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<大統領選>各党の対北姿勢を問う…「金日成民族」強要なぜ放置
12月の大統領選挙に向けて党内予備選が行われている。上はセヌリ党候補、下は民主統合党候補
総連専従者らが4月25日に駐日韓国大使館前に押しかけ、「金日成主席と金正日将軍さまを民族の太陽として永遠に高く戴き、金正恩第1委員長を党と国家、軍隊の最高に戴き進められた太陽節100周年は半万年民族史に輝く大慶事であり、世界に誇る民族の栄光だ」と叫んだことを強調する5月9日付「朝鮮新報」(総連機関紙)。

 第18代韓国大統領選挙まであと4カ月ほどとなった。与党セヌリ党と最大野党の民主統合党はそれぞれ自党候補を決めるための予備選の最中にある。在日有権者の多くは、今後正式に提示される各党候補の公約の中でも特に対北・統一政策に強い関心を持っている。南北統一問題に関連する各党のこれまでの基本姿勢と関連して、北韓の不遜の極みである「わが民族=金日成民族」論への無策など、すくなからぬ在日同胞が抱いてきたいくつかの疑問について、この機会に積極的に答えてくれることを期待したい。(本紙編集部)

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「わが民族同士」の虚実
夜郎自大な北言動…歴代政府、中止要求せず

「6・15」後にエスカレート

 各党の大統領選挙出馬表明者とも、2000年6月の南北首脳会談で発表された「6・15南北共同宣言」の順守を表明している。同宣言は「わが民族同士」を最大のキーワードとしている(第1項「南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした」)。

 だが、94年7月の金日成主席死亡以後、「わが民族」は「金日成民族」だと宣言(94年10月、金正日国防委員会委員長「金日成死亡100日談話」)してきた北韓は、「6・15」後も、「金日成民族」主張を取り下げるどころか、繰り返し強調してきた。昨年12月の金正日国防委員長死亡後も連呼している。

 「金正日総書記が主体革命偉業を代を継いで最後まで完成していく指導の継承問題を解決したことは、金日成民族の永遠の未来のために成し遂げた最大の業績」(今年3月25日、金正日死亡100日中央追悼大会追悼辞)。

 権力を世襲した金正恩第1委員長は、4月15日の金日成生誕100周年慶祝閲兵式での祝賀演説で「金日成民族の百年史は波乱が多い受難の歴史に永遠の終止符を打ち、わが祖国と人民の尊厳を民族史上最高の境地に高めた」と宣言した。

 わが民族にとって「金日成」はどんな存在だったか。同族相残の6・25南侵戦争を引き起こし、数百万同胞の犠牲者を出したうえに、南北分断を固定化させ、1000万離散家族を生み出した張本人だ。

 しかも、その責任を取るどころか3年間の「祖国解放戦争」に「勝利」したと歴史を歪曲して正当化し、個人独裁と権力世襲・王朝体制づくりに力を注いだ。これは世界が知る周知の事実である。

 わが民族に一大惨禍をもたらした南侵戦争を美化したうえに、その張本人の名を冠して「金日成民族」などと呼ぶことは、わが民族・同胞に対する重大な冒涜・侮辱以外のなにものでもない。

 北側に、本当に南北融和・協力を通じての統一問題解決の意思があるならば、「金日成民族」主張を6・15発表後にはやめねばならなかった。

 ところが北側は、「金日成民族」に加えて「金日成・金正日=民族の太陽」「金日成・金正日誕生日=民族最大の慶事」「金日成・金正日・金正恩=民族の最高尊厳」などとエスカレートさせている。しかもそれに対する批判を一切許さず、南側および海外の全同胞に対して、それに同調することを強要している。

譲れないもの態度を鮮明に

 このように、北側が、わが民族をあたかも金日成一家の所有物であるかのごとく扱うことをやめず、「金日成民族」論を公然と唱えていることに対して、金大中政府も、金正日国防委員長と6・15の実践をうたった「10・4首脳宣言」(07年)を発表した盧武鉉政府も、その中止を求めてこなかった。

 李明博政府になってからも同様だ。政府だけでなく、この間、6・15の履行を政府に促してきた与野党も、北側に対して中止を要求していない。

 6・15の順守・実践を標榜する民間の6・15南側委員会も「金日成民族」の押しつけに反対していない。それどころか、北当局の代弁人である6・15北側委員会と6・15海外側委員会(日本での北当局の忠実な代弁機関である総連と、その別働隊である韓統連<在日韓国民主統一連合>が中心となっている日本地域委員会が主導)とともに、「総連に対する支持と支援は民族統一運動の重要な課題」と表明。総連の大会をはじめ関連集会に連帯の祝電を送り続けている。

