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<寄稿>「阪神淡路大震災から12年」に思う
あの日に見た助け合い・地震発生から2度目の日曜日となった95年1月29日、旧正月を控えたこともあり、民団西神戸支部の前では大がかりな炊き出しが行われた
吉成 繁幸(フリー・ジャーナリスト)

多文化共生こそ防災の基本


 阪神淡路大震災からきょう17日で、ちょうど12年になった。犠牲者に深甚なる哀悼の意を表すとともに、いつ襲ってくるか分からない大災害に賢明に対処するためにも、多文化共生社会の実現を早めるべく改めて決意を固めたいものである。というのも、東京都が阪神淡路大震災の発生日前日にあたる16日、定住外国人を対象にした防災訓練を初めて実施したとの報に接し、複雑な思いにとらわれざるを得ないからだ。

外国人問題 敵視が危うさ増幅
対処能力は日常が育む

都が初めての対外国人訓練

 都は大災害が発生した場合、「東京都外国人災害時情報センター」を設置し、被災した外国人が必要とする情報の収集や区市町村の情報提供を支援するとともに、区市町村からの要請に応じて防災(語学)ボランティアを避難所や病院などに派遣する。

 今回はそのマニュアルに即して、ボランティアの参集や外国人との相談対応などの訓練を行った。

 阪神淡路大震災による犠牲者は、被災後の疾病や自殺など関連死を含めて6433人に達した。このうち、外国籍は255人。韓国・朝鮮が148人、中国が48人、ブラジル8人と続く。国籍不明者も40人いた。韓国・朝鮮人が集住する神戸市長田区が激甚被災地であったにせよ、外国人の割合はきわめて高い。

 また、阪神淡路大震災はもちろん、2004年10月に発生した新潟中越地震の際も、外国人が情報から孤立して不安に陥り、言語や生活習慣の違いから日本人との摩擦が生じた。こまごましたトラブルの集積が、大問題に発展する可能性が指摘されてきたところだ。

 阪神淡路級の大地震が東京で発生すれば、被害と混乱はその比ではない。他の自治体に先んじるべき都が、ようやく重い腰をあげたことは評価しつつも、都の外国人に対する基本姿勢を見るにつけ、付け焼刃に過ぎないのではないか、との疑念はやはり残る。石原慎太郎都知事が2000年4月、陸上自衛隊第1師団を前に行った発言を忘れるわけにはいかないのだ。

 「不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している。もし大きな災害が起こった時には大きな騒擾事件すら想定される。

 こういうものに対処するためには、みなさんに出動願って、災害の救助だけではなしに、治安の維持も大きな目標として遂行していただきたい」。

 こう訴えた石原知事は実際、同年9月3日、「防災訓練」の名のもとに銀座に装甲車を走らせ、東京上空に軍用ヘリコプターを舞わせ、東京湾に艦艇を浮かべさせた。

 「三国人」呼ばわりはもとより、外国人が騒擾を起こすと決めつけ、治安対象にするこの物騒な言動は、謝罪も撤回もされていない。外国人敵視発言を繰り返して平然とする首長のもとでの、外国人支援訓練がどれほどの効果をもつのか。

確実な対策は日常性の中に

 外国人の不安や日本人との摩擦を取り除く使命をもつボランティアも、ほとんどが被災者になる。大震災発生直後のもっとも肝心な数日間、充分な活動ができる保障はなく、拠点への参集すら危ういと見なければならない。

 日本人・外国人を問わず、最も基本的かつ確実な防災対策は、日常性のなかにこそある。これはすでに、多くの自治体が達した結論でもある。埼玉県・市町村国際政策推進会議多文化共生研究会は、昨年1月にまとめた「在住外国人に係る震災対策について」の報告書で、こう指摘した。

 「多文化共生社会とは、国籍や文化の違いを超えて、お互いを理解し、尊重しながら『共に生きる』社会であり、地域で外国人が孤立化することのない社会であると考える。まさに、多文化社会の実現こそが、最も有効な防災対策といえるのではないだろうか」。

 阪神淡路大震災の外国人犠牲者数は、地震など自然災害は人々を国籍や民族に関係なく襲いかかるという、当たり前の事実をいやというほど示した。家族や身近な人を奪い去り、住居や職場を瓦礫にさせた自然の猛威の前に、ただただ放心し、その後もながく喪失感にさいなまれた被災者。ここにも日本人と外国人の違いはなかった。

 しかし、被災という受動的な側面ばかりでなく、救援・復興という能動的な側面でも、国籍と民族を超えて立ち向かった事実を思い起こしたい。民団をはじめとする在日諸団体も、炊き出しや救護活動に率先した。各地の韓国会館は、韓国の政府・国民から民団に寄せられた救援物資の集積・配布センターとなり、ボランティア活動のサポート拠点にもなった。

 当時、韓信協の最大手組合であった関西興銀は震災直後、当面費用がなくて困っている被災者に国籍を問わず、無担保・返済期限なしで5万円、電話用にと1000円分の小銭を貸し出した。利用者は6000人を超した。並みいる大手金融機関も、これだけ大胆な活動はしていない。

 外国人の心意気が、被災者をどれほど勇気づけたことか。危機を前に発揮された助け合い精神は、「この地で共に生きてきたし、これからも共に生きる」という無意識の意識に支えられていたはずだ。外国人も日本人もお互いを理解・尊重し、大災害に対する危機意識を同じくして、地震国・日本での生活の仕方を不断に確認する作業が欠かせないのである。

(2007.1.17 民団新聞)
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