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日韓の理解教員の交流から…東京・狛江一中 樋口豊隆校長 |
| 京畿道鞍峴小5年2組の子どもたちと記念撮影(2015年8月) | 「互いを尊重」 子供たちに、身をもって
「人権教育のベースになるのは偏見・差別を持たないで相手を尊重すること」。2013年4月に東京の狛江市立狛江第一中学校校長に就任した樋口豊隆さん(57)は、15年8月「韓国政府日本教員招へいプログラム」の団長として全国の教員25人と韓国のソウル、京畿道、釜山の学校を訪ね、生徒たちと交流を重ねた。以来、さまざまな形で狛江第一中学校の生徒たちと韓国を結びつけてきた。
樋口校長は今年、20年東京五輪・パラリンピックに向けて都の全公立校を対象にした教育プログラム「世界ともだちプロジェクト」(東京都)で、韓国の入っているグループを選択した。
このプロジェクトは、実施校がヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジア、オセアニアの5大陸各1カ国をセットにしたグループを選択し、学習や交流などを通して異文化理解を深めるものだ。
校長になって取り組んだひとつが年1回、留学生を迎えて話を聞く授業。毎回違う国を選ぶが、今年は昨年に続き韓国人留学生を招くという。今夏には校内研修の一環で教員15人前後が韓国文化院(東京・新宿区)を訪れることも決まった。
昨年の「韓国政府日本教員招へいプログラム」は、思い出深い。京畿道の鞍峴小学校を訪ねたときだ。教員たちが学校に到着すると生徒たちが歓迎してくれた。だが5年2組の教室に入った時は、笑顔はなく「何しに来たの、みたいな雰囲気だった」という。
担任が事前に説明していないなと思った。空気が変わったのは樋口校長が日本の童謡を歌ったり、ウクレレでハワイアンを披露してからだ。「45分の中で言葉は分からなくても生徒たちの心にとどかせてやると本気で歌った」。子どもたちの表情が変わっていくのが分かった。
最後に歌ったのは韓国の人気ドラマ「ありがとうございます」の挿入歌「アルムダウンセサン(美しい世の中)」。生徒も担任も一緒に歌い手拍子。記念撮影では子どもたちから話しかけてきたという。「子どもたちが笑顔になってくれたのは、自分の生涯で宝です」
樋口校長は小学校5年生まで神奈川県川崎市で育った。在日の友だちもいたが親から「いい子だけど、学校だけのお付き合いにして」と言われたことがある。その理由を聞いても答えない。「子どもは、何で、と思うじゃないですか。差別、偏見って大人が植え付けるんです。この経験が僕の原点」
今年2月、韓国の教員38人が狛江第一中学校を訪問して交流した。生徒会の生徒たちが学校で取り組んでいるいじめ解消の「ホワイトリボン運動」について説明すると、共感が広がったという。
この運動はその直前に東京都から表彰を受けていた。生徒会ソング「ともに」は、運動の一環で作ったCDだ。樋口校長は、韓国で暴力やいじめ解消に取り組んでいる学校と生徒会交流ができればと強く願っている。
樋口校長が生徒たちに伝えているのは「他国を知ることが自国や自分を知ることにつながる」。 韓国での経験や日本で参加した韓国の文化体験などは生徒たちに紹介している。「最後にこういうメッセージを送る。韓国の礼の仕方を勉強したら、じゃ日本の正しい礼の仕方ってなんだろう、日本人だからちゃんと勉強しないといけないよね、と」
実は、樋口校長は元々韓国の伝統文化や映画、音楽が好きだった。「生徒たちとK‐POPの話ができる校長は他にはいないと思う」ととびっきりの笑顔を見せた。
(2016.5.11 民団新聞) |
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