地方本部 HP 記事検索
特集 | 社会・地域 | 同胞生活 | 本国関係 | スポーツ | 韓国エンタメ | 文化・芸能 | 生活相談Q&A | 本部・支部
Home > ニュース > 韓国ニュース
<寄稿>北韓の自滅早める核・ミサイル…直選中央委員 金一男
朴槿惠次期大統領の特使として訪中した金武星前国会議員は23日、北京の人民大会堂で習近平総書記(右)と会い、北韓の核・ミサイル開発を容認しないことを確認した

■□
避け続ける「改革開放」
寄生体質いつまで…投資・援助では打開不能

ホゴにされた二つの「宣言」

 「6・15宣言」の前文には「互いの理解を増進させて南北関係を発展させ、平和統一を実現する」とあり、末尾には「金大中大統領は金正日国防委員長がソウルを早急に訪問するよう丁重に招請し、金正日国防委員長は今後、適切な時期にソウルを訪問することとした」とあった。

 続く「10・4宣言」はその第3項で、「南と北は互いに敵対視せず、軍事的緊張を緩和し、紛争解決を対話と交渉を通じて解決していく」としている。

 しかし、金委員長は金大中大統領との約束にもかかわらず、ソウルを訪問しなかった。また、平壌政権は06年、6月の弾道ミサイル発射につづいて10月には核実験まで強行した。南北間の信義に背いただけではない。03年から始まった自らの核開発をめぐる6者会談において核廃棄を約束した共同声明(05年)にも反した。

 あげくに、国連安保理の制裁対象となったまま6者会談から離脱した。すでに一定の支援を受けたうえでの背信であった。6者会談は08年12月から協議そのものを続けることができなくなっている。

韓国の善意も軍事に消えた

 その後、平壌政権は李明博大統領を逆賊よばわりして口汚く攻撃し、09年に再び核実験を強行、10年には天安艦撃沈、続いて延坪島砲撃という軍事攻撃を韓国に対して行い、多くの人命を犠牲にした。これらの一連の行動は、「相互理解の増進」「対話による紛争解決」という二つの「宣言」の基本精神を完全に踏みにじるものであった。

 98年から07年の10年間に、韓国側の一方的な善意によって提供された70億ウォンとも推算される持続的な支援の結果がこうだったのである。平壌政権には「宣言の履行」を迫る資格はない。

 さらに、この間の食糧などの人道支援についても、軍事への転用が問題視されてきた。だが、北韓への有効な支援を考える場合、援助物資の軍事転用はむしろ枝葉の問題とも言える。ことの本質は平壌政権の経済政策そのものにあるからだ。

 平壌政権は80年代以来、「改革開放政策」に転換するようにとの中国からの再三の勧告を無視し続けた。国内経済の閉鎖的な旧制度を維持したまま、「土地の賃貸し」と「労賃のピンハネ」とによって、問題の根本的な解決を回避してきた。

 「土地の賃貸し」と「労賃のピンハネ」政策は、最近では北部国境地帯の黄金坪経済特区の開発がそのよい例である。土地を担保に開発費用を中国側企業に負担させ、経済特区の地代と労働力の提供によって収入を得ようとするものだ。

 しかし、北韓国内が閉鎖的なままで市場的発展性が全くなく、しかも核兵器開発や弾道ミサイルの発射によって制裁を受けている以上、中継貿易拠点としての黄金坪のメリットは期待されたほど大きいものにはならない。

 契約観念に欠ける平壌側の自分勝手な対応もあって中国側企業は及び腰になり、黄金坪の開発は停滞している。

■□
強権的統治のひずみ
民主化なしには限界…中国も重大な岐路に立つ

 中国では1958年の「大躍進」政策により、「集団所有・集団労働・統一的経営と分配」を掲げた「人民公社」が全国で組織された。

 だが、この政策は1000万人とも2000万人ともいわれる餓死者を出すなど、悲惨な結果を生んだ。人民公社は、66年から76年までの「文化大革命」のあと清算された。「改革開放」政策のもと、末端行政組織と農民が経営主体の「郷鎮企業」が全国に組織され、中国全土の市場経済化の推進役となった。

 80年代前半には農村部で「生産責任制(請負制)」政策が進められた。農家に一定割合で生産物の「自由処分」を認めて農業生産の停滞を克服しようとするものであった。その結果、農村で「自由市場」が発達し、中国の農業生産は飛躍的に高まった。

 一方、都市においても「個人商店」の営業が認められるようになり、市場機能が拡大したことで、全国的な商品流通の基盤が形成されていった。こうした一連の改革をもとに、沿岸部の「経済特区」をテコとしてその後の中国経済がたどった道筋のおおよそは、すでに知られているところである。

 現在は、沿岸地帯の発展を内陸部の開発と結合して国内格差を解消しようとする過程にある。そのため、現在40%レベルのサービス業比率を先進国並みに高めて、大規模な内需の振興を進めようとしている。

