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東北アジアの協調「南北統一」で主導を
ハルピン駅に設立された「安重根記念館」
朝鮮労働党政治局拡大会議の場から連行される張成沢(13年12月)

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「安重根義士記念館」と3国
戦略攻防続く日中…「歴史」で「連帯」に危うさも

 中国黒竜江省のハルピン駅に「安重根義士記念館」が開設された。安義士が初代の韓国統監・伊藤博文を射殺(1907年10月)した現場のホームが直接見える設計だという。昨年6月に訪中した朴槿恵大統領が習近平国家主席に要請したのは、義挙現場に記念碑を建立することだった。中国はこれを格上げして応えたことになる。

消極姿勢から一転した中国

 中国側はこれまで、「民族正義」による要人暗殺を称えることでチベットや新疆ウイグル自治区の治安悪化に及ぼす影響、抗日戦争で戦死した中国の英雄を差し置いて外国人を顕彰することへの反発などを懸念し、「館」はもちろん「碑」の建立にも消極的だった。その姿勢が一転した背景に日本との対立激化があるのは言うまでもあるまい。

 記念館開設について日本では菅義偉官房長官が「安重根は我が国の初代首相を殺害し、死刑判決を受けたテロリストだ。(韓中の動きは)地域の平和と協力関係の構築に資するものではない」と非難した。まさに一刀両断である。

 「韓国は、基本的な価値や利益を共有する、最も重要な隣国です。日韓の良好な関係は、両国のみならず、東アジアの平和と繁栄にとって不可欠であり、大局的な観点から協力関係の構築に努めてまいります」(安倍晋三首相の施政方針演説=24日)

 これが日本政府の基本姿勢であるならば、菅長官は相手の立場を少しは考慮したコメントをしてしかるべきだった。「協力関係の構築」の前提として、抗日独立運動を重要な建国基盤とする韓国に、歴史観の根底からの見直しを求めているわけではあるまい。

 両国政府に正式抗議まで行った日本に対し、中国外務当局は「(安重根は)著名な抗日義士で、中国人民の尊敬を受けている」としたうえで、逆に、「歴史を適切に正視して反省し、靖国参拝問題に関する誤った立場を修正するよう」要求した。

 韓国外務部は、「韓中両国の国民から広く尊敬される安義士の記念館が義挙の現場に設置されたことは意味がある」とし、「これを契機に東北アジア地域の国家が安義士の主張した『東洋平和論』の崇高な精神を振り返り、正しい歴史認識に基づく真の平和・協力の道に踏み出すことを期待する」と論評した。

 「東洋平和論」は、韓国・中国(清)・日本による水平的な連帯の構築と平和会議体・経済共同体・平和維持軍の創設を提唱したものだ。日本のアジア主義者など右派論客にも支持を広げた雄大な構想であった。

 安義士による伊藤暗殺を韓国は「義挙」とし、日本は「テロ」「犯罪」とする正反対の構図のなかで、記念館開設は中国が明確に韓国の側に立ったことを意味する。

 日本による侵略・支配に関する歴史認識問題で、ともに被害を受けた韓中両国が「連帯」的になるのは当然の成り行きであろう。「日本を取り戻す」と言い、歴史修正主義の立場を前面に押し出す政権が続けば、いっそう強固になるかも知れない。しかし韓国は、これからのことを冷静に、厳しく考えておく必要がある。

 安倍首相が靖国神社に参拝した昨年末以来、中国の約40カ国の海外公館長が現地メディアとのインタビューや寄稿を通じて対日批判を展開してきた。日本の公館長による反論も12カ国になるという。歴史認識をめぐる国際舞台での対日批判は、中国のそれが韓国を上回るほどの勢いになってきたように見える。

最悪シナリオ想定も不可欠

 しかし、歴史認識をめぐる中国と日本のキャンペーン合戦は、韓日間のそれとは異なり、尖閣諸島(中国名=釣魚島)の領有紛争が象徴する軍事戦略上の攻防がベースになっていることを見落としてはならない。

