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<生活>心の悩みともにして 埼玉・善行寺「ママサークル」
吉井誠光住職
母子一緒に韓国と日本の料理をつくって
地域で国籍超えた子育て支援

 「子どもがいうことを聞かない」「育てるのがつらい」「可愛く思えない」。核家族の家庭で、子育てに不安感や孤独感を募らせている母親たちは多い。悩みを誰にも相談できず、ストレスのはけ口を子どもに求めるケースは後を絶たない。こういった母親たちの育児不安や心配を、地域の力で支えていこうという取り組みが行われている。母親たちが集う善行寺(浄土真宗本願寺派、西本願寺・川口布教所、埼玉県川口市)の吉井誠光(じょうこう)住職と、昨年10月から川崎市ふれあい館でスタートした子育て支援事業「オープンハーツ」の相談員、李禮子さんに聞いた。

■□
人間関係 育む場
「何でも聞ける」 笑顔戻ったオモニも

親子そろって調理しなごむ

 「みんな、これから何を作るのかな」。取材当日、善行寺で月数回、手習い(習字)や英語など、母親たちが企画・運営する「子育てママサークル・マミコミ(マミーコミュニティー)」の参加者と子どもたちが集まり、日本の季節行事の一つであるひな祭りの催しが開かれた。

 吉井誠光住職のかけ声に全員、注目。この日は日本の巻きずしと、韓国のキムパブを全員で作ることになった。

 キムパブの作り方指導を行ったのは、約1年前からサークルに参加している来日11年目の金春心さんだ。金さんも子育てに悩み、言葉の壁に悩んできた。でもここでは「何でも聞けるし、教えてもらえる」。心を打ち明けてから笑顔が増えた。

 金さん以外にも在米韓国人、中国、米国、ギリシャの人たちがいる。吉井住職は、日本の文化もそうだが、外国の文化を知ることは大事だと考えてきた。

 吉井住職夫人の瑞穂坊守が、具材の卵焼きやキュウリ、カマボコなどを差しながら「みんなの体が大きくなるために、いろいろな命が助けてくれますね」と子どもたちに優しく語りかける。子どもたちは食べ物を通して、しらずしらずのうちに命の大切さを学び、親子揃って料理を完成させていく。

 「私がいつも言うのは、命は全て等しいということです。国籍や人種がどうであれ、同じ命なんです。もちろん文化や言葉は違うけれど、そういったものをお互いに認めあいたい」と吉井住職は話す。

得意なものを役立てて充実

 子育てママサークル・マミコミは、2006年6月に開設された善行寺で、初めて作られたグループだ。イタリアンの精進料理、フラワーアレンジメントなど多彩なクラスがあり、指導はこれらを得意とする母親たちが担当する。現在、定期、不定期的に開催しているのは約8クラスになる。

 吉井住職は、「人間にはそれぞれが持っているバックグラウンドがあります。文字を書くのが得意な人、料理の得意な人。私は何もできないではなくて、自分はこういうことができるということを評価して活躍してもらう。誰かに必要と感じることは重要なこと」だと、サークル開催に至った経緯を語ってくれた。

 99年11月から04年9月まで5年間、米カリフォルニア州の本願寺別院に海外布教僧侶として赴任した。寺や教会は地域に根付いた身近な存在だった。人には打ち明けられない悩みや苦しみを抱えた人たちが、相談に訪れていた。

 そこでは子育ての悩み、子どもの自殺や勉強がうまくいかないなど、さまざまな悩みがあった。生活に密着し、お互いが悩みを考えあえる場が、本来の寺や教会だったのではないか。このときの体験が帰国後、悩みを抱える母親たちとつながることになった。

 善行寺のある地域は新興住宅地。知らない者同士が、一つの目的で集まってくる場所がなかった。吉井住職自身、5歳と4歳の子どもを持つ父親だ。育児の大変さは知っていた。もしかしたら、この地で集まれる場を求めている人がいるかもしれない。「そういう方々がこの寺に集まり、ほかの人はこういうことで悩んでいる、自分だけが苦しいのではないということを共有する場」にしたかった。

 善行寺の真向かいに公園がある。そこにはトイレが設置されていないために、子どもが困っていると聞いていた。

 「トイレを使って下さい」と声かけをした。最初は警戒された。入信を求めたり、宗教的な強制は一切しない。ゆっくり時間をかけて人間関係を育んだ。お茶飲みから始まった集まりは月1回、誕生日会を皆で祝うまでになった。

聞いてあげるだけでいい

 回数を重ねるごとに母親たちの口から、子育ての不安や夫の仕事の不安などが少しずつ出るようになった。最初、笑い顔の少なかった母親たちも、笑顔を見せるようになった。

 「悩みの深さとか、苦しみの深さは人によって違うんです。勝手に判断してああだ、こうだと言うとすれ違ってしまう。まずは聞いてあげるだけでいい。そういう場所があると思えることが大事」だと吉井住職は話す。そして好きな言葉があると教えてくれた。

子がいてくれ幸せに気づき

 「シェアは共有するという意味と、心をともにすることも含まれていると思います。子育ての悩みや不安をともにする、そしてそれをともに出し合う。あるとき、子どもが生まれたときの話をしようとなった。生まれてからの悩みとか、初めての子育ては特に悩みます。そういうのを思い出してみな、分かるから涙を流すんです。まさにこれが心のシェアです」

 「苦しいこともあったけれど、子どもがいてくれて良かったと思える、それを改めて気づかせてくれる場、それが子育てママサークル・マミコミの大きな意味です」

(2009.2.25 民団新聞)
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