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<Q&A>北韓3代世襲と党代表者会 「民生」重視へ転換めざせ
前回の世襲作業では、金父子が風貌そっくりに描かれた絵看板が平壌市内などに設置された。「偉大なわが国、わが祖国よ、千万年無窮繁栄あれ」の文字も
「世代交代」を名分に
現路線では進退とも不能

 韓日をはじめ各国のメディアは、体制危機が明らかな北韓の動向を鵜の目鷹の目で追い、わずかな兆候も見逃すまいとしている。6月23日に朝鮮労働党政治局が「9月上旬に招集する」と決定した党代表者会はどんな意味を持つのか。本紙読者からは「情報が錯綜して事態の本質が見えにくい」との声も届く。いずれ開かれる党代表者会とそれに絡む世襲問題を中心に、北韓の動向と展望について在日同胞が知っておくべき基本事項をQ&A方式でまとめた。

 Q 労働党の決定機関のなかで、党代表者会の位置づけは?

 A 80年の第6回党大会で採択した党規約では、「党中央委員会は党大会と党大会の間に党代表者会を招集できる」「党代表者会は党の路線と政策及び戦略戦術に関する緊急の問題を討議決定し、自己の任務を遂行できない党中央委員会委員、候補委員または準候補委員を除名してその欠員を補選する」とある。

 党大会や臨時党大会を開くのが困難な状況下で、重要かつ緊急な決定をする機関だが、代表者会の参加者規模は中央委全員会議の5分の1に過ぎないため、決定は中央委全員会議の承認を得なければならない。ただし、除名・補選については承認を必要としない。

第1回目では金王朝を確立

 Q 党代表者会は44年ぶりという。

 A 過去2回あった。最初は58年3月、規約にないまま57年10月の中央委全員会議の決定で、「党の統一団結強化について」を主たる議題に開かれた。56年の「8月宗派」事件を総括し、金日成が率いた抗日武装闘争だけが革命伝統だと規定した。ここから金日成唯一独裁が強化された。

 2回目は「社会主義経済建設についての当面課題」をメーンに66年10月の開催だった。中ソ対立激化、韓日条約締結、ベトナム戦争拡大、中国文化大革命などを背景に、金日成は軍備増強を強調した。また、旧ユーゴスラビアのチトー路線を修正主義と糾弾し、文化大革命も批判した。67年の「甲山派粛清」という「中国派」勢力を排除する端緒をつくった。

 Q 規約上でも、過去の事例を見ても重要な機関であるらしい。今回はその招集が規約とは違い、政治局の決定だ。

 A 党機関が形骸化し、弱体化している。周知のように、80年以来30年間、党大会が開かれていない。現在の党最高権力機関の中央委員会政治局常務委員会は、委員が金正日一人だけだ。病死・事故・処刑などによって中央委員や指導部の欠員が目立つ。規約通りに招集しようにもその中央委員会が機能していない。

 Q 党代表者会というのは、使い勝手がいい機関のようだ。今回の目的は?

 A 韓国や米国との関係がここ数年で最悪であり、国際社会からの経済制裁も効いている。中国との関係も内実は決して良くない。加えて、昨年11月末のデノミ失敗や最近の北部水害の救援遅滞などによって、民心離反がいっそう深刻化した。常識的に考えれば、窮状打開のために外交・統一・経済にかかわる議題こそ扱われるべきだ。

 だが、代表者会を招集する政治局決定書に「党最高指導機関の選挙を行う」とあり、中身をともなう主たる議題は人事問題になるだろう。目的は、党指導部の再構築と3代目への後継体制の足場づくりを同時に行うところにあるはずだ。

 第1回代表者会の決議はその3カ月後の、第2回はその直後の中央委全員会議で承認されている。本来であれば、第3回の今回も間を置かずして全員会議が招集されねばならない。代表者会は欠員を補選するだけで、役職の決定には全員会議が必要だからだ。

最大の目的はまず足場固め

 Q 北韓は労働党一党独裁の国家でありながら、党の指導体制を形骸化させた。その半面、「先軍政治」によって軍の力が強まった。

 A 北韓には確定された「後継者論」がある。「親愛なる指導者 金正日同志は 偉大な首領金日成元帥の唯一の後継者であられる」と題した党幹部用の部外秘「提綱」(76年)がその原型だ。この「提綱」を書き写したものを朝総連上級幹部や学習組が学習した。

 そこには、「後継者の指導体制は、首領の領導体制のなかで、党を根幹として打ち立てられる」、「後継者の指導体制は、党の唯一的な領導体制」であり、「党の領導権を掌握することを意味する」と規定されている。

 「党を根幹」として後継者を立てることは、労働党一党独裁を基本に、金日成・正日父子がいわば共同で練り上げた論理だけに、守らねば自己否定になる。今回の党代表者会はしたがって、最大の目的を後継者樹立の足場固めに置き、形骸化した党指導機構をそれに即して再構築しようとするものになるはずだ。

 今後の不測の事態や後継問題でのより重要な決定に備えると同時に、党指導体制の整備を通じて、力をつけ過ぎた軍に対する統制を強化する狙いも指摘されている。

権力の二重化何より恐れる

 Q 3代目への世襲の足場固めは、どのレベルまで行きそうか。

 A 3代目を後継者として公式化させるのか、党のそれなりのポストに就任させるだけなのか、観測は分かれている。手続きに則れば前者はあり得ないが、金委員長の健康状態の見通しによっては大幅な前倒しも否定できないからだ。だが、それは自己破綻を意味する。現状では後者と見るのが順当だろう。