 周知のように総連は、北韓を「南北すべての人民の総意によって建設された唯一正当な主権国家、唯一の祖国」と定め、「同胞を『共和国』(北韓)のまわりに総集結させる」ことを使命としている。当然のこととして、北韓の独裁世襲体制と「金日成王朝体制の南地域への拡延統一」政策を無条件支持し、その実現のための闘いの先頭に立つことを表明し活動している。=別掲写真参照

 南北の対話・交流・協力を通じた民主的平和統一を推進する上で譲れるものと、譲ってはならないものとがあるはずだ。北韓政権がわが民族を「金日成民族」と呼び続けていることに対して、これまで政府はもとより責任ある政党がきちんと対応してこなかったのは理解しがたい。

 12月の大統領選挙で政権獲得をめざす政党・立候補予定者には、「金日成民族」主張に対する態度を鮮明にしてほしい。

 たとえば、北韓は6・15順守を強調するからには、その基本理念に反する「金日成民族」主張をまず撤回しなければならない−−と。

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「6・15」第2項の評価
最大成果視は誤り…「対南解放統一」に変化ない

統一の「中身」言及を避ける

 2つ目の質問は、6・15宣言の第2項「南と北は、国の統一のための南側の連合制案と、北側の低い段階の連邦制案が、互いに共通性があると認定し、今後、この方向で統一を目指していくことにした」の評価についてだ。

 同項はたぶんに曖昧模糊としている。このため、南側の統一方案中の連合制と北側の統一方案の連邦制のどこに共通点があるのか、当時から疑問・批判の声があり、今も続いている。そもそも同項には、最も肝心な統一の中身、どのような統一国家をめざすのかについての言及はもとより、示唆すらない。

 それにもかかわらず、6・15南側委員会などは北側と同様に、同項を6・15の「最大の成果」と強調している。「重要な点は、曖昧模糊たる中でも北側が非現実的な連邦制の主張を緩和させて国家連合構想へと重心を移したことである。統一が漸進的なだけでなく、中間段階を経るという点に明確に合意した」(白楽晴前6・15南側委員会常任代表)と主張している。

 だが、「連合制」と「連邦制」は、似て非なるものだ。韓国では盧泰愚政府(88年〜93年)以来、統一のプロセスとして南北連合構想が公論として維持されている。南北両政府がそれぞれ軍事権と外交権を持ち、ゆるやかな「連合」体制の下で交流協力を進め、南北社会の等質化をめざし、最終的には民主的な南北統一選挙による統一国家の形成を目指している。

 これに対して北韓が主張している連邦制(「高麗民主連邦共和国」創立方案)は、異質な南北の2体制のままをもって統一の最終段階・完了とする。つまり、統一総選挙を回避して独裁世襲体制の維持を図り、実質的には平和・民主・自主の原則に基づく単一国家の形成を忌避する半面、対南攪乱・侵略による統一の余地を残そうとするものだ。

 その北韓では朝鮮労働党が国家の上に君臨している(憲法第11条)。今年4月11日の党規約序文改正では「朝鮮労働党は金日成・金正日主義を唯一の指導理念とする金日成・金正日党である」と強調、その上、「金正恩同志は労働党と人民の偉大な指導者である」と3代世襲を明文化した。これは「人民共和国」とは名のみで「王制」であることを宣言したことにほかならない。

 同規約序文は「当面の目的は共和国北半部で社会主義強盛大国を建設し、全国的な範囲で民族解放、民主主義革命を遂行するところにあり、最終的には全社会を主体思想(金日成・金正日主義)化するところにある」と明記。「南朝鮮で米帝の侵略武力を追い出し、あらゆる外部勢力の支配と干渉を終わらせ、(略)わが民族同士で力を合わせ、自主、平和統一、民族大団結の原則で祖国を統一し、国と民族の統一的発展を成し遂げるために闘争する」と謳っている。

 党規約に続いてその2日後に修正した憲法の序文では金正日国防委員長を「民族の尊厳と国力を最上の境地に押し上げた不世出の愛国者」と称賛し、「核保有国に変えた」ことをその業績として明記。さらに「偉大な首領金日成同志と偉大な領導者金正日同志は民族の太陽であられ祖国統一の救星であられる」とした。

 このように北韓は党規約と憲法修正を通じて「金日成民族」・「金正日朝鮮」を強調、「金日成王朝による南朝鮮解放統一」路線には、いささかの変更もないことを内外に明らかにした。