 日本の歴史認識を韓国ほどには問題にしてこなかった中国を変えたのは、日本による尖閣諸島の国有化であり、安倍政権の対中強硬姿勢だ。また、日本をそうさせたのは中国の経済的台頭であり、軍事面での膨張である。

 韓国としてはここで、二つのシナリオを想定しておきたい。一つは日中の軍事的な衝突である。韓国にとって中国は、対日歴史認識では方向が一致しやすく、北韓リスクの管理・解消では協調が不可欠な存在であり、輸出先としても最大だ。しかし、自国安保にとって最も重要なのは、日本とも軍事同盟を結ぶ米国との軍事同盟である。有事になれば、韓国が立つ瀬を見い出すのは容易ではない。

 もう一つは、有事が両国と東アジアに悲惨な結果をもたらすことがあまりにも自明なだけに、回避を目指す力が強く働き、戦略的な妥協を導き出す可能性のことである。この場合、歴史認識を矛にした中国の対日牽制は鎮静化し、この面での対韓「連帯」は後退するだろう。その反動は日本の韓国に対する立場を強化することになりかねない。

 いずれにせよ韓国は、対日歴史問題で中国との「連帯」には慎重であるべきだ。中国はそれを大戦略に付随する一つの戦術に位置付けていると見なければならない。戦略を前にした戦術は影が薄く、いつでも変更可能である。我が民族の古代3国を構成した高句麗を自国の地方政権に組み込み、古代史を改ざんしようとする中国の東北工程が消えたわけではないことも想起すべきだろう。

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張成沢一党粛清する北韓
遠くない急変事態…急がれる即応体制の万全化

 日本と中国の戦略的な攻防が東北アジアにきな臭さを漂わせ、世界の耳目を引き寄せているからと言って、北韓リスクの存在が等閑視されていいはずがない。

 韓国は今こそ、自らと東北アジアの将来をかけ、国家目標である平和的な統一先進国家の建設に邁進する体制を整えるべきだ。それは自ずと、日中両国に対してその対立激化を牽制しつつ協働を促すものとなるはずだ。

 金正日の懐刀と言われ平壌政権のナンバー2ともコントロールタワーとも目されてきた張成沢は、実権・利権に深くかかわってきた。それだけに、エリート層を中心とする人的ネットワークは広く根を張っており、電撃処刑の衝撃波はたやすく消えるものではない。

 北韓はいま、張成沢一党に対する粛清が触媒となって、体制崩壊に向かう遠心力と独裁を強化しようとする求心力がかつてなく激しくぶつかり合っている。大規模な軍事挑発の危険性だけでなく、内乱や人権弾圧による難民の大量発生、体制崩壊による無政府状態の出現にも対応を急ぐべきだとの見方が大勢だ。

 北韓体制を肌で知っているうえに現在も実情研究に余念のない脱北知識人からは、統治エネルギー(資金)の枯渇によって求心力が弱まるなか急変事態は進行過程にあり、早ければ今年上半期中にも重大な異変が起きるとの予測もあった(参考=「月刊朝鮮」1月号「懸案緊急分析‐北韓体制経験者たちが見る北韓急変事態」より)。「張氏粛清を受け、日本政府内では今、金正恩体制の3年以内の崩壊を予測する声も強まりつつある」との報道(朝日新聞1月26日付)もある。

 平壌政権は、改革開放に舵を切っても現体制のまま締め付けを強めても、体制崩壊を防げないジレンマに陥っている。2018年の平昌冬季五輪、2020年の東京五輪で韓日両国が盛り上がって行く頃、まったく別の意味で世界の関心が平壌に集中しているかも知れないのだ。

 平壌政権が瓦解すれば、朝中軍事条約の発動であれ、「反中国勢力」の武力攻撃に対する反撃であれ、いかなる名目をつけてでも中国は北韓に進駐するだろう。北進することになる韓米両軍との間で不測の事態が起きないとも限らない。

