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「多文化共生」へ在日パワー結集を(04.8.15)
人権確立の象徴となった80年代の外国人登録法改正運動
在日は日本をどう変えたか

 日本社会に埋没しても不思議のなかった在日同胞コミュニティーは、しぶとく生き残っただけではない。「第三の開国」へ日本社会を変容させるファクターとして、むしろその存在価値を浮上させてきた。「在日文化」はない―こう言われながらもどっこい、在日の生き方そのものが文化になったのだ。ともに解放を迎えた原点に帰り、光復節60周年式典で民団と総連の同胞が肩を組めば、それはより力強いものとなる。この間の民団と総連の交流実績は、それが可能であることを示している。いくつもの歴史的な節目を迎える来年には、在日パワーが融合するシナジー効果を見せたいものだ。

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「第三の開国」へ導き役
アジアの視点注入…日本の長期展望と共振

 日本では「第三の開国」を求める声が高まりつつある。「第一の開国」はいうまでもなく幕末・明治期に、欧米列強に追従してアジアを侵略する道を固めるものだった。「第二の開国」は第二次世界大戦の敗北によって、皇国史観に基づく富国強兵の呪縛から解き放たれたことを指す。しかし、旧敵国のなかでも欧米諸国との協調を強めるだけで、蹂躙したアジアには背を向けたままだった。

地方参政権に支持の声加速

 「第三の開国」は少子高齢化時代に備え、大量の外国人や移民を受け入れようとするものであり、アジア諸国と初めて真正面から向き合おうとするものだ。背景には国際社会がドラスティックに変貌し、日本のこれまでの成功パターンが通用しなくなるとの危機意識がある。これをもっとも鋭敏に代弁しているのは経済界だ。

 日本経団連はこの間、「企業経営においては多様な人材を活かす戦略であるダイバーシティ・マネージメントが必須のものになりつつある。性別・年齢・国籍など多様な属性や価値・発想を取り入れることで、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長と従業員の自己実現につなげる異文化シナジーを生み出すべきだ」(03年11月=外国人受け入れ問題中間報告)と強調してきた。

 国の在り方が「日本株式会社」と称され、「経済一流、政治二流」のフレーズがなお健在な日本で、日本経団連のこうした意向の持つ意味は重い。日本経団連は同じ報告で、外国人にきめ細かい公共サービスを提供するために、「地方自治への参加」に道を開くべきだとも提言している。

 「外国人の地方自治への参加も重要な問題だ。国会には、永住外国人地方参政権法案が2000年から提出されているが、継続審議となっている。地方自治体では、1990年代に入り外国人による有識者会議を発足させている。なかでも川崎市の『外国人市民代表者会議』は、条例で定められた唯一の例であるが、事実上の市政調査権も有し、代表者会議の提言が市政、条例制定に活かされている。各地の地方自治体は、こうした先進事項を参考として、外国人の声を地方行政に反映するよう取り組む必要がある」

 永住外国人に地方参政権を付与すべきだとする意見書の採択は、7月末現在で全地方自治体の46・03%に当たる1520件に増え、人口比率にすれば75%強を占める地域に及んでいる。永住外国人に住民投票の道を開く条例の制定も急増し、同じく7月末現在で135の自治体を数えるまでになった。

多文化共生は日本の将来像

 日本経団連の提言では、地方参政権問題に深く立ち入った言及を微妙に避けている。これは、「第三の開国」とはいうものの、新しい国の在り方に国民的な合意がほとんどない状態では、不当な反発を呼びかねないとの配慮によるものだろう。

 日本にとって「第三の開国」は、「多民族国家」とはいかないまでも、「多民族型国家」という未体験ゾーンへの突入を意味し、自らのアイデンティティーに過敏にならざるをえないのだ。何をもって日本人とし、日本国民とするのか、この根源的な問いかけにつながることへの逡巡がある。国内外の実勢に対応する新たな統合システムをいかに整えるのか、単一民族国家という幻想に縛られてきた日本人にとって、自意識の危機と映るようである。

 アジア諸国との関係を歴史的に正そうとする研究活動を「自虐史観」だと糾弾し、「新しい歴史教科書をつくる会」の手になる問題の多い歴史教科書を普及させようとする動きをはじめ、まるで先祖帰りしたかのように、アジア侵略や植民地支配を正当化するような政治家の発言が増えてきた。これも、歪んだ自意識からくるアイデンティティー危機意識のなせる業だ。地方参政権問題もそれが壁になっている。

