| 朝鮮通信使を世界遺産に…対馬で毎年8月に行われる「アリラン祭り」では、華麗な朝鮮通信使行列が再現される |
韓日国交正常化50周年記念 共同でユネスコ遺産登録を 善隣をより確かに…多彩なイベントで盛り上げよう 明けましておめでとうございます。ご家族お揃いで輝かしい新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。 さて、皆様は、対馬をご存じでしょうか。日本と韓国の間の玄海灘に浮かぶ日本で3番目に大きな島です。地理的にも歴史的にも朝鮮半島との関係は深く、江戸時代には釜山に約10万坪の外交施設「倭館(わかん)」を与えられ、朝鮮王朝との外交役として活躍していました。 年間19万人の韓国人観光客 最近では年間約19万人の韓国人観光客が訪れ、自然と歴史に触れていただき、癒やしの島として人気を博しています。今回はその対馬が、日韓の懸け橋として取り組んでいる活動や計画についてご紹介したいと思います。 今年は2015年、日韓国交正常化50周年の年にあたります。この記念すべき年をどのように盛り上げることができるでしょうか? 日韓関係が非常に冷え込んでいる中、非常に重要な年となります。交流イベントを盛り上げ、流れを変える年にしなければなりません。昨年の秋ぐらいから潮目は変わりつつあります。何かのキッカケがあれば一気に暖流へと変わるかもしれません。そのキッカケとは何なのでしょうか? 皆さんは「朝鮮通信使」をご存じでしょうか? 現在、対馬市を中心としたNPO法人朝鮮通信使縁地連絡協議会(16の自治体、42の民間団体、108人の個人会員で組織)が中心となり、釜山の財団法人釜山文化財団と共に、朝鮮通信使の関係史料をユネスコ記憶遺産に登録する活動を展開しています。 朝鮮通信使ユネスコ記憶遺産日本推進部会と朝鮮通信使ユネスコ記憶遺産日本学術委員会を内部に組織し、2016年3月にユネスコへ日韓共同で申請する準備を進めています。私たちは日韓の関係を修復する糸口は、この「朝鮮通信使」ではないかと考えています。 争いなかった江戸260年 江戸時代の隣国と争いのない約260年間が続いたのは、この朝鮮通信使が往来したからなのです。平和の象徴と言っても過言ではないでしょう。記念の年を盛り上げる一つとして、事業参加関係団体のご協力を得ながら、申請準備ができるようベストを尽くしたいと思います。 「対馬物語」の公演を5月に 次に、対馬市では5月下旬に日韓国交正常化50周年を祝うイベントを計画しています。 予算が通れば、対馬と関係の深い日韓の関係者にお集まりいただき、ジェームス三木氏が書き下ろしたミュージカル「対馬物語」を公演し、記念セレモニーや祝賀会を催したいと考えています。「対馬物語」のストーリーは、秀吉の朝鮮出兵の後、対馬藩の藩主「宗義智(そうよしとし)」が関係を修復し朝鮮通信使を招聘するというもので、何回見ても泣けます。(私はすでに4回見て4回泣きました。) また、ストーリーと言えば小説「韃靼の馬」です。4年前くらいに日経新聞に連載された辻原登(つじはらのぼる)という芥川賞を受賞された先生の歴史小説なのですが、対馬藩と朝鮮通信使をメインとした内容です。 対馬市はこれを映画若しくはテレビドラマにできないかと制作会社等に売り込みをしています。まだまだ売り込みが足りないようですが、この小説がドラマ化となりテレビで放映されれば、朝鮮通信使が一気にメジャーとなり、ユネスコ記憶遺産登録の機運も比例して上がると思っています。そうなれば自然に友好関係は戻ってくるのではないでしょうか。まだ読んでないという方は、是非ご一読いただければと思います。 ただ、問題が一つあります。例の「対馬の仏像盗難問題」です。つい最近の11月にも仏像窃盗未遂事件が起き、冷や水をかけられた思いでしたが、この問題は早く解消していただかなければなりません。ユネスコ記憶遺産に登録しようとしているのに、ユネスコ条約違反状態(ユネスコの文化財の不正輸出入条約に抵触)となっているからです。 喉にひっかかっている一本の魚の骨。この矛盾を早く解消していただかなければ、対馬も存分な活動ができないのです。是非、皆様も声を上げていただくようお願いいたします。 行列の拡大版こども通信使 対馬市は、その他にも関係機関とともに「朝鮮通信使行列再現」を大きな交流事業のコンテンツとして取り組んでいます。まず、「対馬厳原港まつり」での朝鮮通信使行列の再現です。今年は「こども通信使」もプラスして拡大して行う予定です。 次に、今年は家康公の没後400年の年でもあります。静岡市をはじめ家康公400年祭実行委員会と協議しながら、9月に家康公のお膝元である静岡で、それも居城でもあった駿府城公園内で朝鮮通信使行列を再現したいと考えています。対馬藩主宗義智公に命令された日朝修好のあかしを御前でご披露するのです。 交流まつりもパレード参加 もう一つが、同時期に東京日比谷公園で開催される「日韓交流おまつり」です。東京のど真ん中である日比谷公園で朝鮮通信使行列の再現をし、このお祭りを盛り上げたいと考えています。もちろん行列の最後には国書交換式も実施しなければなりません。 すでに実行委員会に要望書を提出させていただき、前向きに検討するというお返事を、民団中央本部の役員を通じて実行委員長からいただいているところです。 さてさて、いろいろと楽しそうなことばかりを書き連ねました。それもそのはずです。交流事業は楽しいことなのです。楽しいことをせずにはいられません。対馬という小さな島の大きな挑戦。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。 結びに、皆様にとりまして幸多き年となることをお祈りいたします。 (2015.1.1 民団新聞) |