周辺関連国と相互信頼重ね

 それはさておいても、軍組織の武装を解除し、住民の生活と人権を守りながら、核・細菌など大量殺戮兵器を接収・管理するのは容易ではない。韓米両軍が共有する既定の作戦計画も、主要関連国との調整が不可欠だ。韓国は米中だけでなく陸続きのロシア、韓半島に展開する米軍を支援することになる日本とも、信頼関係を固めておく必要がある。

 対内的にも課題は多い。韓国は2017年12月に第19代大統領選挙を実施し、新大統領の就任式を翌年2月に行う。平昌冬季五輪準備に拍車がかかり、華やかに開催されるこの時期の韓国は、必ずしも安定的とは言えない権力移行期にある。平壌の動向と合わせ、従北勢力の動きにも神経質にならざるを得ない。

 韓国では昨年、内乱陰謀容疑で統合進歩党(以下、統進党)に所属する国会議員らが逮捕・起訴されたのに続き、従北勢力の巣窟となった同党に対する「違憲政党解散審判」が憲法裁判所に請求された。内乱容疑の公判と違憲審判が同時進行中であり、その結果は韓国の民主的秩序の在り方や対北韓政策に大きな影響をもたらす。

 教訓とすべき事例がある。ドイツ連邦参議院は昨年12月、外国人敵視や移民排斥を訴え、統一後に旧東独地域で勢力を伸ばし、一部の州議会で議席を持つ「ドイツ国家民主党(NPD)」の活動禁止を連邦憲法裁判所に申請した。注目されるのは、同党に対する活動禁止申請が2度目であることだ。

 前回は、政府側の証人や証拠が客観性や信用性を著しく欠いているとされ、審理中断の苦汁を飲まされた。非合法化に再度失敗すれば、NPDにお墨付きを与え、勢いづかせることになりかねない。今回は確かな証拠資料を用意し、準備は万端とされる。

 州議会レベルにとどまる弱小政党のNPDと違い、統進党は国政レベルでも無視できない政党だ。12年4月の第19代国会議員選挙で10%台の支持率を獲得して5議席から13議席(地域区7・比例代表6)に躍進した。従北勢力が牛耳る政党であることを有権者の多くが知りながらの結果である。解散請求が覆されれば、統進党とそれに代表される従北勢力、さらには平壌政権まで勢いづかせることになる。

広がりに懸念「統一は不要」

 周辺国と国際社会の融和・発展に決定的に貢献する平和的で豊かな統一国家の建設は、韓国の譲ることのできない国家目標だ。しかし、その目標は国民レベルで共有されてはいない。従北勢力を核に形成されたた親北意識がなお根強いほか、より根源的な理由として統一不要論の広がりがある。

 朝鮮日報の新年世論調査で、「必ずしも統一する必要はないという意見の人が周囲に多い」と回答した割合は、30代で52・6%、20代では65・3%に達した。統一実現によって最も恩恵を受けるはずの若い世代にとって、統一はむしろ、困難で汚く危険な「3K業種」になったとまで言われてきた。

 統一に向かう過程で周辺諸国の利害が複雑に絡み合うだけでなく、統一後も負担が増える難題であり、理念葛藤の泥沼に引きずり込まれやすいばかりか、予測不能な北韓と相対する危険性がついて回る印象が強いからだと分析されている。

 韓半島の統一を担保し、主導する立場の韓国でありながら、その推進力は実に心もとない。まずは、米・中・日・ロの4カ国と国連を含む国際的な協調体制を築くことに外交力を総動員すべきだ。同時に、統一の意義に関する学校・社会教育の拡充に努めるなど、国民意識を底上げすることが欠かせない。

 東北アジアの未来を日中の角遂に埋没させていいはずがない。韓国は自らの国家目標の実現に総力を注ぐ覚悟を鮮明にし、それを基軸に対日、対中関係を再構築することが緊要だ。内外の力量を結合させ、必ず到来する北韓の急変事態に備える覚悟を固めるべき時点にある。

(2014.1.29 民団新聞)
 

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