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<本紙記者座談会>韓日不信の連鎖どう断ち切るのか
オランダのハーグで開かれた韓米日首脳会談で、オバマ米大統領の前で握手をする朴槿恵大統領と安倍晋三首相(3月25日)

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はびこる「悲観論」
構造的な変化映す…「せめて3国会談を軌道に」

 A 先日開催された韓日の研究者や言論人によるフォーラム(1面参照)は、タイトルに「東北アジア情勢の変化と韓半島統一」とあった。「変化」するのが「情勢」なのに、なぜ、「変化」が付いたのか。韓日中関係はこれまでのパラダイムでは捉えきれない「構造的な変化」の途上にあり、認識がそれに追いつかない、そんな現状をそのまま映しているように思えた。

 B フォーラムを共催した東京大学現代韓国研究センターは設立から4年になる。木宮正史センター長は開会辞で、「実にいろいろな会議を開いて努力したが、日韓関係の悪化を防ぐことができなかった。日本の韓国研究者として力不足を痛感した。この4年間を否定された気分だ」と述べている。

 C オランダのハーグで開かれた韓米日の首脳会談は、朴槿恵大統領と安倍晋三首相の初の公式対面の場として注目された。「それを韓日関係修復への布石にして欲しい」と願いながらも、そうなるとは誰も思っていない。フォーラム会場にはそんな重苦しさがあった。

 B 「朴大統領と安倍首相の任期中は、韓日首脳が正面から向き合う会談は諦めたほうがいい。今回のハーグ核サミット時の3国会談のように、各国首脳が参加する国際会議の場で米国を仲立ちに両首脳が会談する。そんな方法で少しずつ接近していくしかないのではないか」(伊豆見元・静岡県立大教授)。割り切った発言に、会場は重い笑いのなかにも妙に納得していた印象がある。

 C 「どちらが関係を悪化させているのかの論争が激しくなり、こうした論争そのものが現状を変え始めた」(姜孝祥・朝鮮日報編集局長)、「(関係修復へ)一方の誠意ある措置を期待するには、関係が余りにも悪化している」(西野純也・慶応大学准教授)とのやるせない指摘もあった。

 A 「責任」論はさておいて、ここではフォーラムの討論を踏まえながら、国交正常化以来で最悪と言われるまでになった韓日関係の現況を見つめ、打開策を探っていきたい。

 B 両国は競い合うように、事態悪化の螺旋階段を駈け降りてきた。それでもまだ、底にたどり着いたと言える段階ではない。戦時中に日本に強制連行された中国人元労働者らが中国で、日本企業を相手に損害賠償訴訟を起こす動きが広がり、これに韓国人元徴用工の遺族らが連携する姿勢を見せている。一方では、先端技術の違法流出をめぐって日本企業が韓国企業に損害賠償を求める可能性も出てきた。

 C 2015年から使われる小学校用教科書の検定結果が公表されたが、社会科教科書では検定を申請した全出版社が「竹島(独島)」を「日本固有の領土」などと記述し、安倍政権の「領土教育強化」の方針を先取りしたかっこうだと報じられた。韓国政府は強く反発しているが、日本政府は「自国の固有領土について正しく教えることは当然」として意に介していない。歴史認識、植民地支配の清算、そして領土問題と同じ根っこから新たな火種が次々に出てきて、とにかく打ち止め感がない。

日本の「領土教育」泰然と対応すべき

 A その教科書について韓国メディアは猛烈に反発している。一例をあげれば、「日本の『独島挑発』教科書に断固対応すべきだ」と題した中央日報5日付社説は、「朴槿恵政権は駐韓日本大使への抗議にとどまらず、さらに断固たる姿勢で対応する必要がある」と主張した。朴大統領に独島上陸を求める圧力が強まりはしないか。

 B 強まるかもしれない。だが、政府は慎重に対応するはずだ。ハーグで朴大統領と安倍首相による初の公式会談を仲立ちしたオバマ大統領が今月下旬、日本と韓国を訪れる。関係修復へ何らかの調整があろう。露骨な対抗・報復措置に出るとは考えにくい。安倍首相が再び靖国神社に参拝するなど、韓国をことさら刺激する事態が続けば話しは違ってくるだろうが。

 C 盧武鉉大統領と小泉純一郎首相の時代に険悪化した韓日関係を立て直したのは李明博大統領だ。その彼が就任以来控えていた独島上陸を断行(12年8月)したのは、野田佳彦首相との首脳会談(11年12月)で軍慰安婦問題をめぐる日本側の対応に業を煮やしたからだと言われる。しかし、一時は溜飲を下げたとしても、得たものは激しい外交摩擦だけだ。韓国は独島を固有の領土と宣言し、実効支配している。泰然としていればいい。