 こうした一連の改革は、中国における段階的な民主的政治改革が所定の成果を収めるなら、経済のさらに持続的な発展を可能にするであろう。

 強権的統治の継続は社会統合の費用を浪費する。中国当局の発表によれば、不正行為によって処分された官僚・党員は昨年だけでも16万人を超える。近年は、海外に逃亡した不正官吏の持ち出した金が年間数百億円に達するという。その裏には、公権力の横暴が許される閉鎖的な制度上の病弊がある。

 正常な「市場経済」の基本原則は「公正性」と「公開性」にある。「公正性」「公開性」の裏付けがない市場経済は必ず失敗に終わるであろうし、政治もまた然りである。近年報道され続けている中国内の不正や腐敗は、経済や政治における「公正性」「公開性」、とりわけ「公開性」を高める政治改革によって比較的容易に解消することができるはずだ。

何より肝心な公正・公開性

 「公開性」の拡張のみが経済行動や社会経営における「公正性」の担保たりうる。「公開性」の拡張は、さまざまな分野での社会統合の営みを安全かつ安価なものにする。

 今日まで、「改革開放」政策による一元的経済管理体系の市場主義的改編は、政治的にも中国社会内部の市民的空間を拡張し、中国社会の「公正性」「公開性」を高めるうえで決定的な役割を果たしてきた。しかしながら、政治的な反動によって「公正性」「公開性」の原則がゆがめられるなら、中国の「社会主義市場経済」はいずれ窒息し、経済成長も止まるであろう。

 多民族国家を経営する中国政府は、政治的反動化による市場経済の失敗という破滅的な混乱をとるか、漸進的な民主的政治改革によってさらなる経済発展を持続するのか、重大な岐路に立たされているといえる。

■□
民生部門の人材育たず
「先軍」の害毒 顕著に

 北韓では中国と同じく1958年に「全土の国有化」「全農業の集団化」の完了が宣言された。だが、こうした集団主義体制の効率性が発揮されたのは初めの数年間だけで、その後の農業生産は中国と同様に停滞の一歩をたどった。生産結果の虚偽報告が蔓延し、宣伝に利用される統計数字と実態との差はどんどん拡大していった。

 農業政策も改編につぐ改編を重ねて、当初は30人から50人ほどだった基礎生産単位も、事実上、家族単位に近いものに変わった。

 にもかかわらず、北韓の基礎生産単位には生産物に対する自由裁量権が保障されていない。北韓当局は、最近も不毛な試行錯誤を繰り返して、その失敗の犠牲を地方農民たちが払わされているのが現状である。

生産力を委縮ウリ社会主義

 北韓の「ウリ式社会主義」は、地方が本来的に持つ生産力を完全に委縮させた。そればかりか、地方における配給体制がすでに崩壊しているにもかかわらず、当局は地方農民からの一方的な搾取を続けている。

 理論的にも実際的にも、「ウリ式社会主義」なるものは「社会主義」ではない。それは、明確に「全体主義による軍事独裁」の権力である。そもそも「社会主義」には、指導者について「世襲」の概念など存在しない。「世襲の社会主義政権」なるものは、平壌政権の主張する「連邦制統一」が政権維持の口実に過ぎないのと同様、言葉の遊びに過ぎない。

 もし北韓への大規模支援を実行したとして、平壌政権が「ウリ式社会主義」と「先軍政治」に固執する条件下で、その支援が北同胞全体のためにどのような貢献をなすことが可能であろうか。

 地方の市場と地方住民の生活を抑圧し、「土地の賃貸し」と「労賃のピンハネ」で軍部と首都だけを維持する経済体系のもとで、投下された資金と物資はどのような経済的有効性を発揮できるであろうか。

 それは、北の軍事力を強化し、平壌という特殊な都市に住む人々の生活を一時的に豊かにすることはできても、北社会全体の拡大再生産の仕組みを強化し、北同胞全体の生活に希望を与えることにはならない。

 北韓では長い間の「個人崇拝」煽動によって、幹部層の質的劣化が極端に進行した。自分の頭で考え行動しようとする有能な人々が排除され、上からの指示に無条件追従して自分だけの安全を図ろうとする者たちだけが残されてしまったからだ。

 しかも、「先軍政治」の10余年の間に軍部と官僚機構が部門ごとに利権集団化してしまい、事態を複雑なものにしている。

 そのうえ、人事配置の方向も歪んでしまっている。少しでも能力のある者は軍事や治安の分野に配置されており、住民の生活に密着した民生部門の働き手や生産的活動の現場には何の権限も与えられていないのが実情である。こうした事情もまた、北に対する外からの支援の有効性を失わせている。

 もともと北韓は、「自主」の看板とは裏腹に経済的に自立したことが一度もない。長い間、中国と旧ソ連からの援助によって支えられ、近年は国際機構や韓国からの人道支援によって民生費用をまかなってきた。中国からの対北支援は過去60年間で、300億ウォンに達するという統計もある。昨年9月、ロシアはソ連時代からの有償支援110億ウォンをほぼ帳消しにした。