党規約・憲法修正で再確認

 北韓の唱えている「統一」は、「わが民族=金日成民族」と規定した上での「南朝鮮解放統一」であり、独裁権力の父・子・孫「3代世襲」の合理化、金日成王朝の擁護を至上課題としている。 北韓は6・15後も、そのような「統一」論を機会あるごとに強調、誇示している。それに対して6・15南側委員会が沈黙しているのは、6・15は、統一を漸進的に進めていくことで合意を見たにすぎず、北側の「南朝鮮解放統一」論の放棄を前提にしたものではなかったためだろう。

 にもかかわらず韓国の主要政党が、いまだに6・15の無条件支持・実践を公約化しようとしているのはなぜか。説明を求めたい。対北・統一政策をめぐる南南葛藤をなくすためにも必要だ。

 ちなみに韓国の憲法は前文で「祖国の民主的改革と平和統一の使命」を強調し、第4条(統一条項)で「自由・民主的な基本秩序に立脚した平和統一政策を樹立し、これを推進する」と明記している。

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南北基本合意書の重み
必ず原点回帰を…非核・平和制度化の道筋示す

「金主席誓約」簡単に反古化

 もう一つの質問。6・15を積極支持する政党や大統領立候補予定者らは6・15および10・4の実践を強く促しているが、それに先立つ、重要な合意である「南北基本合意書」(南北間の和解・不可侵および交流協力に関する合意書)および「韓半島非核化共同宣言」(いずれも92年2月に発効)についての言及がないのはなぜか。

 北韓の金日成主席は92年2月、平壌での第6回南北総理会談を終えた双方の代表団を前に、声明書を読み上げ、「今回発効した合意文書は北と南の責任ある当局が民族の前に誓った誓約だ。共和国政府はこの歴史的な合意文書を祖国の自主的平和統一の道で達成した高貴な結実と考え、その履行にあらゆる努力を尽くす」と明言。「この歩みを止めてはならず、ためらってもならない」と力説した(林東源「南北首脳会談への道 林東源回顧録」岩波書店)。

 南北間で同年9月に署名された「基本合意書の『第1章南北和解』の履行と順守のための付属合意書」でも、「南と北は『基本合意書』と『韓半島非核化共同宣言』を誠実に履行、順守する」と確認している。ところが、北側は同年末までに、この「誓約」を一方的に破り、反古にした。

順守・履行を金委員長拒否

 こうした経緯を踏まえ金大中大統領は、00年の南北首脳会談で南北基本合意書を「具体的に実行することで同胞に希望と信念を与えよう」と促した。しかし、金正日国防委員長は応じず、6・15宣言では「わが民族同士」を強調しているにもかかわらず、その「高貴な結実」である南北基本合意書について言及することがなかった。

 この20年、金日成・金正日父子が、南北分断克服へ韓半島非核化と平和体制への転換の道筋を示した「2つの合意文書」を、順守・履行していたならば、2度にわたる「核危機」はなく、天安艦撃沈と延坪島無差別砲撃事件もなかっただろう。

 南北合意の尊重および同胞愛を欠いた「わが民族同士」の強調は、不信を助長し百害無益である。

 6・15の実践を韓国政府に促すのであれば、それに先立ち、北側に対して「金日成民族」主張をやめるよう申し入れるとともに、南北基本合意書と非核化共同宣言に立ち返ることを強く要求してしかるべきではないか。

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在日の願う統一国家像
民主・人権で等質化…3代世襲・王朝化は時代逆行

 在日を含む海外同胞が切望してやまない祖国の統一は、平和・民主・自主を基本原則として推進され、「南北社会の等質化」(経済発展と平和・民主・人権の価値観共有)を図るものだ。「民主的先進国家への発展的統一」であり、決して「南北の金日成王朝化統一」(全社会の金日成・金正日主義化)ではない。

 このような南北統一の実現には、非核化を通じた南北間平和体制の制度化に加えて、北韓自身の改革・開放を通じた経済の再建と民主化推進が不可欠だ。

 南北融和・統一への進展がみられないのは、北韓政権が金日成王朝の維持・存続を最優先させているためである。南北の関係改善を通じた統一の推進は、北の独裁政権に、その意思がありさえすれば、すぐにも可能だ。周辺強大国の妨害により分断・対決が継続しているわけではない。

 民団は、第18代大統領選挙に向けた在外選挙人登録申請および国外不在者申告初日の7月22日、公館所在地の10本部会館で「大統領選挙参与全国決起集会」を開いた。

 韓国中央会館で行われた集会に来賓として参加したセヌリ党と民主統合党の国会議員は、「皆さんの1票は韓国の運命に大きな影響を与える。1票が韓国の発展と皆さんの発展につながる」と強調、「賢明な判断を期待している」と投票参加を呼びかけた。

 各党・立候補予定者には、「賢明な判断」を期待して、対北・統一政策と関連した在日有権者の疑問・質問にぜひ答えてほしい。

(2012.8.15 民団新聞)
 

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