| 朴倧玄さん
| | 『KARA、少女時代に見る「韓国の強さ」』講談社プラスアルファ新書。定価838円(税別)。
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学びが相愛育む しがらみ砕くファンの熱意 日本に来て20年の朴倧玄法政大学教授(42)は、「韓国と日本はもっと、お互いの良さに気づいてほしい」とこのほど、『KARA、少女時代に見る「韓国の強さ」』(講談社プラスアルファ新書)を出版した。K‐POPや韓流スターを通じて韓国を知り、さらに国際交流につなげる「深韓流」を提案している。 ドラマ「冬のソナタ」から始まった韓流。今、日本を席巻しているのがK‐POPだ。若者を中心に幅広い世代まで、その人気は止まらない。 韓国や日本ではこれらの現象を「新韓流」と書くが、朴さんはこの言葉に否定的だ。なぜなら「新しい物はいずれかは古くなる。古い物は消えるかもしれない。そういうことではなく、深みを増していかないといけない」から。自らは「深韓流」という言葉を提案している。 本書では、K‐POPアーティストたちを生み出した韓国の社会背景やパワー、日本が失いかけている家族愛など興味深い記述が満載だ。「韓流ブームがもしなかったら、K‐POPが入ってくる環境の土台を作ってもらえなかった」。ここに至るまでの背景には5つの要因があると分析する。 理想像求めてスターづくり 例えば、アーティストたちの歌の上手さに、驚かされる人たちは少なくない。これは韓国特有のアイドル養成システムがあるからだ。練習生たちは、軍隊文化を反映させた合宿生活を送らなければならない。100人でデビューできるのは2、3人。厳しい練習に耐えて、激しい競争の中でもまれている。 デビューまでに1人あたり4000万ウォン(約300万円)が投資される。練習期間は例えば、少女時代のメンバーで最長7年だ。「なぜ、ここまで長い時間と金を投資するのか」という疑問がある。 「韓国では社会全体が求める理想像がある。母として、子どもとして、先輩として『こうあるべき』というものがある。それはアイドルも同じで、歌手は歌唱力があり、アイドルだからダンスも上手くないといけない。さらに、そこに外見が完璧でという条件が加わる。理想像に達しなかった場合、大衆は残酷とも言えるほど、厳しい評価を下す」。アイドルも事務所も一生懸命、頑張って最高の状態でデビューする。これは日本と最も異なる韓国人の価値観の1つでもある。 そして注目するのは、濃密な家族愛。今、活躍しているアイドルたちの親は、韓国の長い軍事政権を経験したうえで、民主化を引っ張ってきた40、50代だ。「この人たちは弱者の立場に立ったり、あるいはクリーンさ、公平であるべきということを1番の価値観とする」 以前、東方神起やKARAが事務所ともめた時、親たちはわが子の努力に見合っていない報酬はおかしいと、自ら公の場に出て闘った。この発想は親世代ばかりか、韓国の国会がアイドルの報酬問題、契約問題に立ち上がったのも、アーティストたちを守るという発想からきているという。 良さを吸収し尊敬しあおう 先日、お台場で「韓流偏向」に対する抗議デモが行われた。韓流やK‐POPなどにはまって人たちは、日本の大衆文化にはない何かを求めている。「デモをする前に韓流を見て、日本が失いつつある何かについて考えてほしい。韓国ではドラマやK‐POPの描いているテーマの中心に家族愛がある。日本は今、世代に合わせた番組ばかりを作って、家族全体で見ることができない。もっと家族のコミュニティーを大事にすべき。お互いに喧嘩する時代は終わった。双方の良いところを吸収して、相手を尊敬しなくては」 ファンたちは次のステップとして、韓国の言葉や歴史などを知ろうとする。「韓流ファンたちの愛はものすごく深い。その愛が結局、地域と地域をつなぐ糸となって、それが自然と国際交流につながる」。それこそが「深韓流」なのだ。 韓国と日本はこれまでになく良好な関係になった。在日同胞に対しては、「過去の傷を背負って懸命に生きてきたが、韓流を通じて、韓国人としてプライドを持つようになった人も多いと思う。日本人はダイレクトで韓国に関わるよりも、在日の方が身近な韓国」と話す。 在日を含め、韓日の距離がさらに近づくことを願っている。 (2011.9.28 民団新聞) |