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競り上がる「強硬論」
世論の制御 難しく…見えてこない戦略的思考

 A ハーグでの韓米日首脳会談では韓日間の懸案を論議せず、北韓の核兵器開発への対応や東北アジアの安全保障問題で緊密に連携することを確認し、合わせて中国の果たす役割の重要性についても認識の一致を見た。中国へ適切なメッセージを送ったことを含め、会談の意義は決して小さくない。オバマ大統領の歴訪が韓日修復への好材料になればと思う。それにしても、米国頼みでは情けない。

 B 韓日とも「国民世論」の力が大きくなり、それがお互いを刺激し合っている。政治指導者もコントロールするのが容易ではない。むしろ、国益・公益より自身の利益を優先してその種の「世論」に便乗する政治指導者がやたらと目立つ。その半面、韓日・日韓議員連盟や韓日・日韓協力委員会などのネットワークも往時の調整機能を発揮できなくなっている。

 C かつては双方に融通無碍で政界ににらみの利く大物がいて、裏交渉で事態の打開を図ることもあった。日本の政界再編や韓国政界の早い世代交代があっただけでなく、植民地時代のいわゆる「親日清算」に熱心だった盧武鉉大統領、靖国神社を6回も公式参拝した小泉首相という特異な政権が登場したこともあって、人脈が途絶えたとの見方が多い。

 A 例えツーカーの政府要人や大物議員がいたとしても、裏交渉は瞬時に暴露され、インターネット上で猛然と叩かれるのが明らかな現状では二の足を踏むだろう。時代ははっきり変わった。

 B フォーラムで西野准教授は、「かつては政治家同士が対立しても外交当局が汗をかいてきた」と言い、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結1時間前になって韓国側が突然キャンセル(12年6月)したことなどをあげながら、「より深刻なのは、外交当局の信頼関係がかつてほどではないことだ」と指摘している。

 C その例だけでなく、日本の外交実務者の対韓不信が募っていることは日本メディアが何回となく報じてきた。伝統的な執権党でありなおかつ巨大化した自民党政権下の日本は、大統領制とはいえ強い野党と在野勢力を抱え、対日政策が国論分裂の火種になりやすい韓国との違いを念頭に置くべきだろう。

 B 相手への配慮、想像力が必要とはいえ、それがかつてほどには働かない。西野氏はだからこそ、今年に入って外交実務レベルで関係修復努力が活発化しつつあるのは良い兆しだとしつつ、両指導者が世論にとらわれず諸懸案の解決に共同で取り組む「政治決断」をするために実務レベルの対話をいっそう活発化させ、信頼醸成を急げと提言している。

 C ワシントンで北韓担当の米政府特別代表、韓国の韓半島平和交渉本部長、日本の外務省アジア大洋州局長が北韓の中距離弾道ミサイルなど軍事挑発について意見交換し、3国の連携を再確認した。日本側はまた、韓国が神経を使っている北韓と日本の政府間協議の内容についても報告している。何はともあれ情報交換や共通課題の確認を一つずつ積み上げていくことだ。政治家の心ない言説や「嫌韓」「反日」の「世論」によっても動じない外交実務者の意地を見せるべきだろう。

 A 朝日新聞の箱田哲也論説委員がフォーラムで、韓日の政治的関係が「目を覆いたくなるような惨憺たる状況」になったのには、韓日中を軸とする東北アジアの構造的な要因と朴大統領・安倍首相という属人的な問題が入り混ざっているとの見解を示した。「(両指導者は)少なくともこれまでのところ、戦略的思考を得意とはしていないように見える。日韓関係というゲームをどう進め、最終ゴールをどこに定めているのか。両首脳部からはそれが聞こえてこない」とのことだ。

「穏健派」どうしの挟まる連携の余地

 B 日本のメディアには「歴史戦争」「外交戦争」といった言葉が頻繁に登場し、右派論壇には「嫌韓・憎韓」の言説があふれている。日本の外交当局者の「韓国にはもううんざりだ」といった発言が右派論壇を勢いづかせてきたことも否定できない。「相手を敵視し続けるといずれは本当の敵になる」という段階を超えた印象すらある。しかし、戦争は何も解決せず禍根を大量生産するだけであり、両国ともそんなことは望んでいないからには、いずれ関係修復を果たさねばならない。その戦略が世界からも注目されている。

 C 韓日関係を修復へと向かわせる折り返し点を何処にすべきか、双方とも懸命に模索している。だが、相手の出方に過剰反応する傾向が消えない。様々な係争事案を抱える韓日であっても、双方には「強硬派」もいれば「穏健派」もいて、内部ではせめぎ合いがある。ところが、反目し合う「強硬派」が互いを利用し合う構図ばかりが目立ち、「穏健派」どうしが手を携える余地が狭まっている。