 理由はいくつかある。一つは、「育てる期間」だ。「後継者論」では「後継者は首領が発掘し、育てるために、首領が生きている時にしなければならない」とある。3代目はすでに「発掘」されていても、党のしかるべきポストで訓練を受けている形跡はない。

 二つは、3代目に対する偶像化作業がある程度先行していなければならないが、現在のところ、間接的な称賛歌と思われる「パルコルム」(「歩み」あるいは「足取り」の意)が普及されている程度に過ぎない。

 もう一つは、後継者の公式化が権力の委譲をともなうことだ。「相当な期間、首領を補佐し、首領の意思を奉り、すべての分野で首領の領導を確固と実現する唯一指導者の席を占める」と規定されている。後継者の指導体系は首領の唯一領導体系と一体とされ、「後継者による唯一管理制」が敷かれる。

 金正日はこの権限を使って初代から権力を奪っていった。後継者の公式化から始まる権力の二重化を最も恐れるのは、体験者である金委員長自身と側近たちだ。

 Q 金正日への世襲はどのような経緯をたどったのか。

 A 実に周到で時間もかけた。金正日は64年6月、22歳の時に党の核心部署である組織指導部指導員として、党業務を開始したとされている。後継者に内定したのは30歳、72年12月の党中央委員会5次6回全員会議だ。74年には政治委員に昇格して「党中央」と敬称された。

 75年から彼の生日である2月16日が臨時休務日となり、「唯一の指導者」、あるいは「親愛なる指導者同志」と呼ばれた。76年からは主要な国家機関などに「金正日学習研究室」ができ、学習旋風が醸成された。そして、後継者として公式化されたのが80年10月の第6次党大会だ。38歳になっていた。

 Q 徹底した独裁政権でも、初代から2代目より2代目から3代目への世襲は、権威が薄まっていくだけに名分づくりがより困難になるはずだ。

 A それは間違いない。代が下がるにつれ権威がなくなるのもさることながら、金正日への世襲をあまりに合理化したために、自分の縄で自分を縛りつける自縄自縛の状態になっていることが大きい。

 「後継者論」はこう言い切っている。「後継者問題は、過去においては明確に解明できずにいたのだが、わが時代になって初めて、科学理論的に完璧な解明を見るに至った」。その「科学理論」の仕組みは典型的な3段論法になっている。

 第1段階で、「朝鮮革命を勝利に領導し、主体革命偉業の模範をつくり出すという人類的業績をもたらした金日成主席」をマルクス、レーニンを超えた神聖不可侵の領域に極限まで高める。

 第2段階で、「労働者階級と勤労人民大衆の自主性を実現するための闘争は、厳しく長期性を帯びるために、1世代で終わるものではなく、代を継いで継承され完成される」として「首領の革命偉業継承の必然性」を強調する。

 最後の段階で、後継者は「首領に対する忠実性を最高の高さで体現」する存在でなければならないとし、「後継者が首領を血統的に継承する人物である時には、人民大衆からより高い尊敬と信頼を得ることができる」と結論づける。

 初代の薫陶を受けた2代目と違い、3代目が浴す威光は出涸らしに過ぎない。前回の世襲で金日成を超絶対化したために、3代目は初代との隔たりが自ずと拡大する。3代目はこれを逆利用し、「後継者論」に言う「若い世代を代表する人物」として独自性を出さねば生き残れまい。

見逃せぬ市場パワー
生活苦克服へ柔軟な対応迫る

 Q 3代目への世襲ができたとして、北韓の今後はどうなるのか。

 A 金正日には金日成の絶対的な後光があったほか、権力中枢にあった抗日パルチザン1世とその子弟、金日成大学の同級生たちの堅固な取り巻きもあった。また、忠実な「執事」と評される張成沢(金正日の妹婿)がいた。3代目には世代交代を推進するだけの堅固な取り巻きが見えない。

 権力側の弱体化に反して、一般住民側が力をつけてきたことも見逃せない。特に昨年11月末のデノミ断行以後、貧富の格差が拡大し、虎の子を奪われた民衆の怒りは鎮まっていない。当局は結局、住民の抵抗の前に市場も外貨使用も認めた。北韓で初めて、上部構造が下部構造に屈し、独裁が民衆にひるんだ。

 ラジオなどを通じて外部世界の情報と接し、携帯電話で外部と情報交換をする住民も増えた。90年代のおびただしい餓死者を出した「苦難の行軍」期ですら、指導部を罵る民衆は少なかったのに、現在では首領を罵ることも珍しくなくなった。

 3代目への世襲作業は、かつてない困難な状況で行われる。金日成を頂点としたこれまでの路線に乗った世襲作業では、危機を克服できない。

 Q 打開する道があるとすれば?

 A 「初代との隔たりを逆利用して」と言ったが、世襲作業をチャンスに転換することだ。まず、時代に即した柔軟な後継理論をつくり出す。そして後継者は、後継者のみに許された統治理念に対する「解釈権」を有効に行使することだろう。

 金正日は主体思想について「独自の解釈」を加え、85年には「主体思想叢書」全10巻を発行した。そこで「主体思想を全一的に体系化」し、「金日成主義」と定式化することで、自らの権威を高めた。

 3代目は、超絶対的な金日成の遺訓のなかから、住民たちに「白いご飯と肉汁を」とか、「瓦屋根の住居を」とかいった民生向上に関する部分を体系化し、その実現を代を継ぐ「革命偉業」として定式化することだ。

(2010.9.15 民団新聞)
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