毎年高麗神社で繰り広げられる民団埼玉「10月マダン」の農楽

　韓国の伝統芸能「農楽」が国連教育科学文化機関（ユネスコ）の無形文化遺産に登録されることが事実上確定した。文化財庁の10月29日発表によると、韓国政府が登録を申請した農楽がユネスコ無形文化遺産保護条約政府間委員会傘下の補助機関から満場一致で「登録勧告」の判定を受けたと説明している。

爽快に一体感醸す
韓国17件目

　補助機関で「登録勧告」を受けた場合、通常、同年開催されるユネスコ政府間委員会でそのまま登録が認められるため、韓国17番目の無形文化遺産となる見通しだ。

　ユネスコは同日のホームページを通じて審査補助機構の評価を公開。農楽の開放性・融通性・適応性・伝播性・再創造性などを幅広く言及しながら、「活力にあふれ創意的な農楽は1年を通じてさまざまな形態や目的で多くのイベント会場で公演が行われていて、公演者と参加者にアイデンティティを提供する遺産」とその登録勧告の理由を説明した。

北韓内の民謡「アリラン」も

　また、北韓が申請した民謡「アリラン」も今回の審査で登録勧告の判定を受けた。

　2年前の第7回政府間委員会で、韓国が申請した「アリラン　韓国の抒情詩的な民謡」がすでに登録されているが、北韓が申請したアリランは平壌市や平安南道、黄海南道、江原道（北韓統治区域）、咸鏡北道、慈江道のアリランが含まれている。

　最終的な登録は、今月24日からパリのユネスコ本部で開催される第9回政府間委員会で正式決定する。日本が申請した「和紙　日本の手漉和紙技術」も登録勧告を受けた。

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在日同胞とも縁深く
イベント盛り上げに必須

　農楽は文字通り、農民・農村の音楽を意味し、春には豊作を祈願、夏の収穫期には農作業を癒すために、秋には収穫を祝う祭事の中で伝えられてきた。「プンムルノリ（風物遊戯）」「メグ」などと地域によって様々な呼称がつけられている。

　チャンゴをメーンにチン、ケンガリ、プク、ソゴなどの打楽器にテピョンソといった管楽器によるノリの良い演奏は奏者と聴者が一体となれる。その楽器と衣装は韓国のシンボルにもなっている。

　在日同胞社会でも古くから親しまれ愛され続けてきた。爽快な演奏は花見や野遊会をはじめ、運動会、結婚式やスポーツの応援などでも場を盛り上げ、イベントには欠かせない民俗音楽だ。

　日本生まれの在日同胞たちで構成する韓国青年会では80年代中盤に民族文化を継承することを目的に、農楽をアレンジした「サムルノリ」を全国の青年に伝える「文化キャラバン隊」を展開し、各地に農楽のサークルを結成させた。

　また、南北単一チームが実現した91年の千葉世界卓球大会では民団の在日韓国青年会と朝総連傘下の朝鮮青年同盟が共同応援団を構成したが、農楽のパフォーマンスで「コリア」を応援した。

　青年会時代から農楽をはじめて30年余りになる民団神奈川本部の李相哲総務部長は、現在も民団神奈川で農楽のワークショップを続けている。

　「農楽は子どもからお年寄りまでが楽しんでもらえる大衆芸能。そのリズミカルさに魅了され、最近は日本の方も多く参加している。世界遺産に記録されることでさらに愛好家が増えていくのではないか」と期待を込めた。

　韓国の社団法人民族音楽院・日本支局代表として、日本でサムルノリなどの伝統芸能活動を展開している李昌燮さんは、「年月をかけて、継承・発展されてきた文化は、人間が生きてきた証拠でもあり、この財産を今後もしっかり発展させたい」と話す。

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世界遺産と記憶遺産

　ユネスコの世界遺産は、建築物など、有形財保護と継承を目的とし文化遺産・自然遺産・複合遺産の3つに分類される。これに対し無形文化遺産は民族文化財、フォークロア、口承伝統などを保護対象としている。

　現在、韓国には世界遺産として10の文化遺産と1つの自然遺産が登録されている。また、無形文化遺産は16件が登録されている。

　韓国の文化遺産には素朴でありながら穏やかで独特の情緒が盛り込まれており、文化財の形成時期も古代から朝鮮朝時代までと多様な時期にわたっている。華やかでこざっぱりとした芸術性と宮殿や寺院などに見られる科学性など多様な価値を持っている。また、優れた自然景観で独特の地形や生態的価値を有する済州島が唯一、自然遺産として登録されている。

　ユネスコでは世界遺産の他に、危機に瀕した書物や文書などの歴史的記録遺産を最新のデジタル技術を駆使して保全し、研究者や一般人に広く公開することを目的とした「世界記憶遺産」もあり、韓国では「朝鮮王朝実録」「訓民正音解例本」「東医宝鑑」など9件が記録されている。

（2014.11.5　民団新聞）