 しかし、同胞たちの粘り強い働きかけが地方自治体を動かし、各自治体が「区域内に住所を有する者」の一員として、外国人の声を行政に反映させようとする流れは加速しているといっていい。日本経団連の提言は、こうした流れを的確にとらえたものであり、在日同胞の長期にわたる「多文化共生社会」の実現運動が、日本経済の長期ビジョンと共鳴し合うようになった証といえる。

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「厄介者」から「兄弟」へ
世論も180度の転換…「民族の誇り」無視できず

 それにしても「隔世の感あり」ではないか。

 戦後日本の基礎を固めたといわれる吉田茂氏は首相当時、マッカーサー連合軍最高司令官にあてた書簡で、在日同胞を厄介者、穀潰しだと散々にこき下ろしたものだ。

在日の存在を恐れた日本人

 吉田首相は書簡で、「朝鮮人居住者の問題に関しては、早急に解決をはからなければなりません。彼らは、総数100万人近く、その約半数は不法入国であります。私としては、これらすべての朝鮮人がその母国たる半島に帰還するよう期待するものであります」と述べ、日本の食糧事情から余分な人口の維持は不可能であり、大多数の朝鮮人は日本の経済復興にまったく貢献しないうえ、犯罪分子が大きな割合を占めている、と指摘している。

 このような見方は政府高官と庶民の別なく、当時の日本社会の通念であったし、その後の対同胞政策の基調もこれで一貫していた。日本人の心のなかから「植民地出身の劣等民族」に対する差別意識はまだ消えず、逆に敗戦と植民地の消滅によって恐れと過剰な警戒心が強まり、そのような時代的な気分から「三国人」という言葉も広がった。治安当局の文書だけではなく、民主主義的な論調を急速に強めたメディアでも「三国人」という言葉が踊っていたものである。

 刷り込まれた見方考え方はそう簡単には変わらない。しかし、劇的ともいえるほどの変化が起きたのである。

 例えば、地方参政権問題で好意的な立場を示してきた朝日新聞や毎日新聞を見てみよう。65年6月に妥結した韓日会談では、在日同胞の法的地位が重要な懸案であった。この問題に朝日新聞は同年3月31日付の社説でこう書いている。

 「子孫の代まで永住権を保障され、しかも広範囲な内国民待遇を確保するとなると、将来この狭い国土の中に、異様な、そして解決困難な少数民族問題を抱え込むことになりはしまいか。::韓国併合といった歴史も、これから二十年、三十年の先を考えた場合、遠い過去の一事実以上のものでなくなるだろう。独立国家の国民である韓国人が、なにゆえに日本国内で特別扱いされるのか、その説明にそれこそ苦労しなければならない時代が来るのではないだろうか。財産請求権のように、いわば過去の清算に属する事柄と、在日韓国人の法的地位のように、それこそ子々孫々につながるものとは性質が違うのである」

 これも「朝日」に限らない時代的な空気ではあった。65年に取り決められた法的地位協定では、「協定3世」の処遇は棚上げされ、91年1月16日までに再協議することになっていたのだ。在日同胞社会の中軸世代になることが明らかな「協定3世」の法的地位は定まっておらず、これは「91年問題」と呼ばれた。

在日2世らの粘り強い提起

 「朝日」は90年にこの問題で、「国際化の足元を固めよう」と題した社説を掲げた。「二十五年前の日韓法的地位協定交渉のとき、国内では『外国人であるのに特権的地位を与えるのは不合理』と、慎重論が有力だった。::民族の誇りを持ち続ける外国人に、国籍は違ってもこの国にともに生きる『市民』として安定した暮らしを保障することは、国際化をめざす日本の足元を確かなものにする一歩のはずである」と、ほとんど180度の転換を見せた。

 毎日新聞も同じである。65年当時は「『法的地位』で無理な要求」とまで述べていたのに、90年4月26日の社説では「『在日』には懐の深い対応を」とのタイトルで、『(在日に)とくに理不尽な要求はない。基本的には、在日韓国・朝鮮人は『同じ土地に住む兄弟』と考えるべきである」とまで、やはり大きく変貌した。

 65年から90年までの25年間に、何があったのか。4半世紀といえば、世代が一つ入れ替わる期間である。在日同胞社会は2世が主体になるにつれ、スポーツ・芸能はもちろんグレードの高い専門職やビジネス界への進出も目覚しいものがあった。日本人にとって、同じ土俵で生きる在日の姿に違和感が薄まったことが変化の前提にある。

