Home > ニュース > 文化・芸能 |
埼玉の文化会館「キラリ☆ふじみ」
今月1日、埼玉県富士見市の市民文化会館「キラリ☆ふじみ」の第3代芸術監督に就任した演出家の多田淳之介さん(33)。08年3月、韓国のアルコ芸術劇場で開催されたアジア演出家展に招聘され初訪韓。以来、韓国演劇人と親交を深めてきた。23日から27日まで行われた就任公演では、多田さんの代表作『LOVE』をベースに再構成した、『LOVE The World 2010』を上演。同作品で初めて、韓日の俳優が共演した。
「独特の色気と美」
韓国人俳優への思い強く
多田淳之介さんは、同施設の公募により選出された第3代芸術監督。01年に劇団「東京デスロック」を旗揚げ、主宰、作、演出を務めるほか、劇作家で演出家の平田オリザさん主宰「青年団」の演出部に所属するなど、精力的な活動を行っている。
今回、芸術監督に応募したのはある思いから。同施設は「市民の芸術劇場」として02年に開館。地域の住民たちが、文化事業を楽しみに劇場に足を運ぶ。
東京で演劇活動を続けながら一時期、同施設のスタッフを務めたことがある。「劇場は演劇をやるだけの場所と思っていた。でも、ここでは演劇公演をやるホールで、ピアノ発表会や社交ダンスをやったりして、利用者が楽しんでいた」
演劇は「敷居が高い」「難解」と思われがちだ。以前から「もっと身近になってほしい」という思いがあった。「このホールだと、その希望が見えたという気がした」
韓国で体験のノリめざして
以前、自身が望む「演劇を通じた観客との対話」を韓国で経験している。08年3月、韓国のアルコ芸術劇場で開かれたアジア演出家展に招聘された。現地でオーディション。韓国人俳優が演じた『ロミオとジュリエット』に、日本の「だるまさんがころんだ」を取り入れた。このシーンでは観客は大喜びし、手拍子する人もいたという。
「ノリは日本より韓国のほうがいい。日本の都市部ではこういう反応はない」
また、09年1月に光州で開催されたアジア公演芸術祭に「東京デスロック」が招聘されたときのことだ。上演した『LOVE』は、多田さんにとって根本となる作品。「僕にとっては基本に立ち返る場所」。大事にしてきた。
台詞は少ないが、片一方の俳優が50の質問を投げかけ、相手が答えもしないうちに「ああ、いいですよね‐」というシーンが繰り返される。その流れが分かると、俳優が答える前に観客から「ああ、いいですよね‐」という答えが返ってきたという。
「楽しかった。演劇を通した対話を韓国ではできた。本当にそうなっている状況を見ると、いろいろなところでやるときの自信にもなるし、韓国と同じようにはできなくても、ああいうことが起きる可能性があるということは分かった」
活動の原点は演劇を幸せに
「演劇LOVE」と言い続けてきた。作品を見て幸せになってもらうのはもちろん、演劇を幸せにしたいと活動を続けている。
韓日の俳優で作品を作りたいと思っていた。就任公演では、『ロミオとジュリエット』に出演した韓国人俳優を起用した。「この作品に必要なのは日本人と韓国人だった。言葉の問題はあっても、一緒に水準の高い作品を作ることができる」。将来は韓国でも上演したいという。
多田さんは韓国人俳優には、「独特の色気と美しさ」があると話す。「僕は一生懸命にやっている姿が好き。演技している彼らには色気がとてもある」
同施設はまだ、新しい劇場だ。8年間をかけて芽が出始めたもの、育っているものもある。文化活動の拠点として、さらに多くの住民に感動を与え、幸せにしたいという。多田さんにかかる期待は大きい。
(2010.4.28 民団新聞)
|
|
|
|