 一昨年末から昨年初めにかけては、中国から大量の緊急支援も行われた。にもかかわらず、北の経済には依然として改善の兆しがない。もちろん、全国への2年分の配給を可能にするだけの資金を、2度の長距離弾道ミサイルの実験に浪費してしまう突飛な行動も問題ではある。だが、それも含めて問題はもっと深い。基本の政策を空回りさせる北韓の体制と体質そのものに根ざしている証だ。

韓国の関与も幅は限られて

 朴槿惠次期大統領は、対北政策について「太陽政策でも相互主義でもない、第三の道を模索する」としている。だが、事柄は憐憫や善意の問題ではない。ひとつの権力の態様とその行動体系の問題であって、権力力学の流れにおいてしか解法を求めることのできない問題である。

 現在、この問題を解くカギはあくまでも北韓の体制と政策にあり、ボールは金ファミリーと軍・党幹部集団による寡頭支配の平壌政権の手にある。彼らの基本政策が変わらない限り、韓国側の関与の幅は限られる。対北支援を妨げているもの、それは平壌政権の体質そのものだからだ。

■□
朴新体制へ悪質な挑戦

 国連安全保障理事会は22日、昨年12月に事実上の長距離弾道ミサイルを発射した北韓に対し、安保理決議違反であるとして非難、新たな制裁措置を盛り込むとともに、「再びミサイル発射や核実験があれば、安保理は重大な行動をとる」と警告する決議案を全会一致で採択した。

 しかし、北韓の国防委員会は24日、米国を標的にした「高い水準の核実験」を行うと公言し、韓国に対しても25日、祖国平和統一委員会の声明で「物理的対応措置をとる」と脅した。さらに27日の朝鮮中央通信は、金正恩第1書記が外交安保関係者の協議会で「国家的重大措置を講じる断固たる決心」を表明したと報道。国際社会に挑戦する姿勢をいっそう露骨にした。

 12月のミサイル発射は韓国の第18代大統領選挙の1週間前だった。そこから、3回目の核実験を新大統領就任式の2月25日以前にも実施する可能性が取り沙汰されている。朴槿惠次期大統領は選挙公約で、これまでの対北政策が宥和主義的であれ、相互主義的であれ意味ある変化を誘導できなかったと指摘し、南と北、北韓と国際社会の約束および国際基準を守る韓半島の信頼プロセスを通じて、持続可能な平和定着と統一基盤の造成を図ると表明してきた。

 平壌政権は朴次期政府や2期目のオバマ米政権の出方を見極めながら、有利な条件で対話に臨もうとしているとの観測もある。だが、ミサイル発射に続いて核実験を強行すれば、韓米両国の対北政策の選択肢は出だしから大幅に制約されよう。言い換えれば、朴次期政府の対北アプローチに対する悪質な挑戦である。

 平壌政権はこの間、自らはもちろん韓国内外の従北勢力を動員して、韓国側に2000年の「6・15宣言」、2007年の「10・4宣言」を履行せよと繰り返し迫ってきた。合わせて、この「約束不履行」が北韓に軍事挑発を余儀なくさせている、とする世論を背後であおってきた。

 しかし、こうした態度はどちらが「宣言」の精神にそむいて約束をたがえたのか、覆い隠そうとするものだ。そればかりか、北韓が援助したくともできない体制であることから目をそらそうとするものでしかない。南北関係を改善し、持続させるためにもこれらの事実は、きちんと押さえておくべきである。

 「何が対北支援を阻んでいるのか」を中心テーマに、直選中央委員の金一男氏が寄稿した。

 本稿では北韓独裁政権を「平壌政権」と性格づけた。北韓の国としての運営システムは平壌を除いて崩壊しており、平壌に住む軍幹部や党幹部など特権的な人々とその家族のためだけの権力に過ぎないからだ。

(2013.1.30 民団新聞)
 

最も多く読まれているニュース
差別禁止条例制定をめざす…在日...
 在日韓国人法曹フォーラム(李宇海会長)は7日、都内のホテルで第6回定時会員総会を開いた。会員21人の出席で成立。17年度の報告があ...
偏見と蔑視に抗って…高麗博物館...
 韓日交流史をテーマとする高麗博物館(東京・新宿区大久保)で企画展「在日韓国・朝鮮人の戦後」が始まった。厳しい偏見と蔑視に負けず、今...
韓商連統合2年、安定軌道に…新...
金光一氏は名誉会長に 一般社団法人在日韓国商工会議所(金光一会長)の第56期定期総会が13日、都内で開かれた。定数156人全員(委任...
その他の韓国ニュース
韓国伝統の4山寺…世界文化...
3寺は見送り 韓国が世界文化遺産への登録を申請していた「韓国の伝統山寺」7寺について、登録の可否を事前審査する国連教育科学文化機...
<訪ねてみたい韓国の駅29...
開業100年、世界遺産の玄関 歴史ある古都の玄関には、それにふさわしい風格が備わる。韓国の古都と言えば、新羅の都、慶州だ。その玄...
◆スーパージュニア 中南米...
 4月20日から27日にかけてアルゼンチン、ペルー、チリ、メキシコで行われた韓国の人気ボーイズグループ、SUPER JUNIOR...

MINDAN All Rights Reserved.