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無視できぬ国内事情
復元力はなお健在…「日本の良心」にこそ焦点を

 A 産経新聞(3月31日付)に「月間ベストセラー1位、27万部突破。悪口ではありません、事実です」と大書した「呆韓論」の全面広告があった。「朝日新聞購読の読者はこう考える!」のコーナーでは、「朝日」や「毎日」を「日本の国益を損ねる新聞であることを痛感した」などとするコメントがならんだ。朝日新聞はこの間、韓日関係改善へ誠意ある動きを見せない安倍首相に批判的な姿勢を見せ、右派のすさまじい締め付け攻勢を受けている。

 B その「朝日」が韓米日首脳会談に関する社説(3月27日付)で安倍首相に対し、「未来志向」というなら自身がまずその中身を示せと迫る一方で、朴大統領が会談直前にドイツ紙とのインタビューで歴史問題での安倍首相の姿勢を非難したことに触れ、「外に向かって言うよりも、お互いの目を見て語り合う。これが責任ある首脳の態度ではないだろうか」と指摘した。「朝日」も韓国への苛立ちを隠していない。

首脳会談実現には環境の整備が必要

 C 李明博大統領の独島上陸の伏線になったと言われる野田佳彦首相との最後の首脳会談は、慰安婦問題で口論に近いやり取りがあったという。首脳会談というのは必ずしも、しっかりお膳立てをしてあからさまな対立は避ける、というものでもないらしい。ベトナム戦争の北爆に反対したカナダのピアソン首相が激怒したジョンソン米大統領に、襟をつかみあげられたそうだ。環境が整わない首脳会談はかえって関係を悪くするとの韓国側の懸念には一理ある。

 B 歴史修正主義的な発言で韓国をたびたび刺激し、朴大統領から対日政策の柔軟性を奪っておきながら、「対話の扉はいつも開いている」と語る安倍首相の態度は尊大に映る。対日関係にリスクを抱える朴大統領を、対韓関係にさほどリスクのない安倍首相が寄り切ろうとする構図だ。

 C 自身や支持基盤の価値観から対韓強硬論に乗っかっても抵抗感がなく、弱体野党しかないために束縛されにくい安倍首相と、「屈辱的な韓日会談を妥結させた親日売国奴+独裁者の娘」との悪罵を繰り返す根強い勢力を抱え、対日強硬論にたとえ否定的でも強く意識せざるを得ない朴大統領の立場の違いは大きい。

 A 話しが飛ぶようだが、新大久保のコリアタウンに人出が戻り始めたらしい。韓流ブームが10年を過ぎて下火になったこと以上に、在特会のヘイトスピーチ(憎悪表現)によって客足が落ち込んでいた。ここにきて、最悪期に比べれば3割ほど増えているという。

 B この地域で在特会の街宣が禁止されたこともあるだろうが、そうなったことを含めて、在特会を圧倒する人数で対抗した「レイシストをしばき隊」など日本市民の果たした役割が何と言っても大きい。数人のグループによる「お散歩」と称した韓国商店への嫌がらせも「しばき隊」などの厳しいチェックにあって、すごすご逃げ帰る状態になっていた。

 C 「しばき隊」には、韓日関係云々よりレイシストを「日本の恥」として許せない思いが先にある。だが、反レイシストの動きは論壇や街宣で猛威をふるう右派のプロパガンダに比べれば小さな存在だとしても、大多数を占める良識ある日本人、韓日関係を心配しても発言できない日本人を代弁する行動派と見なしていい。

 B 韓国の政治指導者はよく、「日本の良心」勢力と連帯すると言ってきた。であれば、もう少し「日本の良心」を信頼し、そこに向かって熱心に語りかけるべきだ。全日本を対象にする原則論攻勢は「敵」を増やしかねない。

 C 関係修復への突破口を探ろうと、近く日本を代表する交響楽団が訪韓公演する。NHK交響楽団は8年ぶり、新日本フィルハーモニー交響楽団は初めてだ。こうした試みは多く、関係正常化への復元力が本格的に働き始めた。

 A ハーグでの首脳会談は、安倍首相が「村山談話を継承する。河野談話を見直すことは考えていない」と言明し、朴大統領が「幸いだ」と応じて実現した。もう少し突っ込んだ言質のやり取りは十分に可能だ。両国は修交以来、衝突はあっても共栄基盤を拡大してきた。相手への戦略的視座が不要なほど近しかったとも言える。しかし、東北アジアの構造的変化を前にしてそうはいかなくなった。安倍首相の支持率も堅調だが、朴大統領の支持率は任期2年目では史上最高の61%を記録した。まずは、加熱する双方の世論を反転させるためにも、両首脳の「戦略的決断」が待たれる。

(2014.4.9 民団新聞)
 

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