 「朝日」の社説を例にキーワードを取り出せば、「国際化」がその一つになるだろう。バブル景気が頂点に達する89年以前から、金融面を中心に日本の経済構造の国際化が深刻なテーマになっており、社会構造全体の改革が重要視され始めていた。しかしより重要なキーワードは、「民族の誇りを持ち続ける」にある。この間、象徴的な出来事がいくつもあった。

 74年6月、「日立就職差別裁判」で横浜地裁は、「在日韓国・朝鮮人であることを解雇・不採用の決定的理由としてはならない」と初めて明快に断じ、日本企業は事実上、「国籍による」差別はできなくなった。77年9月には最高裁判所裁判官会議で、韓国籍も司法修習生として採用することを決定、在日同胞の弁護士が陸続と誕生したことはよく知られている。また92年5月、10余年にわたる大規模な運動の結果、外国人登録法が改正され、在日韓国・朝鮮人永住者の指紋押捺制度が撤廃されたことも金字塔に数えられよう。

 いずれも、普通の在日の普通に生きたいとの思いを地盤に、2世の果敢な問題提起から始まったものだ。在日に対する壁は国際社会に対する壁であり、外の世界から日本人を隔離する壁でもあった。70年代後半から民団が本格化させた行政差別撤廃運動を含む同胞の要求・指摘は、日本社会が国際化し、成熟するために、避けられない関門であることを日本人自身に気づかせたのである。

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そして生き方が文化に
「在日らしさ」テコに…文芸・TVに共感の輪

 すさまじい勢いで押し寄せる韓流は、日本社会にとって格別な歴史的意味を持っており、在日同胞社会にとっても感慨深いものだ。

 アジアでいち早く近代化を成し遂げた日本の旗印は、脱亜入欧であった。以来、日本のアジアに対する関心は基本的に、侵略政策や経済進出に必要な範囲を出ていない。アジアブームが時に盛り上がっても、植民地時代を懐かしむ域を出ず、国交回復前後の中国ブームのように、多分に政治的な要因が絡んだ。香港映画ブームの場合でも、米国でのブレイクに刺激されたものであった。

 国際的なブームは、欧米―日本―アジア諸国と伝播するのが当たり前の時代が続いた。韓流のように、韓国発信の文化がアジアの中国文化圏でまずフィーバーし、欧米を経由することなく日本に上陸したケースはない。エンターテイメントが中心の現在の韓流を新羅・百済・高句麗の古代3国による第一波、朝鮮通信使による第二波に次ぐ第三波と呼ぶのはおこがましいにせよ、格別な歴史的意味を持つのはそうした要素があるからだ。

韓流の下地は在日が造った

 韓流の下地をつくったのは、自分たちの食生活、民俗習慣、歌舞音曲などを失わず、それらを事業にまでしてきた普通の同胞の逞しい生活力である。そして、自分たちだけの世界に閉じこもることなく、「多文化共生社会」をそれぞれの地域で具現し、それを国レベルにまで押し広げようとしてきたひたむきさだ。その生き方はもはや「在日文化」と呼ぶにふさわしいものとなった。

 だからこそ、在日は文学・演劇・映画など日本人の文化活動の重要なモチーフになってきたばかりか、在日同胞作家の旺盛な創作意欲を生み出し、日本社会に切り込んでいくことを可能にした。在日作家による芥川賞・直木賞などの受賞作や話題作が続出し、映画化されたものが多いのもそれと無縁ではない。

 作品傾向も差別と反抗、生活苦と民族的な苦悩などを題材にしたものから、在日の生き様をエンターテイメントにすることで、同時代の日本人に共感を広げるような方向に変わり、在日性を突き破って一般性を獲得するようになった。梁石日の『タクシードライバー狂想曲』、金城一紀の『GO』はその典型だろう。

 これらの作品は日本社会に対して、在日が抱えこまされた問題性を直截に告発することなく、エンターテイメントという間接的なアプローチによって、より効果的に在日の存在性を浮き彫りにする効果を持った。

 テレビドラマや映画などエンターテイメントの世界では、在日をテーマにした作品が今後とも目白押しだ。こうした在日コリアンウェーブは、韓流と同じようで出自が異なる。しかし、やがて両者は共鳴し合うことになるだろう。

 来年は在日にとって歴史的に重要な節目が重なっている。それに向けて一気に在日パワーを高め、結合させたいものだ。

(2004.8.15 民団新聞)
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