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母語を奪われた心の闇…劇作家の小里清さん舞台で問う
「国語の時間」の舞台稽古

「国語の時間」東京で上演

 植民地統治下にあった1940年代の京城(現ソウル)の小学校を舞台に、日本語を「国語」として教える韓国人教師たちの生き様を描いた演劇「国語の時間」(劇団「風琴工房」公演、演出=詩森ろば)が22日から7日間、東京・杉並区の「座・高円寺」で上演される。劇作家の小里清さん(40)は、この作品にどのような思いを込めたのだろうか。

教師の苦悩を焦点に…統治下の同化教育浮き彫り

 1998年に初めて書いた戯曲は、23年9月1日に起きた関東大震災直後に逮捕、拘禁された抗日独立運動家で、民団の初代団長でもある朴烈義士とパートナーの金子文子がモデルだった。韓半島から日本に渡って来た人々に関心があった。

 10代のころから、社会のマジョリティー側に馴染めないという感覚を持ってきた。

 岐阜県出身。生まれ育った場所は封建的で、よそ者を排除するような土地だった。子どものころ、自分の家がつまはじきされるような光景を見てきた。いつしか、マジョリティーや支配的な観念、常識、価値観に対して疑念を持ちはじめていく。

 だが一方では、いい扱いをされていない人たちに対して、感情移入するような面もあった。それは少数派の外国人であってもかわらない。「もっと、民族や国籍を超えたようなある種のシンパシーだった」

 劇作家として数々の新人戯曲賞を受賞、岸田戯曲賞の最終候補に2度選ばれながら、演劇活動を停止した。日本語教育の道に進もうと07年から1年間、教員になるための学校にも通った。

日本語強要の悲しさ見つめ

 勉強を続ける中で印象に残ったのは「外国人に言葉を教えるということは、常に他者を同化する危険性をはらんでいる。だからそのことは慎重にならなければならない」という教師の言葉だった。それはどの言語であっても常につきまとう。だが、日本語に関しては、植民地時代に同化政策として、日本語教育を行ったという過去がある。これをきっかけに、植民地政策の中でも特に、日本語教育について調べ始めた。次第に戯曲という形で表現したいと、再び演劇の世界に戻った。

 上演のあてのないなか、3年以上かけて戯曲を書き上げた。苦労とも孤独とも思わなかった。「自分が構想した物語を戯曲という形にして仕上げたいという、それだけだった」

 物語は、韓国人教師たちを通しながら、彼らが抱える心の闇や彼らを追い込んで行く同化教育などを浮き彫りにしていく。日本語を押しつける言語政策に対して異を唱える人物がいる。だが、批判するその言葉さえも日本語で話さなければいけない。

 「その悲しさって何だろうというのは、母語である母なる言葉が奪われる悲しさ、日本語で自分の考えや感情を伝えなければいけないという悲しさ、そのことをこの作品を通して描きたかった」

 戯曲を書く時点で、弁護士の立場に立つという視点で、一人ひとりの人物を造形していった。これまで韓日の問題を描いた演劇は、ともすると加害者の日本人、被害者の韓国人という、予定調和的な図式の中で描かれることが多かった。それは歴史の一面としては真実である。

 だが「考えようによっては、そういう図式の中に韓国の人たちを押し込めてしまうことは、本当は彼らのヒューマニティーを軽んじていることになるのでは」。それは人間を人間として見るのではなく、ある意味で政治的な思想やイデオロギーを伝えるための記号としてしか扱っていないのでは。登場人物一人ひとりの生き様を描くことに徹した。

 この作品にはある種の怖さがつきまとった。これを書いていいものかという、自分自身に対する問いもあった。「同じような経験をされてきた方たちに対して、説得力を持ってこの作品を提示できるのかというときに怖さを感じる。それは今も変わらない」

生きることに思いをはせて

 人間はそれぞれに思想・信条を持っている。だが「そういったある種のメガネはちょっとだけ外していただいて、この時代、こうとしか生きられなかった人々の思いや営みを虚心に見つめていただけたらいいなというのが一番の思い」だと話す。

 「国語の時間」上演日程 22日19時開演、23・24日13時・19時、25・26日19時、27日13時・19時、28日14時。料金3500円。チケット予約は座・高円寺チケットボックス(tel03・3223・7300)月曜定休、10〜18時、窓口10〜19時、劇団予約(http://windyharp.org/kokugo/)問い合わせは劇団「風琴工房」(tel080・5446・5870)。

(2013.2.13 民団新聞)
 

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