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劇団「新宿梁山泊」 金守珍さん20周年の決意
1954年、東京出身の在日2世。俳優、演出家、映画監督。映画「夜を賭けて」(03年)、「ガラスの使徒」(04年)など。舞台「千年の孤独」(88年)、「人魚伝説」(90年)、「YEBI大王」。テレビ出演「男たちの風景」、「エトロフ遙かなり」。CMはサントリーの中国緑茶のナレーション、タウンページの漫画家役など。現在、唐十郎が初の実母を題材に、梁山泊に書き下ろした「風のほこり」を演出、11月21日〜23日の名古屋、27日〜29日の大阪公演を控えている。
舞台で発信「在日の思い」

「私たちの鉱脈は無尽蔵」
言霊として残したい

 劇団「新宿梁山泊」が今年で創立20周年を迎えた。アングラ演劇を現代日本の文化として世界に発信したいと立ち上げたのは、在日2世の金守珍さん(52)ら。日本の芸能界に本格デビューする前の椎名桔平や金久美子(故人)を育てたことでも知られる。20年の時を経て、「やっと自分の方向性が定まってきた」と語る金さんに今の思いを聞いた。(インタビュー構成)

ルーマニアやソウル公演も

 多くの2世同様、日本という国で在日としてどう生きていくか、日々、悶々としていた。朝鮮学校に通っていた高校時代には、日本の不良学生相手に映画『パッチギ』を地でいくような衝突を繰り返したこともある。卒業後、紆余曲折を経ながらたどり着いたのが演劇の道だった。

 唐十郎が主宰した状況劇場から独立し、在日の演劇人を中心に87年に新宿梁山泊を旗揚げした。アングラ演劇の継承にこだわりをもち、音楽や舞踊を大胆に取り入れた舞台は、会場と一体化し、常にエネルギーがあふれている。

 活動の場は日本に限らない。今年5月には「YEBI大王」をひっさげて、初のルーマニア・シビウ公演を果たし、6月にはソウルと果川でも公演した。

 話はさかのぼるが、この作品「YEBI大王」との出会いも一つのドラマのようだ。89年、まだ日本の大衆文化上陸が禁じられていた韓国で、小劇場としては初の韓国3都市公演「千年の孤独」を全編日本語で行った。懸命にサポートしたのが作家の洪元基だった。

自問自答の末大きな転機が

 その後、「YEBI大王」は02年ソウル公演芸術祭で作品賞・戯曲賞を受賞。作家から「ぜひ新宿梁山泊に演じてほしい」という嬉しい申し出も飛び込んだ。

 しかし、「どのような演劇で何を発信していくか、確固たるものが当時はなかった。確かに、日本の演劇を韓国に持ち込んで評価も受けてきたが、在日として何を伝えることができたのか」。自問自答が続いていた。

 一つの大きな転機が、韓国伝統音楽をベースにさまざまな音の融合をめざす在日のパーカッショングループ、SANTAを率いる閔栄治の音楽を起用することだったという。

 閔がまだ中学生で「グループ黎明」のメンバーとしてワンコリアフェスティバルに出演していた頃から、同フェスティバルの演出を手がけた金さんの目に閔の抜群のテクニックは留まっていた。

 その後、閔が高校から韓国に留学し、孤立無援のなか、国立国楽院で武者修行してきたことや音楽にかける並々ならぬ情熱も承知済みだった。「迷うことなく『YEBI大王』の音楽を託した」

 06年8月、閔の音楽をフィーチャーした「YEBI大王」は、韓国・居昌演劇祭を皮切りに東京、大阪でも大きな拍手で迎えられた。また、07年韓国公演を期して、サウンドトラック版も発売された。この中には、閔の音とギネスブック公認のパンソリ完唱最年少記録保持者の李ジャラムのアリランなどを収めている。

育ててくれたアボジへ感謝

 「この日本で僕らを堂々たる韓国人として育ててくれたアボジたちへのお礼と同時に、本国に対して在日の思いを伝えることができたのではないかと思う」

 今年9月には創立20周年記念企画の唐十郎作「唐版・風の又三郎」を演出、役者としても出演した。東京・井の頭公園の一角にテントを立てた野外公演は、連日盛況のうちに幕を閉じた。俎上に上がったのは、軍国主義の愚かさであり、右傾化の旗を振るこの国の首相であった。ブラックユーモアの炸裂に、観衆は笑い、やがて戦争がもたらす狂気を嫌悪した。

 「演劇というのは一つの祭礼だから、死者とともに過ごしながら、生きている人間に何かを伝えていく。音楽にも踊りにも演劇の言葉にも言霊として残っていく。在日の土壌にはまだまだすごい鉱脈が眠っている。演劇、音楽いろいろな分野をつなぐいい『通訳』を育てることがぼくらの使命だ」と、熱い思いをほとばしる言葉で結んだ。

(2007.11.14 民団新聞)
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