「成功」を優先するのか、深刻なジレンマに陥っている。緊張を高めつつ「成功」を演出すべく、大会前に5回目の核実験を強行する可能性も否定できない。だが、短絡的な手法ではその後の展望をさらに暗くすることになる。

36年ぶりの開催

 韓国統一部の報道官は23日、第7回党大会の開催日を5月7日と特定したうえで、経済的な成果を最大化するための総動員運動「70日戦闘」を呼びかけているものの、地方からの出席者を選ぶことなど「大会の準備と関連した正式な手続きはまだ行われていない」との認識を示した。

 北韓にとって党大会は格別な意味をもつ。5年に1回の開催が規定されているにもかかわらず1980年の第6回大会以来開かれなかったのは、経済問題が解決できなかったためで、党大会と経済状況は不可分だ。

 韓国銀行の推計によれば北韓経済は、11年に0・8%のプラス成長に転じ、12年1・3%、13年1・1%、14年1%とプラスを維持した。だが、かろうじてマイナス成長を免れているに過ぎない。中長期的な経済計画や人民生活向上のビジョンを示せなければ、36年ぶりの党大会は形無しになる。

 北韓は昨年10月に開催を発表して以来、「党大会を大政治祝典として光り輝かせよう」「人民生活の向上と強盛国家建設に大飛躍を起こそう」とのキャンペーンを大々的に展開してきた。しかも金正恩は今年の新年辞で、経済建設と核開発を同時に進める「並進路線」にさえ触れず、経済優先を強調し国際協調をもにおわせた。

 それにもかかわらず、4回目の核実験(1月6日)や長距離弾道ミサイルの発射(2月7日)を強行した。党大会を「成功」させようとする流れとは矛盾する。北韓問題の専門家の間で、今回の暴挙はビジョンを描けない責任を国際社会に転嫁するため、との見方があるのも当然だ。

 北韓は制裁・圧力を強める国際社会に強面姿勢を崩していない。弾道ミサイルやロケット砲を東海に打ち込んだほか、長距離弾道ミサイルの「大気圏再突入の環境模擬実験に成功」したと発表し、「核攻撃能力の信頼性をより高めるため、核弾頭の爆発実験と核弾頭装着が可能な多くの種類の弾道ミサイルの発射実験を早期に断行する」とも公言している。

 一方で、「この時刻から朝鮮人民軍の正規部隊と労農赤衛軍、赤い青年近衛隊をはじめとするわが革命武力と全人民の一挙一動は、朴槿恵逆賊どもをこの地、この空から断固と除去するための正義の報復に向かう」(対韓窓口機関「祖国平和統一委員会」の「重大発表」=23日)などと口をきわめてきた。

 こうした軍事パフォーマンスや「重大発表」などで露骨な恫喝を繰り返してはいても、13年2月の第3回核実験時に比べると強硬度合いは低い。3年前は約2カ月にわたり党・軍・政の各機関を総動員して談話・声明・最後通牒を繰り出し、核戦争危機を煽りにあおった。ついには、すべての在韓外国機関と外国人に退避に向けた対策を立てよと警告まで発した。

狭まった包囲網

 今回は、核兵器にかかわる能力誇示こそ、はるかに威力の大きい「水爆実験」を成功させ、なお困難とされる「大気圏再突入」も技術的にクリアしたなどとわざわざ「告知」するとともに、打撃対象を大統領・青瓦台に絞り込んでもいる。だが、心理戦への熱量は明らかに減少している。国際社会の包囲網がより緻密に、より狭まったことと無関係ではない。

 国連安全保障理事会が新たに採択した対北韓制裁決議2270は、異次元の厳しさを備えており、なおかつ、これまで一貫して北韓擁護の姿勢をとってきた中国が徹底履行の姿勢を見せるだけでなく、独自制裁にも踏み込んだ。

 中国は2270の制裁対象である北韓船舶31隻(遠洋海運管理会社保有)に対する入港不許可措置を徹底しているほか、北韓を出入りしている船舶の積載貨物についても事実上の全数調査を実施している。

 また、北韓の貿易業者が預けた人民元を平壌の口座に入金する為替業務や、貿易業務に一時的な融資を行う北韓の在中金融機関を相次いで閉鎖し、その数2万人とされる北韓の在中労働者の違法就労も厳格に取り締まる方針と伝えられる。

 先行き厳しい経済状況のなかで、制裁効果は心理面ですでに表れ始めたとの見方が強い。第7回党大会が金正恩政権にとって大きな重荷に転じた可能性がある。当面しては、対北韓政策をめぐる葛藤と従北勢力を抱え、国際的な対北包囲網のなかでもっとも脆弱な韓国を第20代国会議員選挙を機に揺さぶり、突破口を開くことに総力をあげる構えだ。

(2016.3.30 民団新聞)
 
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