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「同質性活かし世界へ」 初代文化部長官の李御寧さん講演 |
韓日中の新ソフトパワー構築
勝ち負け回るジャンケンのように…分け合う関係つくり
韓国初代文化部長官の李御寧さんは10日、東京・新宿区の韓国文化院で、「新アジア時代のソフトパワー‐誤解と偏見の壁を超えた韓日文化の再見‐」と題する講演会を開いた。李さんは、韓国、日本、中国の文化の特性を挙げながら、新しい3国関係のあり方などについて語った。
李御寧さんは韓国、日本、中国の東アジア文化のソフトパワーのあり方について、「お互いの偏見と誤解の壁を超えていかないと、21世紀の新しいアジア国民の文化はつくれない」と強調した。
ギリシャ最古の地理学者、ヘカタイオスが紀元前500年に制作した最初の地図(復元)を元に講演を進めた。
そこにはヨーロッパとアジアが対をなして描かれている。さらにアジアは「日が昇る」という意味のAsuから出た言葉の東を、ヨーロッパは「日が沈む」というErebuに由来した言葉の西を意味すると解説したうえで、東西における文化の差異について話した。
例えば、同じ地域でも漢字文化圏では「東北」、英語圏では「北東」という呼び方になる。また、交通信号を西洋では緑信号(グリーン・ライト)と言うが、韓国、日本、中国人は緑色を青信号と呼ぶ。これらの違いは、ギリシャ人が自然界(フィシス)、記号界(セミオシス)、制度・法律(ノモス)の3領域に分けて考える価値観が引き継がれているからだ。その中でこれらの差異は、セミオシスが問題になると語った。
セミオシスはフィシスとノモスの中間に位置し、情報伝達や志向、言語、芸術・文化などの精神行為の働きを助ける媒体のこと。
東アジア文化色感覚も共通
交通信号については、「もともと、西洋から入ってきたのは緑色だった。私たちは緑と青は同色だという考えがあり、緑でも青として見る。赤の対立の配色が青だからだ。単なる言葉の問題ではなく、東と西における全ての文化の持っている違い」。李さんは東アジアの同質性を強調した。
青の持つ色彩感覚についても、3国は希望や若さを表し、西洋では憂うつ、無力、失望を示すといった違いが見られる。 「例えば、日本人が韓国人にツバをかけるような、偏見と誤解をいくら持っていても、それは自分の顔にツバをかけるようなもの。私たちは記号化に共通性があり、西洋には西洋の共通性がある」
また飛鳥文化についても言及した。飛鳥は「明日の村」を意味し、当時「新しく開拓して素晴らしい村を作ろうと、韓国、日本、中国の漢字が一つになり、素晴らしい飛鳥文化の文字として使われた」。3国の深い関わりの象徴という。
対立を生まぬ循環型の構造
文化の多様性と共通性を併せ持つ3国。新しい文化のソフトパワーをつくるためには、互いの国がジャンケンの関係になることが重要だとの考えを示した。
著書『ジャンケン文明論』(新潮新書)に詳しいが、二項対立の西洋の考え方は、衝突しか生まれないのに対し、ジャンケンは1番、2番を決める垂直的・階層構造とは異なった丸い形の循環構造になる。一人勝ちも、一人負けもない。
パーとグーの対立項の真ん中にあるチョキのハサミこそが、グレイゾーンであり、これにあたるのが韓国だ。
「ジャンケンはぐるぐる回る関係にある。大陸の文化と島の文化の間に半島の韓国がある。韓国がハサミの役割になり、韓国と日本、中国が一緒に手を組めば、世界へ向けて新しいパワーをつくることができる」。一緒に分け合う関係になることの重要性を強調した。
(2010.6.23 民団新聞)
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